
賃貸物件から退去する際、退去することを賃貸人(大家さん)に告げるタイミングによって更新料が請求されてしまうことがあります。
その他、入居時に取り交わした契約内容によっては、エアコンや室内清掃の費用も賃借人(入居している人)負担となる場合があります。
以下の裁判例をご参考ください。
令和元年9月、賃借人Xは賃貸人Yとの間でマンションの一室について賃貸借契約を締結しました。契約には、更新料特約、清掃費特約、そして期間中の解約に関する条項が含まれていました。更新料は新賃料の1ヶ月分、清掃費は室内清掃費用として48,600円、エアコン清掃費用は退去時の実費精算と定められていました。期間中の解約は1ヶ月前の書面による申し入れが必要で、予告期間に満たない場合は1ヶ月分の賃料と管理費を空室損料として支払うことで即時解約できるとされていました。また、契約期間満了による終了の場合も、1ヶ月前までの書面による申し入れが求められていました。
契約期間満了を控えた令和3年9月5日、XはYに対し、9月30日を退去予定日として契約を解約する旨を書面で申し入れました。その後、10月3日にXは物件を明け渡しました。Xが敷金の返還を求めたところ、Yは契約が法定更新されたことによる更新料と清掃費用を敷金から差し引いたため、返還すべき金額はないと主張しました。これに対し、Xは更新料の支払い義務はないこと、清掃費特約は無効であることなどを主張し、敷金から日割り賃料を差し引いた残額の支払いを求めて提訴しました。原審ではXの請求は全て棄却されましたが、Xはこれを不服として控訴しました。
控訴審で裁判所は原審判決を取り消し、Xの請求の一部を認めました。
まず、更新料について、裁判所は契約書第16条の「空室損料を支払うことにより、直ちに本契約を解約することができる」という条項に注目しました。この条項に基づく解約権の行使期間に制限はないため、Xは契約期間満了後であってもこの権利を行使できると解釈しました。Xが退去予定日を期間満了後としていたのは、期間満了をもって契約を解約し、既に支払った賃料の期間について明渡しを猶予してほしいという意思表示であると判断しました。Yがこれに異議を唱えていない以上、契約は更新されることなく終了したと認められ、Xに更新料の支払い義務はないと結論付けました。ただし、Xは退去日までの空室損料として約2万円の支払義務を負うとしました。
次に、室内・エアコン清掃費用について、裁判所は特約の有効性を認めました。判例に基づき、通常損耗の原状回復義務を賃借人に負わせる特約は、負担する範囲が契約書に具体的に明記されているか、口頭で説明され明確に合意されている場合に有効とされます。本件の清掃費特約は、契約書に具体的な清掃費用が明記されていたため、有効であると判断されました。また、エアコン清掃費用については金額が特定されていないものの、対象と計算方法(実費精算)が明記されていることから、特約は無効にはならないとしました。
以上の判断に基づき、裁判所は敷金から空室損料と室内・エアコン清掃費用を差し引いた約7万円について、Xの請求を認容しました。
この事例は、更新料や清掃費に関する特約の解釈について重要な示唆を与えています。特に、清掃費用については金額が明記されていなくても、対象や計算方法が明確であれば特約が有効と判断される可能性がある点、また、契約期間満了直後の明け渡しにおける更新料支払いの要否は、契約条項の解釈によって結論が変わりうる点が示されました。
(東京地判 令4・10・19 2022WLJPCA10198012)
退去日と契約更新の扱いに関して、契約書などでの取り決めがなければ、上記のような扱いになるということですね。
賃貸人側の意思表示も重要になるところ。
賃貸人側が退去する際には、契約更新タイミングとの兼ね合いでややこしいことになりうるので、退去の意思を告げる時期はよく考えておくべきかと思います。
エアコンの清掃費用の負担も、入居時の契約書をよく確認しておかないといけないですね。
契約書の確認は頭を使って、疲れるところではありますが、トラブルを避けるためには最低限のチェックポイントは外さないようにしましょう。
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賃貸物件など不動産関連の契約を結ぶにあたって、確認が必要な部分を説明したのが以下の書籍になります。
これから不動産の購入、賃貸物件への入居を考えられている方、ぜひご一読ください。