日本がバブル経済に突き進み始めた頃に3,500台ほど作られ、数年後にひっそり生産が閉じられた超短命製品プラウベルマキナW67とご縁があった。
その生産数の少なさからまともな個体と出会うことがなかったのだけど、使わないデジタル機材一式を売りに行った帰りにガラスケースの中にあったぴかぴかのプラウベルマキナW67と目が合ってしまったのだ。
純正品のフード、ストラップからグリップまで付いてきた美品なので、これに取説と箱があったらデッドストック品と言っていいかもしれない。
プラウベルマキナ67の美品ですら見なくなったのに、まさかこんな希少品のワイド版マキナW67セットに出会えるなんて想像したこともなかった。
ここまでくると「カメラを買いました」を通り越して「ご縁がありました」と言う他ない。
これがどれくらいの衝撃かをわかりやすく例えると、ある日道端で綾瀬はるかとばったり出会い、なぜかそのまま恋に落ちて付き合い始めた…くらい衝撃的出会いだった。
なんの躊躇いもなく購入。もちろん財布は致命傷。
機材の蘊蓄を語るほどの知識はないしそんなつもりもないけれど、この出会いがあまりに嬉しかったのでこの文章を書いている。
感動の押し売りをするので我慢して読んで欲しい。

- プラウベルマキナW67について
- このカメラを探していたきっかけ
- 何がなんでも買いたかった、すぐに決済した理由
- まずはとてもがっかりした点について
- 素晴らしい画質に仰天した
- 670も欲しいな、なんて思い始めた
プラウベルマキナW67について
ハッセルブラッドがドイツとスウェーデンの合作なら、プラウベルマキナ67はドイツと日本の合作と言っていい*1。
このロマン溢れるカメラの紆余曲折ストーリーを大雑把にまとめると、日本のカメラマニアがドイツ人に基本設計させたカメラ*2を日本人設計者が煮詰め、ニコンに制作させた中判レンズを乗せマミヤが製造した中判レンジファインダーカメラ。それがプラウベルマキナ67シリーズ。
関係者が多すぎてこの時点でおなかいっぱい。
80mmレンズを乗せたプラウベルマキナ67とその改良版の670、55mmレンズを乗せたW67を合わせても総生産台数は25,000台程度。これらの本流以外にシュナイダー製スーパーアンギュロン47mmを乗せた69Wプロシフトなるものがあるが、こちらは更にレア物で一度も現物を見たことがない。
そもそもプラウベルマキナは生産数が少ないので、最近は店頭でも中々お目にかからない。
7年前の冬に横浜某所で綺麗な670を見つけてお店と交渉したのだが、何度電卓を叩いても26万円びた一文まからん…を見て「ちょっと考えます…」とお店を出た数日後に戻ったらすでになかった。スマホで撮った写真だけが手元に残っている。

このカメラを探していたきっかけ
レア物だから欲しかったわけでもなくカッコいいと思っていたわけでもなく*3、純粋にこのカメラを使って撮られた写真と上述の紆余曲折ストーリーの虜になってしまったのだ。
きっかけはMartin ParrとPerfect Daysで再び脚光を浴びたWim Wenders。
彼らがプラウベルマキナで撮った写真がずっと記憶の底に残っていて、いつかこのカメラを持って旅に出たいと思っていた。
6x7版の写真を撮りたいならプラウベルマキナじゃなくてもいいじゃないか、ペンタックス67だってあるしマミヤ7だっていいじゃないか…と思われるかもしれないけれど、旅情とかロードトリップっぽさを考えると、弁当箱のように折り畳めるプラウベルマキナがいいよね、という結論に至ったのである。もうこの時点でParr/Wenders=プラウベルマキナなの。
Martin ParrとWim Wendersの写真集はとても素晴らしいので必見。
Martin Parrはまもなく開催される今年のKyoto Graphieで大規模な展示がなされるので、こちらもぜひ足を運んでほしい。WendersのWritten in the westは入手困難かなぁ…。あまり見かけない。
何がなんでも買いたかった、すぐに決済した理由
ガラスケースの中のマキナを見つけた後、値段にドン引きして一瞬悩んだ次の瞬間に動作チェックをして買っていた。

すんでのところで買い逃した過去の苦い経験に加えて、この綺麗な個体を日本から出したくないと強く思ったから。
転売ヤーと思われる国籍不明アジア系の人間がスマホ片手にウロウロしている場所なので、このカメラだってうっかり眺めていたら他の国に行ってしまいかねない。カメラを買う理由は海外流出を防ぐため。これでいい。
インバウンド客は神様、グローバリズムが正義なんていまの風潮を僕は全然快く思ってないし外国人に文句を言ってはいけない、みたいな風潮はどうかしていると思う。外国人にはどんどん文句を言うべきだし、おもてなしするならもっと金を取るべきだし*4大切なものを売ってはいけない。
むしろこれらは日本が蓄えたモノを流出させたり、外国人に媚びたフェイクジャパンを濫造することで文化風俗を歪め、豊かさを奪っていくものであり、長い目で見たら日本を貧しくするだけだから*5。
レイシストだネトウヨだと罵らても構わない。価値あるものを後世に残す手伝いができるなら、全然安いもんだ*6。
まずはとてもがっかりした点について
プラウベルマキナすげー、いいもの買えてうれしー…と思ったのも束の間、神棚にカメラを置くわけにもいかず、街に繰り出して写真を撮っていたらあっという間に4ロールも使ってしまった。
楽しくて撮りまくったわけではなく、巻き上げても巻き上げてもシャッターがおりてくれないトラブルにいきなり遭遇。このトラブルは必ず起きるわけではなく、10コマ撮れたかと思えば半分しか撮れなかったりする。
まずはこのネガを見てほしい。巻き上げが急に重くなり6コマしかシャッターが落ちなかった。*7。

空シャッターは問題なく切れるのに、フィルムを装填するとなぜか起きるこのトラブル。
解決策は結構シンプルで、裏蓋についてるこの部分が悪さをしていたのでラジオペンチでコチョコチョしたら解決した。

裏蓋を閉めた時に押されるボディのこの部分が過剰に押し込まれると、巻き上げが重くなりシャッターが落ちなくなるっぽい。
巻き太りしてフィルムが終わりに近づくとシャッターが切れなくなる仕組みだと思うんだけど、正直そんなの要らんので不要な設計だったんじゃないかと思う。

素晴らしい画質に仰天した
買った翌日にあちこちぶらぶらして撮った写真を現像したら想像以上に凄かった。
ニコンが製作した中判レンズはとてもコントラストが高く、ハッセルブラッドSWC撮った時と同じ手法で現像したらより強いコントラストに仕上がって驚いた。そして隅から隅まで精細。
Kodak Tmax400とFomapan200合わせて4ロールも使っちゃった後悔がどうでも良くなる仕上がり。


舶来コンプレックスを植え込まれた僕ら日本人は放っておいてもライカスゴイ、ハッセルスゴイになっちゃうけれど、昭和57年に制作されたニコンの中判レンズは舶来ものを蹴飛ばしてしまうくらい素晴らしい。
ハッセルブラッドSWCのために製作されたビオゴンにも驚いたけど、W67のために設計されたニッコールはその遥か上を行っている*8。



670も欲しいな、なんて思い始めた
W67がこんなに素晴らしいんだから、あの時ガラスケースの中にあった670も保護すべきではないだろうか…なんて考えている。
Wendersが撮ったアメリカはワイドじゃない方の67だし、荒木経惟の「写真私情主義」も80mmレンズをつけたプラウベルマキナ67だし。あの美しい、文化財ともいえるカメラを海外流出させてなるものか。
一度流出させたものは取り返しようがないし、一度フェイクに染まった文化を立て直すのは簡単なことではないだろう。それってカメラだけじゃなくて、陶磁器だとか他の民芸品なんかでも同様だと思う。
*1:こんなことを書いてふと気づいたんだけど、最近のハッセルブラッドはレンズを日本のメーカーに設計させているので日典合作だ
*2:https://www.flickr.com/photos/146425980@N02/31082448344/in/pool-camerawiki/
*3:基本的にカメラはファッションに溶け込まないダサいアイテムだと思う。かっこいいカメラ?そんなのないっすよ。
*4:昔、野村訓市さんがラジオで喋ってたけど、日本人と外国人で二重価格にするのもアリだと思う
*5:街中に急に現れた忍者教室とか安っぽい射的場なんて、そもそも日本の文化になかった(忍者も外国人の頭の中のNINJAだし)し、都心でOMAKASEと掲げる店の日本料理はかなり怪しいし寿司屋が人の手にウニ乗っける下品なサービスはここ数年の間に外国人を喜ばせるために出現したフェイクジャパンだと考えているんだけど、如何だろうか?。
*6:ライカの優良個体が日本から出ていくことを苦々しく思っていながら意見することに躊躇する人は、もっときちんと文句を言っていいと思う。でも誰に?
*7:巻き上げできないシャッター落ちない現象に遭遇した時の心の声「このカメラの設計者ポンコツなんじゃねえの!」
*8:…と思う。当社比ね。


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