
劇映画「孤独のグルメ」(2025)を見る。ドラマ版の井之頭五郎役は、松重豊の当たり役となった。五郎(松重豊)が料理やお店と向き合うモノローグが主な見どころ。映画の予告編では、エッフェル塔の前で「腹減った」といったような画を見せられるので全編フランスの食巡りの印象だったが、フランスのシーンが少ない印象。
メインはむしろ韓国。そのほか、ちゃんぽんの長崎、ラーメン、チャーハンの東京。究極のスープを求めて、五郎が世界へ漕ぎだすというお話。
ラーメン屋「さんせりて」のロゴがタンポポであることからも伊丹十三監督作「タンポポ」へのオマージュもふんだんに取り入れられている。

こちら「タンポポ」のシーン
「さんせりて」の4人の客がラーメンの最後のスープの一滴まで飲み干すシーンなどはまったく同じだった。ちなみに、サンセリテ(Sincerite)はフランス語で真心という意味。
小ネタも多く、表情の可笑しさ、ユーモアも多い。個人的には、韓国の入国審査官が食堂にいる五郎を迎えに来たシーン。五郎は、すでに料理を注文していたので「とりあえず飯だ」とばかりに、まず食べさせてとお構いなしに食べるのだ。

「それにしてもうまそうに食べるな」
横にいる審査官は、最初こそ、チェッと舌打ちの表情をしていたが、五郎が食べる姿を見て「それにしてもうまそうに食べるな」と喉をごくりとさせて、心でつぶやく場面が笑わせる。
その審査官が家族で食事をしていると、テレビの料理番組で五郎が出ていたので、審査官は、子どもたちに「あれはオレが知っている人だ」とつぶやく。
食材がなんとか見つかって、パリで一郎が、味わってみると、意外にも返事は「ちょっと違うな」だった。
千秋が残念そうな表情を見せると「食材は間違いないだろうが、美味すぎるんだよ」というものだった。「千秋、お前ならもっとへたくそに作れるだろう」「なにそれ」と千秋。「(こんなにも美味しいのなら)まだまだくたばれないな」と一郎。
・・・
井之頭五郎(松重豊)は、かつての恋人・小雪(さゆき)の娘、千秋(杏)からとある依頼の連絡があり飛行機の機内で腹を減らしながらフランス・パリへ向かう。飛行機の機内食をタイミング悪く食べられず、CAからインスタント食品の小袋2つ渡される。

パリに到着し、オニオンスープ(フランスのオニオンスープ、これは最高!美味そう)などで空腹をいつものように満たし、千秋とともに依頼者の祖父の元へ向かう。
五郎は千秋の祖父・松尾一郎(塩見三省)からの依頼の品である故郷・五島列島を描いた絵画を届けた。
そこで、一郎は故郷の風景を懐かしみ、「昔母が作ってくれたいっちゃん汁がどうしても食べたい」と言う。「食材を集めて探して欲しい。」と懇願される。
こうして、五島列島などの地名をヒントに、五郎も行って食材を探してみることにした。
腹が減った五郎は五島列島で美味しいちゃんぽんを食べる。
五郎は聞き込みを続け、海の幸と山の幸を組み合わせたいっちゃん汁の出汁の一つがエソという深海魚の煮干しだと知り、エソを売っている隣島へ行こうとする。
しかしフェリーはもうない。今日を逃すとその店は数日休みのようだ。五郎はSUP(サップ)の店へ行くが閉まっている。SUPのボードとパドルを借りて1万円を置いた。そしてSUPに乗ってパドルを漕ぎ、隣の島へ向かう。
しかし猛烈な台風に襲われた。SUPは横転。五郎は嵐の中で、どこかの島に漂流するのだが…。

「ここはどこだ」

「ここは韓国の島ですよ」
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テレビでは食レポの番組が多く、決まり文句が多すぎるのが気になる。肉だったら、やわらかくてうまい。外はサクサク、中はジューシー。
五郎は、最初の一口で眉がふっと上がり「これは…!」と悟ったような顔をする。「うん、これだよ」「ああ、いいなぁ」とかみしめるのだ。
そうはいっても、比喩は大げさ。「この唐揚げ、衣がカリッ…でも肉汁がジワ~っと、口の中に滝のように流れ込んでくる」「肉汁が小噴水だ」「これは口の中の盆踊りだ」など少々“ズレた比喩”がツボ。

・・・
【食材】韓国のファンテ(すけとうだらを乾燥させたもの)・韓国製シイタケ・エソ



<主な登場人物>
■井之頭五郎:松重豊…輸入雑貨の貿易商。営業のために各地を訪れる。いつも冷静で物腰柔らかいが、食事のときだけは心の中で饒舌になる。美味しいものを見つけると我を忘れて食に没頭するのが特徴。韓国の孤島に仕事でやって来る。食文化を通じて現地の人や異文化と交流する。
■松尾千秋:杏…パリに住む。井之頭五郎のかつて小雪の娘。五郎をフランスに呼ぶ。祖父の頼みで、五郎にある依頼をする。
■松尾一郎:塩見三省…千秋の祖父。子供のころ食べたスープの味が忘れられず、スープ材料探しを五郎に頼む。
■志穂:内田有紀…韓国領の島で暮らす。自然栽培の韓国料理を仲間たちと研究。「さんせりて」の店主が夫だが、コロナの影響で離れて韓国へ。
■食堂の大将:オダギリジョー…中華ラーメン店「さんせりて」の店主。気むずかしい性格で、いまはチャーハンのみ提供。志保の夫。食材を持ち寄られラーメンに再挑戦する。
■審査官:ユ・ジェミョン…韓国入国審査官。五郎が孤島に漂流したことから入国手続きのため五郎のもとにやってくる。
■ダニエル八田:マイケル・キダ…アメリカ兵。一見無口で日本語は話せなさそうだが、実は日本語をある程度理解している。五郎の友人が油断して好き勝手に話すと突然キレて「うるさいなお前、静かにしろ」と怒鳴る。
■中川:磯村勇斗…ドラマ“孤高のグルメ”の番組ディレクター。五郎のスープ探しを手伝う。
■滝山:村田雄浩(たけひろ)…五郎の同業者で長年の友人。現地を案内するビジネス仲間。軽口を叩きがちで、ダニエルが日本語を分からないだろうと高をくくって色々しゃべる。その油断が原因で、ダニエルに「静かにしろ」と一喝される。
■善福寺六郎:遠藤憲一…ドラマ“孤高のグルメ”の主人公。

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