
「瞳の奥に」(全6話、Netflixドラマ、2021)を一気に見た。このドラマの「衝撃のラスト」というような評価・評判は耳タコくらい目にしていた。
このドラマ、表向きは「不倫×サイコスリラー」だが、その裏に隠された正体は「超常現象(アストラルプロジェクション=幽体離脱)」だった。
第1話~5話までは、どこか変だなと思いながら見ていたが、第6話になって真実が明かされるという構成だった。1話~5話は、怒涛の展開となる第6話の序章ともいえるものだった。
主な登場人物が4人いるが、それぞれの視点でみると、物語が理解できるようになる。主人公の一人アデルという女性が登場するが、現在と若いころと入り混じって描かれ時系列で混乱させられるが、それらはすべて伏線だった。
ふわふわっとしたアレが飛び交っていたのがあの意味だったのかと後でわかる。



【ストーリー】
シングルマザーのルイーズ・バーンズリー(シモーナ・ブラウン)がバーで出会った男性と勢いでキス。職場に行くと、その男性はなんと自分の職場の新しい上司・精神科医のデヴィッド・ファーガソン(トム・ベイとマン)だった。
さらにルイーズは、デヴィッドの妻アデル(イヴ・ヒューソン)とも偶然仲良くなり、秘密裏に両方と親しくなっていく。
デヴィッドとアデルの結婚生活には、なにか奇妙で不穏なものがあり、ルイーズはだんだんとその空気の中に巻き込まれていく。
・・・
【ネタバレ注意】
設定がわかるとすべてがつながる。
アデル(若いころ)は、友達のロブと精神病院で出会う。2人は「アストラルプロジェクション(幽体離脱)」を練習して本当にできるようになる。
しかし、ロブはアデルの裕福な生活に憧れ、自分の魂をアデルの体に入れて、アデルの体を乗っ取ってしまう。その結果、本物のアデルはロブの体に閉じ込められたまま死亡。今の「アデル」はロブが乗り移った存在(このことがわかるとそれまでのことが理解できる)。
ルイーズはアストラルプロジェクションを習得し、アデル(=ロブ)を助けようと幽体離脱。するとロブ(アデルの姿をした)が仕掛けてきて、ルイーズの体にロブの魂が入る。つまり最後の、ルイーズの肉体にはロブが乗っ取った状態になり、デヴィッドは「ロブの魂が入ったルイーズ」と結婚してしまうことになる。
デヴィッドは最初、アデル(=ロブ)に束縛され苦しんでいたのに、最後またロブに騙されてしまったことになる。
ラストはハッピーエンド風に見せかけて、実は恐ろしい入れ替わりサイコホラーだったというストーリーだった。
<各キャラの心理>
■ルイーズ・バーンズリー(シモーナ・ブラウン):

シングルマザーで孤独。心の支えを求めていた。デヴィッドに惹かれながらも、アデルとの友情にも本気で向き合ってしまう優しい性格。最後は「アデルを助けたい」という純粋な善意で行動した結果、ロブに利用されてしまった。正義感が強い反面、少し無防備で、人を信じやすかった。
■デヴィッド・ファーガソン(トム・ベイとマン):

外見は「冷たくミステリアスな医師」。内面はかなり追い詰められていた。本物のアデル(=死んだ彼女)への罪悪感と、乗っ取ったロブ(アデルの体)からの支配に苦しんでいた。「妻を殺してでも自由になりたい」という衝動がありながら、表には出せなかった。ラスト、ルイーズ(=ロブ)と結婚したのは「今度こそ救われた」と信じたかったから。
■アデル・ファーガソン(イヴ・ヒューソン):

幼い頃に両親を亡くし、心に深い闇を抱えていた。精神的に繊細で依存傾向が強かった。ロブと出会い、友情を深めたが、最後は裏切られ、無念の死を迎える。
■ロブ・ドミニク・ホイル(ロバート・アラマヨ):

アデルの唯一の友達だったが、心の底からアデルに嫉妬していた。「アデルになりたい」「金持ちの生活をしたい」「デヴィッドを手に入れたい」という強い欲望と執着があった。そのためにはアデルを殺すことすらいとわなかった。ルイーズに対しても「欲しいものを手に入れるために」全く同じことを繰り返した。
ロブはなぜこんなこと(=幽体離脱)をして他人になりすましたのか?
その動機は「羨望」と「独占欲」というものだった。貧しく、愛されずに育ったロブにとって、アデルは「完璧な存在」だった。アデルの財産、自由な生活、デヴィッドとの関係──すべてがロブには眩しかった。
だから「アデルになりたい」と本気で願い、幽体離脱の力を使ってでも奪った。さらに怖いのは、ロブはアデルを単に「羨ましい対象」として見ていたのではなく「自分のものにしたい」という異常な執着があった点。
【本物キャラの本心】
■ルイーズ:人を信じすぎた。ロブに体を乗っ取られて死亡?
■デヴィッド:逃げたい、救われたいと思うが、またロブに騙される。
■本物アデル:傷つきやすい心を持つ。ロブに殺され、体を乗っ取られる。
■ロブ:羨望と独占欲が強く、欲しいものをすべて手に入れる。
<デヴィッドの立場からの視点>
若い頃、アデル(=本物のアデル)と恋に落ち、結婚。しかし結婚後、アデルは次第に異常な執着を見せ始める。アデルは火事で両親を失った心の傷を抱えており、精神的に不安定。デヴィッドは火事でアデルを助けたときに、腕にやけどを負い、その傷跡が生々しく残っている。アデルを「守らなければ」と思いながらも、だんだんと重荷に感じ始める。
この時点では、デヴィッドも「妻を見捨てられない」という罪悪感に苦しみつつ、なんとか一緒に生きようとしていた。ところが、実際には、本当はアデルの中身がロブに入れ替わっていたのだが、デヴィッドは知らなかった。
デヴィッドは「人が変わったように束縛的になったアデル」という思いで、ずっと戦っていたのだ。「束縛される地獄」といってよく、アデル(実はロブ)はデヴィッドのすべてを監視し、支配しようとする。浮気しないか、行動はおかしくないか、常にチェック。
ということで、デヴィッドは、外に心の拠り所(ルイーズ)を求めてしまう。彼にとってアデルは「かつて愛したはずなのに、もう誰なのか分からない存在」になっていた。
しかし、医師としての倫理感もあり「妻を見捨てたら自分が悪人になる」と思い込んでしまって、離れられなかったのだ。デヴィッドは、精神的な檻にずっと閉じ込められていたのだ。
そんな時、ルイーズに出会ったことで、デヴィッドは希望を見出した。ルイーズは素直で純粋で自分を癒してくれる存在。彼女と一緒にいるときだけ、デヴィッドは「自由」を感じられた。
だから「彼女とならやり直せるかも」「もう一度、普通の人生を取り戻せるかも」と心の底から願うようになる。
このときのデヴィッドは「やっと自由を手に入れた」と信じたかった。もう後戻りできないと心に決めていたのだ。
ところが、最後に待っていたのは…。自由だと思ったルイーズも、実はロブに魂を乗っ取られていた。ラストのデヴィッドの微妙な表情(完全に笑っていない、どこかぎこちない)は、そのことを本能で感じ取っていることを暗示している。
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漫画のような「ドア」が何度も登場するが、これが面食らう原因でもあった。
このドラマで「ドア」の意味するところは、一つは、「境界・移行の象徴」で「肉体と魂」「現実と精神世界(アストラル界)」「自由と束縛」「自分と他者」といった「境界線」を表している。
二つ目のドアの意味は「自分のテリトリー」に対する恐れと欲望で「個人の聖域」「秘密の保護」。アデル(ロブ)は常にドアの外から誰かを見張っている。デヴィッドはドア越しにアデルを避けようとする。
三つめは「自由への希望」としてのドアで「新しい人生への希望」も象徴している。
おそらく2度鑑賞するとスッキリするかもしれない。
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