おはようございます。毎度おなじみ、「ぼくのかんがえたさいきょうの今年の新語」選考委員のながさわです。今年も勝手に今年の新語を選定します。今年もお許しください。今年は『三省堂国語辞典』風味にしました。
10位 緊急銃猟
きんきゅう じゅ┓うりょう[緊急銃猟]⦅名⦆人里にあらわれたクマ・イノシシを、市町村長の指示で、猟銃によって駆除くじょできるようにする制度。
今年9月施行の改正鳥獣保護管理法で新たに導入された制度です。今回唯一の百科語枠です。
9位 ドカ〇〇
どか[ドカ][接頭]〔俗〕程度が大きいようす。「―減り・―貧」[!]二〇二〇年代から、いろいろな語につくようになった。「―鬱うつ・―笑い・公共料金を―払ばらいした」
「どか減り」「どか食い」などは江戸期から、「どか貧」「どか雪」などは昭和からあったわけですが、近年になって「ドカ鬱」「ドカ笑い」「ドカ泣き」「ドカ沸き」「ドカ涙」「ドカブス」など、従来なかった組み合わせがドカドカ作られるようになりました。中には即興のようなものもあります。江戸、昭和に続く令和の第三次ドカブームが到来していると言ってよいでしょう。用法が拡大しているとはいえ、新明国と大辞林には同じ意味ですでに項目があり、順位は低めとしました。
8位 特級呪物
とっきゅう じゅ┓ぶつ[特級呪物]⦅名⦆〔俗〕おぞましい〈物/人〉。「冷蔵庫から―〔=くさったものなど〕が出てきた」[由来]芥見下々あくたみげげの漫画まんが「呪術廻戦じゅじゅつかいせん」に出てくる道具から。
元ネタの『呪術廻戦』を離れ、とんでもない、ヤバい物や人を指して「特級呪物」というようになりました。ネットスラングですが、「〔南が書いた色紙は〕南を愛する男たちにとっては特級呪物並みの代物だと言ってもいい」(川添愛『パンチラインの言語学』朝日新聞出版、2025年 p.32)と、一般書でも見られるようになっています。
7位 二季
に┓ き[二季]⦅名⦆①二つの〈季節/シーズン〉。「―咲ざき・―ぶりの出場」②季節が、夏と冬の二つしかないこと。「―化」〔今の季節の移り変わりが、従来の「四季」ではないという意識をあらわしたことば〕
「新語・流行語大賞」のトップテンにも選ばれ、「今年の言葉」感があります。新聞の投書などではゼロ年代から、その場の造語のような感じで出てきたりもしてはいました。ここ数年の気候から、いよいよ実感を伴ってきた感じがあり、一挙に人々の口の端に上るようになりました。
6位 ナーフ
ナ┓ーフ⦅名・他サ⦆〔Nerf=もと、おもちゃの銃じゅうの商標名〕〔俗〕〈弱める/やわらげる〉こと。「原作から―された描写びょうしゃ」〔コンピューターゲームの用語から、二〇二〇年代に広まった ことば〕
もとはコンピューターゲーム用語で、ゲームバランスの調整などのためにキャラクターやアイテムの性能を弱体化させることをいったことばです。これが拡張されて、近年は「原作のグロテスクな描写がアニメでナーフされる」「食事の量がナーフされる」などのように、程度が低くなること全般に使うようになっています。原義では、三省堂の『コンサイスカタカナ語辞典』が第5版(2020年)から立項しています。
5位 〇〇しろ
しろ[(代)]〈造]〔俗〕それをする余地。「遊び―があるゲーム・ぼけ―をさがす」☞伸のびしろ・踏ふみしろ。
「伸びしろ」からの類推でしょう、「〇〇する余地」を「〇〇しろ」と言うことが増えています。クイズ系YouTuberの動画には、問題の「出ししろ」という例もありました。「伸びしろ」自体も21世紀になってからの言い方で、実は新参者です。入選の決定打は、古賀及子さんのポストでした。
これはすごく繊細な感覚の話になるのですが、無添加ってかきのたねまで来得るんだ、かきのたねに無添加の来しろがあったんだ…と思って興奮して買うまでしてしまった pic.twitter.com/B4ul6I6DPU
— 古賀及子 (@eatmorecakes) 2025年10月18日
来しろ!
4位 ノンデリ
ノン デリ━⦅名・ダナ⦆〔←和製 non delicacy〕デリカシーがないこと。「―発言」
Googleトレンドで見ると、2021年からじわじわと検索数が増えはじめ、今年はさらに急上昇しています。2010年ごろからわずかに用例はあり、案外息の長いことばです。『現代用語の基礎知識』には2024年版から収録されました。「KY」をはじめ、この種の語は流行の移り変わりも激しいのですが、ここへ来て一挙に定着したということで、まだまだ使われる語になりそうです。
3位 死ぬ
し・ぬ━[(死ぬ)]⦅自五⦆〔俗〕気持ちのたかぶりが限界に達する。「推おしが かっこよすぎて―・新曲を聞いて死んだ」
『三省堂国語辞典』にはすでに「〔俗〕非常に苦しい状態になる」という語義があり、「仕事を引き受けすぎて死んだ」「日焼け止めをぬらず海へ行って死んだ」という、やけに実感のこもった用例も載っています。反語的に、いわゆる「しぬしぬ界隈」における「死ぬ」の用法が生まれるのも時間の問題でした。「無理」などと似たような変化ですが、「無理」が感動詞的にしか使いづらいのに対し、「死ぬ」は動詞なので「何々すぎて死んだ」のように活用しやすくて便利です。俗語として長く使われるでしょう。
2位 ぬい
ぬ┓い[(縫い)]⦅名⦆←ぬいぐるみ①。「―と出かける・―活・―撮と・どり」
すでに指摘のある通り、新井素子が先駆的な使用者のひとりとして知られています。早くも2014年には「あさイチ」が「ぬい撮り」を特集し、個人的には2020年代に入ってから普通に見るようになったという印象があります。「今年の新語」に選ぶにしては古くからありすぎる気もしますが、いわば特殊な趣味の世界のことばだったものが、推し活の一般化にともない、誰もが知る、辞書に必要なことばになったとも言えるでしょう。今年発売のポケモンのゲーム『Pokémon LEGENDS Z-A』にも「カナリィぬい」というアイテムが登場します。子どもにも通じる語になっているんですね。
大賞 バカ
ばか━[(:馬鹿)・(:莫迦)・バカ]⦅副⦆〔方/俗〕非常に。「―おもろい・先生に見つかって―あせった・―迷惑めいわくかけてくる客」
程度副詞に「バカ」を使うことが近年バカ多くなりました。これまでだったら「クソ」と言っていたところでしょうか。使用頻度は非常に高く、いまの日本語を写し取るうえで避けては通れません。新潟や静岡などの方言にもあり、それらの影響も考えられるところです。
新語というよりは新用法で、派手さこそないかもしれませんが、程度副詞という日本語の超重要ポジションに新たに殴り込んできたこの2文字に大賞を与えたいと思います。
……今年のランキング、10個中6個が2文字ですね。2025年は2文字の年でした。
選外
オンカジ チャピる
ChatGPTを使うことを「チャピる」とか「チャトる」とか言うらしいんですが、周りに使ってる人はいないような気がします。語形が安定してきたら一挙に広まりそうな気もしますが、様子見ということで。
また、今年もヤシロタケツグさん主宰の“三省堂の辞書を引く人が選ぶ「シン・今年の新語2025」”企画に参加しています。比べてお愉しみください。こちらでトップテン入りした「ビジュ」は、2022年の私選版に入れたので今年の私のランキングには入っていませんが、M!LKの楽曲「イイじゃん」がバカ流行ったので今年感がありますね。
高精度の選考が示した国語辞典と日本語の未来:「シン・今年の新語2025」トップ10【選評】www.poc39.com
本家のランキングも本日発表。楽しみです。
