オンライン辞書サービスの走りとして四半世紀にわたり多くのユーザーに愛された「goo辞書」が、2025年6月25日をもってサービスを終了することが発表されました。
愛用者からは、goo辞書のない世をどう渡り歩いていけばよいのかという嘆きの声が上がっています。私はこれまで、辞書マニアとして様々な辞書サービスを渉猟してきました。ここに、goo辞書の代替手段になりうるサービスを、主に目的別にまとめておきます。
※2025年5月現在の情報です。
目次
とりあえず無料で辞書を引きたいなら
何でもいいからオンラインで無料で辞書を引きたいということであれば、「コトバンク」が第一候補になります。
goo辞書に搭載されている辞書のうちでは、国語・百科の『デジタル大辞泉』、英語の『プログレッシブ英和中辞典』『プログレッシブ和英中辞典』、そして『からだと病気のしくみ図鑑』を引くことができます。
その他、かなり多くの辞書が収録されており、しかもいずれも小学館や講談社をはじめとする出版社・企業が編集したものですので、引用文献にできる程度に信頼性は高いといえます。
ただし、広告は出ます。しょうがない。有料の広告なしプランもありますが、お金を出せるなら、後述するジャパンナレッジへの加入も検討したいところです。
無料のオンライン辞書としては、「Weblio辞書」も候補になりますが、あまりおすすめはしません。
『デジタル大辞泉』『研究社新英和中辞典』など、信頼のおける辞書も多数収録されている一方、不審な記述の多い「実用日本語表現辞典」がトップに表示されるなど、情報を選り分けるスキルがないと使いづらいサービスです。
あとついでに、引用元や参考文献として示すときに、「コトバンクより」「Weblioより」と書いてはいけないということを言っておきます。これはポータルサイトの名前であって、個々の辞書の名前ではないからです。
「で終わる」「を含む」検索をしたいなら
goo辞書は、普通の前方一致検索のみならず、後方一致検索や部分一致ができるのが利点でした。類語を探すほか、クロスワードパズルや謎解きに使うといった需要もあったようです。
この点、アップル製品ユーザーであれば、「辞書 by 物書堂」というアプリが機能としては完全上位互換になります。
一般的な前方一致、後方一致、完全一致検索のほかに、「パターン検索」というものが用意されており、検索窓左の「*」をオンにした上で、たとえば「あ*し@(くき)」と入力すれば、「明石焼き」「足利義昭」「暗褐色」などがヒットします。

詳しい人には「正規表現検索」と言った方が通りがいいでしょう。goo辞書よりもはるかに高度な検索ができます。

goo辞書にも収録されている『デジタル大辞泉』をはじめ、80種以上の辞書を利用可能ですが、それぞれのコンテンツは有料です。もっとも、買い切りですし、『デジタル大辞泉』はデータのアップデートも無料なので、パターン検索を頻用するユーザーであれば必ず値段以上の価値を感じられるはずです。ちなみに、私は販売終了した辞書も含め、100以上の辞書を購入して引き比べています。辞書をどんどん追加で購入して、自分用に育てる楽しみも得られるアプリです。
現在、iOS、iPadOS、macOSに対応しており、将来はAndroidにも対応予定だそうです。
Androidユーザーであれば、『デジタル大辞泉』を引きたければ同名の単体のアプリがあり、goo辞書同等の検索に対応しています。
複数の辞書を利用したいのであれば、ロゴヴィスタの辞書アプリでやはり同じような検索ができますが、『デジタル大辞泉』は提供されていません。同規模の『大辞林』と『広辞苑』であれば利用することができます。iOSなどにも同一のアプリがあります。
これらのアプリは、物書堂では非対応の全文検索(goo辞書でいう「を説明文に含む」検索)も可能なのがメリットです。いずれも物書堂同様、買い切り型です。
上記のアプリは、オフライン環境でも使えるという利点はありますが、ウェブでは引けません。goo辞書のようにウェブブラウザを利用したければ、有料オンライン辞書サービスの「ジャパンナレッジ」が高度な検索に対応しています。特に個別検索では、「『日本国語大辞典』の出典情報欄に『夏目漱石』を含み、かつ見出しが『あ』または『い』で始まる形容詞」といったかなりややこしい検索も可能です。もちろん全文検索もできます。
会費は年16,500円からと少々お高めですが、『日本国語大辞典』をはじめ最強といっていいコンテンツを利用できるハイエンドのオンライン辞書サービスです。「goo辞書」のコンテンツでは、『デジタル大辞泉』『使い方の分かる類語例解辞典』『プログレッシブ英和中辞典』『プログレッシブ和英中辞典』を引くことができます。
そのほかの辞書の代わりがほしいなら
goo辞書に収録されている『デジタル大辞泉』『プログレッシブ英和中辞典』『プログレッシブ和英中辞典』『からだと病気のしくみ図鑑』『類語例解辞典』については、オンラインではコトバンクあるいはジャパンナレッジで引くことができることを上で紹介しました。そのほかの辞書についてはどうでしょうか。
「gooコロケーション辞典」「goo時事英語辞典」はその名の通りgoo辞書オリジナルなので、サービス終了後は全く利用できなくなってしまうものと思われます。
英語のコロケーションについては、「辞書 by 物書堂」で、『小学館オックスフォード英語コロケーション辞典』や、日本語訳はないもののこれより規模の大きい『Oxford Collocations Dictionary』を用いるのがよいでしょう。前者はジャパンナレッジにも収録されています(「JKパーソナル+R」コース)。
時事英語に関しては、およそ2ヶ月に1回と更新頻度の高い「英辞郎 on the WEB」が強いのですが、辞書というよりは対訳集なので、慣れないと使用の難しい面があります。検索は会員登録しなくても可能ですが、例文がヒットしないので、まずは無料版でもよいので必ず登録して使うようにしましょう。ちなみに、goo辞書でも2009年まで英辞郎が引けました。
もっとも、「gooコロケーション辞典」「goo時事英語辞典」はいずれもそこまで規模の大きな辞書ではありませんので、既存の英和・和英辞書でもある程度はカバーできると思います。
「漢字ペディア」は、漢検が直接運営するページを利用できます。
問題は『新明解四字熟語辞典』『学研四字熟語辞典』『全国方言辞典』です。これらは、簡単に引ける電子版がgoo辞書にしかありません。特に四字熟語は、カテゴリやキーワードからシチュエーションに合った四字熟語を探すことができますが、これに代わるものは他にありません(出版社が提供するものではないサービスはあるにはありますが、信頼できるかというと微妙です)。
代替の手段としては、国語辞典の類語欄や類語辞典を活用する方法があります。「辞書 by 物書堂」にある辞書でいうと、『デジタル大辞泉』や『明鏡国語辞典』が類語を比較的多く示しているほか、『角川類語新辞典』『日本語シソーラス 類語検索辞典』といった専門の類語辞典もあります。『日本語シソーラス』は意味こそ書かれていませんが、収録項目数が非常に多く、国語辞典と併用することで本領を発揮します。やや上級者向けですが、ことば探しには抜群に役立つでしょう。

「コトバンク」には『小学館 四字熟語を知る辞典』が収められています。日常的に使われる語が中心で、あまり難しいものは立項されていませんが、用例・解説が充実しており、引く価値があります。
方言辞典は、ジャパンナレッジに『日本方言大辞典』が収録されています。ただし、『全国方言辞典』と比べるとかなり専門的で、文献資料が中心であるなどだいぶ毛色が異なり、日常語中心の『全国方言辞典』が手軽に引けなくなるのは正直かなり惜しいところです。そんなに高いものではないし、『大辞泉』などと違ってかさばらないので、いっそ紙版を買ってしまいましょう。goo辞書版にはない分野別方言なんかもありますし、例文の朗読を収めたCDも付いてきます。
中学生向けの国語辞典である『例解新国語辞典』は、「たちまち」(広島で「とりあえず」の意)、「投げる」(北海道・東北で「捨てる」の意)といった「気づかない方言」を豊富に収録しており、実は日常的な方言の辞書としても使えます。書籍版を購入すれば、ウェブサイト「ことまなプラス」でデジタル版が利用できます。
おわりに
まず、類似サービスが次々に畳まれていく中、インターネット黎明期から今日にいたるまで、オンライン辞書のパイオニアとしてサービスを提供しつづけてくれたgoo辞書に、心からの敬意と感謝の意を表します。お疲れさまでした。
ここで紹介したサービスのほかに、ウェブ上には辞書っぽいサイトがいくつもあります。しかし、一見まともそうでも、専門家の目を通っていなかったり、項目によって品質にばらつきが大きかったりして、調べ物に使うのは危険であることが多くあります。
辞書をめぐる状況は決してよいものではありません。先頃も、カシオが電子辞書の新規開発を止めることを公表したばかりです。「悪貨は良貨を駆逐する」とはよく言ったもので、多くの人が「辞書っぽいサイト」ばかりを使うようになれば、まともな辞書はますます苦境に立たされ、信頼できる情報源がさらに失われていくでしょう。そんな世の中を招くことがないよう、ここらで食い止めておきたいものです。ことばを愛する皆さんにおかれましては、ぜひ信頼できる辞書を活用していただけるよう、切にお願い申し上げます。
