CASHというスマホアプリがあった。
大体2017年の話だ。なぜ覚えているかというと、俺がはてブを始めた時期だからだ。
(当時Android派だったので、無関係に祭りは終わった。)
当時、大学生だった。
情報工学を専攻して、将来なりたい職業はプログラマーだった。
数学も物理学も嫌いだった。情報工学だけを餌に大学まで行きついた。
だが、最終的にプログラマーを志すのは辞めた。
分野を知る度に、自分が詳しかったことはほんの一部分に過ぎないとわかり、
またその得意分野でさえ、数年単位で情報が入れ替わっていく事を知った。
それと俺は仕組みを知ることが好きなだけで、仕事にしたいとは思っていなかった。
ありきたりな話を書いてもしょうがない。
でも、これは俺のセラピーなので好きに書きたい。
読んでほしかったらはてな匿名ダイアリー(以降、増田)で書いたほうがいい。
はてなブログは、読んでもらえない。だから書く価値がある。
俺がプログラマーを断念したのは情報工学の奥深さ故ではない。
むしろ、大学で学んだ技術の諸々は今でも宝物だ。
辞書の索引のように、理解の糸口を今でも与えてくれている。
直接の原因は、当時読み漁ったエントリにある。
当時の俺は、はてなブックマークで大量の退職エントリを読み漁った。
また仕事関係の込み入った身の上話を、増田で大量に摂取した。
読めば読むほど、俺の中のプログラマー像は怨念でどす黒くなり、
最後には闇の中に見えなくなった。これがトリガーだった。
当時まだ社会にも出ていない若者が、
まだ業界も知らない新卒が、Z世代の切れ端が、
まだ成っていない職業の、何の怨念が分かるというのだろう?
分かるわけがない。分からないに決まっている。
でも、今はそれで良かったとも思っている。
俺は(遭遇してもいない)地獄への道をひとつ引き返しているからだ。
megamouthさんのこのエントリは、当時の俺にはよく響いた。
他にも色んなショッキングなエントリや濁った増田を沢山読んできた。
それらは読後感が良いものではなかったが、俺の中で道路標識のように佇み、
あらゆる道で「引き返せ、まだ間に合う」と囁いてくれた。
ああ、俺が増田を中毒的に読み漁ってきた理由はこれだったのかもしれない。
俺は地獄へ行きたくないらしい。恐ろしくて堪らないらしい。
だから、大量の叫びを取り込み、内面化して、未来に備えている。
まだ遭遇してもいない、この世にある地獄を避けることに必死になっている。
このエントリが書かれた頃、俺はまだ運動場でドッジボールをしていた。
それは幸運だったのだと思う。
地獄から引き返すことは、地獄の存在を知ることと等しい。
それを知らせるのは、社会に出る前くらいで丁度いい。
そしてこれを反面教師にしようとも、それは無駄なあがきだ。おいガキ、お前にその能力はないし、能力がなくても生きていけるだけの家に生まれたのなら、俺が理不尽でそれを奪ってやろう。奪われるように呪いをかけてやろう。
このエントリを書いている中で、こんな一文を見つけてしまった。
黄金頭さんに見透かされているようでゾッとする。
沢山の道路標識を立てて地獄を迂回したとしても、最後は無駄なあがきなのかもしれない。だけど……その答えは31歳に自分で確かめたい。
はてなブックマーク上で話題になる諸々の中には、
20年以上先のネタバレに思えることがある。
資産形成は、オタクの辞め時は、癌になったら、親が死んだら……
だが、どれも後から取り返せるものは無いように思える。
最近は、幸福であることは「取返しがつく」安心感を言ってるのではないかとすら思えてきた。「まだ間に合う」安心感と「もう間に合わない」絶望感は正反対だ。
それともあれだろうか、取返しがつかなくなるとそれはそれで「どうでもよくなった」安心感に代わるのだろうか。……よくわからない。
よくわからないが、着地させて寝よう。
AI産では人間の悲しい叫びが生まれない。それが俺が増田を読まなくなった理由なのかもしれない。誰かの叫びや後悔を内面化して、俺自身を助ける仕組みはこれまでは機能していた。だがこの先、叫びは聞こえなくなって、地獄に遭遇する日もきっとあるのだろう。
その時は血でブログでも書いて、後続には引き返してもらえばいいのだろう。
それとも、後続のガキと入れ替わりで、先に逃げ出したほうがいいのだろうか?
もはや後続は自身を脅かす敵なのかもしれない……ですよね先生方?
