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「エンジニアリングマネージャーはどう学んでいくのか」でデブサミ2024夏に登壇しました

もう1ヶ月以上も経ってしまいましたが、07/23-24に翔泳社様が主催した「Developers Summit 2024 Summer」にて公募枠で登壇しました。

event.shoeisha.jp

発表スライドはこちらです。

speakerdeck.com

この記事では、応募に至るまでの経緯と登壇の感想を書いていきます。

公募に至る経緯

独学大全から認知科学

このブログにはもう何度も書いていますが2020年に「独学大全」を読んで大きな衝撃を受けました。この本を読んで、それまで漠然と勉強していた自分を顧みて深く反省し、「いかに学ぶべきか」に向き合うようになりました。

「独学大全」はあくまで学習法の百科事典なので「なぜその手法が役立つのか」という裏付けは書かれていません。書かれている手法をただ鵜呑みにして実行するには自分はいささか捻くれていて、まずは手法に納得したいと学び始めたのが認知科学でした。

認知科学とは

人間の知覚、記憶、思考などの知的機能のしくみを、心理学や計算機科学などのさまざまな分野の視点から研究する科学1

と説明されます。要は「人間の知性とはどのようなものか」を探る学問で、裏を返せば「人間の愚かさ」を解き明かす学問とも言えます。

認知科学の入門書を手に取ってみると、日々の生活で心当たりがある事例が多数紹介されていました。

「あるある」を科学的手法で裏付けていく過程があまりにも面白くて一気に引き込まれ、専門書を何冊も読むようになりました。

RubyKaigi 2024をきっかけにプロポーザルを提出

認知科学を学ぶにつれて学習法が裏付けのある形で徐々に身に着いてきて、「これをまとめてどこかで発表できないか」と思うようになりました。

しかし、この話をどこに持っていってよいのか分かりません。

Kaigi on Rails 2023に「認知科学の知見から考える『優秀なプログラマ』への道」というタイトルでプロポーザルを出してみたのですが、やはり落選。

それ以降、話したい欲望と諦めでモヤモヤしながら塩漬けにしてしまっていたのですが、RubyKaigi 2024で様々な発表を見て「学んだことをどこかに出したい」という気持ちが再燃。

調べてみるとデブサミ夏の公募締切が3日後に迫っていたため、「ここなら行けるのでは」と勢いでプロポーザルを書いて提出しました。

急ごしらえの割には、というか急ごしらえできるほど染み付いた内容だったのが良かったのか、無事採択をいただきました。

学んだきたことが日の目を見る機会を得たのが嬉しくて、思わずガッツポーズです。

発表について

内容

そんなわけで喜び勇んで発表の準備を始めたわけですが、内容の作り込みは難航しました。プロポーザルがさらりと書けたのが嘘のようです。

Helpfeel Cosense に箇条書きで書いて推敲して……を何度も繰り返し、「これでスライドを作ろう」と思えたときにはすでに準備期間の3分の2を費やしてしまっていました。正直なところ甘く見ていたなあと思います。

なぜ難しかったかといえば、ただ学んだことをまとめるだけでなかったからです。自分の意見が説得力を持つように実験的事実を並べて構成を作っていかなくてはなりませんでした。発表内容をまとめ始めた段階では「自分の意見」すら明確に言語化できていない状態だったのですから、時間がかかるのは当然です。

また、構成ができあがった後、それをスライドに落とし込んで行くのもなかなか大変でした。というのも、自分は認知科学の学位を持っていない素人であることを前提に構成しなくてはならなかったからです。

こんな大舞台で専門外の発表をさせてもらうからには、素人なりに専門家が生み出した知識に正直であらねばなりません。

そのため実験的事実・専門家の考察・自分の考察は明確に区別できる形で示し、引用元の明示は妥協せずに行いました。

なんとか、自分なりの正直さは示せたかなと思います。

既存の説にリスペクトを示した上で自分の仮説を調和折衷させて「思考の整理学」で言うところの「カクテル」2を目指して作ったのですが、上手く行った感触はあまりないですね。むやみに背伸びをするものではない。

スライドデザイン

スライドは以下の2つのスライドを参考に、過去一作り込むつもりで挑みました。

これらのスライドから、

  • 箇条書きの第2レベルの文字は色を薄くする
  • 上部に小さく章タイトルを表示
  • 網掛けを使った強調
  • アジェンダの途中経過を表示
  • サブカラーを使ってピクトグラムが埋もれないようにする

などなど沢山のテクニックを拝借し、おかげさまで「そのスライドで強調したいこと」「強調したい内容の補足情報」を区別したり、話半分で聴いていても全体像を把握できるようにしたり、全体像の中での現在地を見失いにくくしたり、聴講者のことを考えて様々に気を配ったスライドにできたと思います。

ちなみに、カラーパレットは引用が最も多かった書籍「脳はこうして学ぶ」の表紙デザインをベースにしました。

ただ、そのまま引っ張ってくるのはまずいと思ってネイビーは紫に、ミントグリーンは抹茶に寄せました。

こんな書影どーんのスライドがあったけど突っ込まれなかったので、ちゃんと「似てるけど別物」にはできたかな……

発表

発表練習は同僚に2度も付き合ってもらった他、某雑談Slack経由の友人にも付き合ってもらいました。

フィードバックを受け、詰め込み過ぎだった内容をばっさり切って説明不足だった箇所を掘り下げられました。おかげさまで分かりやすさの面で全体として大きく改善しています。

やっぱり誰かに見てもらうって大事です。ありがとうございました。

発表練習は上記の他に一人でも繰り返し行っていたため、当日は滞りなく喋り切ることができました。

ただ無意識に緊張はしていたようで、練習では時間ギリギリだったはずなのに本番では2分も巻いてしまっていたとのこと。そんなに早口で喋った記憶はないんだけどな?

まあ「早口過ぎて聞きづらかった」という感想は見られなかったので、笑い話で済みそうです。

発表の反響

X(Twitter)やアンケート回答を見る限り、概ね好評だったようで一安心です。

Ask The Speakerでも興奮気味に話しかけてくださった方が何名もいらっしゃいました。自分の発表が刺さった人がいるのを肌で感じるなんて、こんなに嬉しいことはないですね。

また、アップしたスライドも多くの方に届いたようで何よりです。

ただ「EMの話はそんなにないのでタイトル詐欺」というご意見だけは、黙って頭を下げるしかないです……その通りなので。というか発表練習でも言われたし。

認知科学に基づいた学習ノウハウを無理やりEMに寄せた話なのでそういう意見が出るのは仕方ないです。ただ、発表内で挙げた事例から分かるように聴衆の想定ペルソナは間違いなくEMなので、どうかご容赦ください。

他の発表の感想

初日は自分の発表に集中していて2日目はその余韻でふわふわしていたためあまり聞けていないですが、簡単に他の発表の感想を。

さきがけから振り返るアーキテクチャ刷新:技術革新と進化をもたらした戦略と戦術

さきがけから振り返るアーキテクチャ刷新 / Reflecting on the Architectural Renewal from the Vanguard - Speaker Deck

nrsさん(@nrslib)の発表。

アーキテクチャ刷新は弊社でも経験がある ので、首がもげるほど頷きながらきいていました。

一人で作り切って知見を貯めて、そこで初めて形式知にして横に展開するのが王道だと思っていたのですが、それが見事に言語化されていて感服しました。

最初からがっつり分業するとオーナーシップが薄くなって、サービス運用が軌道に乗りにくいんですよね(本人は大変だけど)。ただ、軌道に乗ったあと属人性を放置するのも良くないので、自分の知見を形式知に変えつつ、人数を絞って形式化しにくい部分を伝授していくのが良いのかなと。

インフラと開発基盤の整備については特に具体的に話されていたので、新規開発のときにも使えそうだなー。

目標設定は好きですか?アジャイルとともに目標と向き合い続ける方法

目標設定は好きですか? アジャイルとともに目標と向き合い続ける方法 / Do you like target Management? - Speaker Deck

いくおさん(@dora_e_m)の発表。オーケーアーーール!!!

「目標設定はチームとメンバーの成長のために活用するもの」という主張が首尾一貫していて聞きやすかったです。

組織全体としてOKRはどう設定するのか?についても聞いてみたいなあ。

オーナーシップは誰のものか プロダクトマネージャーに頼らないプロダクトマネジメントへの挑戦

devsumi-2024-summer - Speaker Deck

onigraさん(@onigra_)の発表。

営業組織とプロダクト組織が同じ目標を見られるように構造を変更して、事業としては上手くいくようになったもののドラスティックな組織変更にはやはりネガティブな影響もあって……というお話。

資料に「会場限定」の内容が多いことから察せられると思いますが、生々しく、そして壮絶な話でした。EMとしての覚悟を問われているようで、胸にズバズバ突き刺さりました。必要だったとしても、果たして自分はそこまでの覚悟を持って組織変更を断行し、そしてやり切ることができるだろうか……。

onigraさんとは懇親会と2次会でご一緒させてもらい、様々に裏話を聞くことができました。イベントの醍醐味ですよね。

彼もRubyコミュニティにいるそうで、別のところで近々お会いできそうです。

発表を終えて

内容を当日までにまとめきることができ、そして大きな失敗もなく本番を終えられました。3年間コツコツ学んできたことをぶつける場所だと(誇張でもなんでもなく)位置づけていたのでホッとしています。

しかしまあ、資料をまとめる過程で自分の理解がいかに浅いか、勘違いしていることがいかに多いかを思い知らされました。「学ぶことは結局のところ、自分のバカさ加減と付き合うこと」3だというのを嫌というほど感じましたね。

ただ、その中で以下を明に言語化できたのは自分の大きな財産となったと思います。

  • 非定型問題への対応とは仮説検証である
  • 仮説の精度を高めるには、幅広く学び深く定着させることが重要
  • そのためには深い意味的処理を繰り返す必要がある

要は「学問に王道なし」というありふれた結論なのですが、この言葉をただ知っているのと裏付けを持って確信できているのとでは天と地ほどの差がありますからね。

これからも積み重ねをより大事にしていきたいと思います。

認知科学は今後も断続的に学ぼうとは思いますが、集中的に学ぶのはこれで一区切りです。

思えば、学習法に向き合い始めたのは「学生時代に学ぶことにきちんと向き合えなかったことへの後悔」と「マネジメントをやりたいと言いながら、自分には知識も経験も足りないという焦り」でした。

後悔と焦りがベースにあったため視野が狭まっておりしばらく他に目を向ける余裕もなかったのですが、「一区切り」といえるほど向き合ったおかげで一定の自信と余裕を持つことができるようになりました。

おかげで、今は興味のある本をふらふら読んだり余暇を楽しんだりすることができるようになっています。

一方で、近々職場の状況が変わって求められることが増え、時間的にはどんどん余裕がなくなってくるものと思われます。視野も常に広く持っていかなくてはならないのですが、視野の広さは心の余裕があってこそ。

せっかく手に入れた心の余裕を維持できるよう、健康維持も含めてこれからも精進していきたいと思います。

それでは。




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