
映画「呪いの血/マーサの奇妙な愛情」(原題:The Strange Love of Martha Ivers、1946、劇場未公開)を見る。監督は「西部戦線異状なし」(1930)のルイス・マイルストン。顎のくぼみがトレードマークのカーク・ダグラスの映画デビュー作。29歳のデビューと遅い。2020年2月5日、103歳没と長寿だった。
主演は「大平原」「深夜の告白」などのバーバラ・スタンウィック、共演は、のちの「シェーン」の牧場主などで知られるヴァン・ヘフリン、「大空に駈ける恋」のリザべス・スコットなど。音楽は「深夜の告白」「白い恐怖」「ベン・ハー」などのミクロス・ローザ。
少年2人と少女が殺人事件に関わり、18年後に成長した姿で再会を果たして…というストーリー。消えることのない記憶と罪を背負った子供たちが18年後のそれぞれの立場や社会的地位などを背景に人間模様が描かれる。
4人の人物がメインに登場するが突然現れた一人の女性は謎に包まれていて、全体の物語には直接の関係はない。脚本がイマイチか。
マーサとサム
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舞台は1928年、アイヴァースタウン、操車場。マーサ(ジャニス・ウィルソン)は止まっている貨車の中にいた。家出をしてきたのだ。
母親はおらずアイヴァース家が経営する工場の勤めていた父親が死亡し、叔母のアイヴァース夫人(ジュディス・アンダーソン:「レベッカ」の怖そうな婦人役!)に引き取られた。

姓はスミスからアイヴァースとなった。しかしマーサはアイヴァース夫人が嫌いで今回は四度目の家出だった。
貨車の扉が開いて仲良くしている少年サム(ダリル・ヒックマン)が入ってきた。サムが持ってきた食料を分ける。二人で可愛がっている猫にも分け与えた。
サムも母親がおらず、父親も工場で働いているという同じような境遇だ。サムは当地を離れるつもりでいる。そしてサムに好意を寄せるマーサも一緒に行こうと考えている。
しかし突然貨車の扉が開き、数人の男が現れて、マーサはアイヴァース家に連れ戻されてしまう。
アイヴァース邸。マーサの家庭教師としてアイヴァース家に出入りしているオニール(ローマン・ボーネン)。彼にはマーサと同年代のウォルターという息子がいる。

オニールは、マーサを連れ戻したのはウォルターだから、暗にハーバード大に行くための援助をとほのめかすが、使用人を呼び「アイスクリームをやって」と軽くあしらう。
ことほどさように、ウォルターの将来のこともあり、オニールはアイヴァース夫人に卑屈になりぺこぺこしている。ウォルターも自信がなさそうにおどおどしている少年だ(のちに、まさかのマーサとの結婚で政治家になるのだが…性格は変わらいもので、人前でのスピーチは苦手だった)。
マーサはウォルターとともに二階の自室に入った。窓からサムが猫を抱えて入ってきた。サムはきょう当地を離れると言う。マーサも一緒に行きたいと思っている。
猫が部屋の外に出た。猫嫌いのアイヴァース夫人が杖を持って猫に襲いかかった。猫の悲鳴を聞いたマーサが駆け付けて、思わず杖を奪い取ってアイヴァース夫人を殴った。アイヴァース夫人は階段を転げ落ちた。動かなくなった。
その間にサムは姿を消した。アイヴァース夫人は死亡した。
マーサは、その日付をしっかりと記憶した。アイヴァース夫人が死亡した日としてではなく、サムと離れ離れになった日として。
その後、オニールが駆け付けた。マーサは「知らない男が夫人を殴って落とした」と言い、さらにウォルターに同意を求めた。
ウォルターも頷いた。実のところオニールは、それが嘘であると分かっていたが反論しなかった。逆に二人にマーサの言葉を証言するようにしっかりと念を押した。
マーサはアイヴァース夫人の財産を相続した。21歳になって工場の経営を引き受けた。ウォルターは大学を卒業し検事となった。マーサとウォルターが結婚し、その間にオニールは死亡した。
そしてアイヴァース夫人の「殺害犯」が検挙されて死刑となった。その時の検事はウォルター。ウォルターは地方検事となり、マーサが経営する工場はさらに発展した。
アイヴァース夫人の件は、常に二人の心の大きな部分を占めていて二人の不仲の原因の一つとなっていた。
そんななか、1946年、マーサ(バーバラ・スタンウィック)は自分の事務所に行く途中でウォルター(カーク・ダグラス)の事務所に立ち寄った。そこに見かけない男性が訪ねてきていた。
しかしよく見るとサム・マスターソン(ヴァン・ヘフリン)だった。なつかしくなってハグをした。サムはウォルターに頼みごとをしに来たようである。

(ウォルターに内緒で)サムと会う約束をした。その後マーサは、車の修理工場にサムの車の修理を遅らせるように指示をした。サムに当地にいて欲しいからである。
マーサの事務所にサムが訪ねてきた。そしてアイヴァース夫人の死亡事故の件で脅す。「財産の半分をくれ」。ここでマーサはむしろ落ち着いて答えた。「私のパートナーになる?」。サムは答えを躊躇する。その場は別れてサムはホテルに帰る。
マーサは先ほどの答えを聞くために、サムが泊っているホテルを探して訪れる。そこにはトニー(リザベス・スコット)と言う女性がいた。マーサはサムが答えを躊躇した理由を理解したのだが…。
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映画の最初と最後で主人公の行動や考え方が変わっていた。人は選択に迫られたとき何を選ぶのかという物語。2人の女性が、一人の男に決断を迫るのだが…。
共通するのは父の影。愛する亡き父の影に縛られる夫婦。ナイーブなウォルターはマーサと自分のために犯した罪を悔やみ、酒びたりの日々。
ウォルターは、妻マーサの望む生き方をするべきか、財力を得たいという父の夢を続けるのか。決めかねているのだ。
一方、サムは、父を疎み、居場所を求めさすらい、たまたま知り合ったトニーと意気投合し「旅は道連れ。一緒に西部をめざそう」とする。
しかし、マーサがサムを引き留める。「過去に縛られる生活から抜け出したい。一緒に連れて行って」。
ラストに、18年前の晩と同じ状況が3人を襲う。階段の上に立つサムの耳元で甘くささやくマーサの声。「やるのよ。私たち自由になれるわ」その瞬間、サムの心は決まった。
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バーバラ・スタンウィック、リザべス・スコットという2人のハリウッド美人女優が目立つ。ヴァン・ヘフリンは、「シェーン」(1953)の時のごっつい農場夫という印象はなく若い。
<主な登場人物>
■マーサ・アイバース:バーバラ・スタンウィック
子供時代:ジャニス・ウィルソン

■サム・マスターソン:ヴァン・ヘフリン
子供時代:ダリル・ヒックマン

■アイヴァース夫人:ジュディス・アンダーソン…マーサの叔母。
■アントニア・マラチェク(通称トニー):リザベス・スコット

■ウォルター・オニール:カーク・ダグラス
子供時代:ミッキー・カーン

■Mr.オニール:ローマン・ボーネン…ウォルターの父。マーサの家庭教師。
■船乗り:ブレイク・エドワーズ

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