「中高年シングル女性」の存在が注目を集めているそうです。
たとえば、家族の介護などのケア労働に奔走していたのに、その存在を「家事手伝い」として扱われた結果、問題として可視化されていないまま高齢化してしまっただとか、「氷河期世代」の雇用状況も男女で差があるというか、男性優先だったとか(「就職氷河期」といっても前期後期とわけられていたり、リーマン・ショック時の就職難もありますし、さらに職種によっても異なるので一概にはいえないのですけど)。
そんなふうに男性中心の社会構造によってキャリアや資産、パートナーシップや家族をうまく築くことができなかった、あるいは自発的にシングルを選択した女性たち。『中高年シングル女性──ひとりで暮らすわたしたちのこと』(岩波新書)著者の和田靜香さんも自身のことを「中高年シングル女性の当事者」といいます。和田さんは専門学校を卒業後、音楽評論家の湯川れい子さんの元で働きながら音楽ライターとしてのキャリアをスタートさせた、その後もさまざまな音楽雑誌で執筆されていたのだけれど、国内における洋楽文化の後退や雑誌不況も重なり、40代半ばから並行してコンビニなどのアルバイトをして、食いつないできたとのこと。そんな和田さんが、さまざまな状況でさまざまな生活を送る「中高年シングル女性」たちに話を訊いたのが、本書になります。
「中高年シングル女性」とひとことで言っても、それぞれが抱えている困難、課題は多岐にわたっています。男女雇用機会均等法が施行される前から働いてきたけれど、コロナ禍と親の介護でメンタルを病んだ結果、医者から自己責任だと突き放された女性、正社員として就職したけど、結婚出産で退職し、離婚を経てシングルマザーになったけれど、キャリアの空白を理由に元の仕事に復帰できない女性、和田さん同様に80年代から音楽ライターとして活動してきたけれど無年金の女性──フェミニズムや社会運動にコミットしていた人から(労働組合から性差別を受けたり、社会運動の間での性被害も語られます)、そうでない人まで、さまざまな女性の、「これまで」の人生と「これから」の困難や課題が語られます。
和田さんは1975年に上梓された『ひとり暮しの戦後史──戦中世代の婦人たち』(岩波新書)の一文「女性の自立を阻む状況にみちた社会に、自立し生きる力も姿勢も備えられないままにひとりで生計を立ててきた婦人たちの歩みは、まことにきびしかった」を引き、この状況に50年間変化がないといいます。
また、現在進行系でコミュニティを作っている女性たち、対策を講じる団体なども紹介されています。とくに、大矢さよ子さんの主宰する「わくわくシニアシングルズ」の存在は大きく、本書で何度も出てきます。大矢さんの言葉だけでなく、「わくわくシニアシングルズ」の2000人以上のアンケート結果も本書のエビデンス面を支えています。
(なお、「わくわくシニアシングルズ」サイトの寄付のページ、リンクが切れているので、ご担当の方はお忙しいと思いますが、なんとかしていただけると、わたしが応援できます)
※1月7日加筆:寄付のページが見れるようになっていました。
「中高年シングル女性」は600万人といいます。そしてその大半が「貧困」と呼んでいいレベルの収入である。不安定な老後を目前にし、和田さんは「女性同士で繋がろう」と呼びかけます。そしてそこに、立憲民主党の蓮舫さんも賛同なさっていました。
次に取り組みたいのは
— れんほう🪷蓮舫🇯🇵 (@renho_sha) 2025年12月29日
「おひとり様」政策です。
一人で生きる選択をした女性が、
貧困や孤独に追い込まれる現実。
それは、もはや自己責任ではありません。
政治が向き合う課題です。 https://t.co/CcXof1zVuC
ご指摘ありがとうございます。
— れんほう🪷蓮舫🇯🇵 (@renho_sha) 2025年12月29日
おひとりで生きる男性も、もちろん支援の対象です。
同時に、現実として単独世帯の高齢女性は、相対的貧困率が4割を超えています。
性別で線を引くのではなく、
リスクの高い現実から、政治が責任を持って向き合う。
分断ではなく、包摂へ。
それが私の考えです。🌱 https://t.co/SucYTc0LrU
わたしも「中年のシングル女性」当事者なんですけど、少し警戒してしまいました。
だって、「なんらかの属性の集団」を社会問題のお神輿にして、アジテーションする。それでなんか解決したんですか。したのかな。してたらぜひ教えてほしいです。「氷河期世代」は何度も何度も何度も何度も何度も「社会問題」としてメディアで扱われてきましたよね。
氷河期世代の末端(わたしは、地方出身・高卒・非正規(フリーランス)・独身・障害者手帳持ちの女性です)として感じるのは、社会問題を語るメディアの「お神輿」として注目されてきたことで、昨今では国や自治体にも氷河期世代をなんとかしようという動きはあるにはあるけど、自分がフリーランスということもあるけれど、実感としては救済策が機能しているかは見えにくい状況です。そして、とくに「尊厳」を回復するようなことはなかったな、ということです。(というか「尊厳」って政策で回復されるようなものなのかな)
で、やっぱり「政治利用」というかアピールのひとつにされたりしますよね。去年全然氷河期世代じゃない生年の方が「氷河期世代」として選挙に立候補なさっており、今流行りの(流行ってない)「横転」してしまいました。落選したけど。
「中高年シングル女性」は、女性だけの問題じゃない──。わたしもそう思います。
だからこそ、「女性だけ」を社会問題のように扱うことに、抵抗があります。
しかも将来的にひとり暮らしは、増加する見込みだ。 「国立社会保障・人口問題研究所」が
五年に一度、国勢調査をもとに推計する「日本の世帯数の将来推計」(二〇二四年四月)では、全世帯に占める「ひとり暮らし世帯」の割合は三四・六%、一九〇〇万世帯(全五五〇〇万世帯)で、すでに世帯の最多となっている。それが二〇五〇年には四四・三%、二三三〇万世帯(全五二六一万世帯)と、半数近くになることが分かった。
また、二〇二〇から二〇五〇年の三〇年間に六五歳以上独居率は、女性が二三・六一 %→二
九・三%、男性も一六四%→二六・一%というように増えていくと予測されている。この数字は就職氷河期世代に、独身者が多いことも影響している。これから一体どうなっていくんだろう?
(『中高年シングル女性──ひとりで暮らすわたしたちのこと』9ページ)
国勢調査をもとに推計する「日本の世帯数の将来推計」を引用して中高年シングル女性の増加を問題にするけど、おなじく男性だって同じく増えています、氷河期世代が高齢者になるころには、単身男性の貧困も加速することが予測できます。
高齢女性の貧困は45%とのことですが、男性も30%にのぼります。女性の高齢者の分母のほうが多いとはいえ、無視していい数字ではないでしょう。現状でも、たとえば一昨年始まった内閣府孤立死の調査では(あんなに話題になってたのに、本格的な調査は一昨年からなんだって!)、単身高齢男性の孤立死率はトップクラスですし、それを「自己責任」とする風潮も散見されるのが本当にかなしいよ。
ちなみに和田さんは「社会の問題」として、女性にケア労働を押し付けてきた、透明化されてきた、といいますけれども、ご自身はご両親の介護をお姉さんに任せている状況であることも、本書には書いてありました。
でもさ、家庭を持つ弟は離れて住んで、シングルで実家住まいのシマコさんがお母さんの介
護してたんだよね?と言おうとしたが、ふと気づくと自分だって高齢の母から離れて住
んで、その世話を姉に任せっきりだ。(『中高年シングル女性──ひとりで暮らすわたしたちのこと』65ページ)
和田さんは、50年間女性をとりまく状況は変わっていないとおっしゃいますけど、おそらく50年前だったら、和田さんのような「両親の介護を姉に任せて東京で暮らす(“ふと気づくと”まで意識しなくていい)」選択肢を選ぶことは難しかったと思います。もちろん、それぞれのご家庭にはそれぞれの事情があるでしょうが……。たとえば、今現在ケア労働を担うお姉さんの「言葉」こそを、聞いてみたくもあります。
本書の6章では、住まいが課題といいます。たしかに、高齢者の住まいは今後何十年の課題でしょう。ただ、独身だけじゃなくて、夫婦だったとしても、家族がいても、高齢者は賃貸物件を借りることは現状むずかしいことが多いです。たとえば、生活保護の方よりも夫婦の年金生活者のほうが賃貸を借りにくいという話もあります(これは生活保護者を批判する意図はありません)。
女性も、男性も、どっちでもない人も、お金のない人も、ある人も、家族がいる人も、いない人も、正社員も、非正規も、フリーランスも、健常者とくくられる人も、身体も精神の障害者とくくられている人も、どこの国籍であっても、年上の人も、年下の人も、とにかくいろんな人と、手を組めたらいいなと思っています。
あとこれは杞憂だといいのだけど、「フェミニスト」や「リベラル」、あるいは「立憲民主党」を批判しているように見えるかもしれないので、この記事にいわゆる「アンフェ」の方が飛びつく可能性があると思うんですよね。それはやめてほしいですね。わたしの意図と異なるので。……ってわざわざ書かないといけないのがイヤだな、ほんと!