
電気自動車(EV)に乗るうえで、多くの人が不安に感じるのが「電欠(でんけつ)」です。走行中にバッテリー残量がゼロになる状態を指しますが、ガス欠とは違い、すぐに再出発はできません。とはいえ、最新のEVは航続距離が大きく伸び、充電インフラも着実に整備が進んでいます。正しい知識と少しの工夫があれば、電欠を防ぐことは十分に可能です。 本記事では、電欠の基礎知識から起こりやすい原因、実際の発生状況、万一の対処法、日常でできる予防策までをまとめて解説します。
- 電欠とは? EVで起こる「バッテリー切れ」の基礎知識
- 電欠に関する最新動向と実態
- 電欠になってしまったら? 対処法とロードサービス
- 電欠の予防策
- 都市? 郊外? 長距離? 電欠しないためのEV選びのヒント
- 電欠を正しく理解し、安心してEVライフを楽しむために
電欠とは? EVで起こる「バッテリー切れ」の基礎知識
EVユーザーの中でも、「電欠」が具体的にどんな状態を指すのか、どのような状況に陥ってしまうのか、正しく理解している人は意外と多くありません。まずは電欠の基礎知識から確認していきます。
電欠とガス欠の違いは「復帰にかかる時間」

「電欠」とは、EVが「駆動用バッテリー」の電気を使い果たすことを指します。EVはバッテリーを2種類搭載していますが、「駆動用バッテリー」の残量がなくなると、当然ながら、走行することができません。エンジン車が燃料を使い果たした「ガス欠」を、EV用に替えた表現と言えるでしょう。
〈図〉EVに搭載されている2つのバッテリー

クルマを運転する方なら、ガス欠がいかに危機的な状況かを理解できると思いますが、電欠はガス欠と比較してもさらに厄介なトラブルです。
なぜなら電欠はガス欠と比べて「復帰に時間がかかる」からです。
どちらも動けなくなるのは同様ですが、エンジン車のガス欠は燃料を給油すればすぐに再出発することが可能です。そのため、その場に停まったままでロードサービスに救援を要請し、燃料を入れてもらえれば問題はすぐに解決します。
一方、EVが電欠した場合、基本的には充電設備のある充電スポットにクルマを移動させ、それなりの時間をかけて充電する必要があります。ロードサービスに救援を要請し、レッカー移動してもらい、そこから充電する、という工程を取らなくてはいけないのです。また、EVを移動させる際にも注意が必要です(詳細は後述します)。
一度発生してしまうと、多くの時間と手間がかかってしまうことが、電欠がユーザーに非常に嫌がられる要因となっています。
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電欠が起こりやすくなる要因とは?
電欠は、誰もが避けたいトラブルであるのは間違いありません。
もちろん、運転中のバッテリーの残量管理を適切に行い、バッテリー残量(SOC)が20〜30%になったら早めに充電することが重要なのですが、想像以上に残量が減ってしまったり、不可抗力で電欠に陥ってしまうシチュエーションもあります。
たとえば、「極寒・酷暑の環境でエアコンを長時間フル稼働させた」「上り坂が多い道での走行が続いた」「急加速をする場面が多かった」となれば、バッテリー残量は大きく減ります。
また、「走行前の充電計画が誤っていた」「充電器が故障していた」といったことがあると、予定どおりに充電できず、やむを得ず、電欠に陥ってしまうことがあります。
〈表〉電欠の可能性が高まる要因例
| 分類 | 要因例 | 電欠につながる理由 |
| 気候・空調 | 寒冷時・猛暑時のエアコン多用 | 暖房・冷房ともに電力消費が大きく、航続可能距離が短くなりやすい |
| 走行環境 | 上り坂の多いルート | 勾配があるほどモーター負荷が高まり、消費電力が増加する |
| 運転操作 | 無駄な加速・急加速の多用 | 加速時に大きな電力を消費し、電費が悪化する |
| 充電計画 | 事前の充電計画ミス | 航続距離や充電タイミングを考慮せずに走行してしまう |
| 充電スポットの事前確認不足 | 充電したい場所で充電できず、予定外に走行距離が伸びる | |
| 充電環境 | 充電器の混雑・故障 | 到着しても充電できず、次の充電スポットまで走る必要が生じる |
これらはEVのドライブに慣れてくれば、解消できたり、予想できたりする要因が多いです。ただし、EVに乗り始めたばかりだとバッテリーの減り具合がよくわからないため、不安になるでしょう。まずはこれらを把握しておいてください。
電欠に関する最新動向と実態
このように非常に厄介な電欠ですが、実際にはどの程度起こるものなのでしょうか。客観的なデータから現状を知ることで、必要以上に怖がらずにEVと付き合えるようにしましょう。
電欠トラブルの発生状況
2000万人以上のドライバーが会員になっているJAF(日本自動車連盟)が発表しているロードサービス救援データを参考にしてみましょう。
EVを対象とした2024年度の1年間のロードサービスの救援件数は9419件、そのうち「電欠」は1049件で全体の約11%を占めています1)。日本のEV保有台数(2024年度末)は約36万台2)ですから、単純に計算すると、電欠トラブルに見舞われているのは約0.29%に過ぎない、と見ることもできるでしょう。
「EVは電欠するから…」と敬遠されることがありますが、ほとんどの方は直面することはないのが現状と言えるでしょう。
最新EVの航続距離はどれくらい?

EVの性能において、電欠の回避に直結するのが航続距離です。エンジン車に比べてEVの航続距離は短いという点は長らく課題とされてきましたが、バッテリー容量の増加や電費性能の向上によって状況は改善しつつあります。
世界初の普通自動車の量産EVとして2010年に登場した日産の初代「リーフ」は、24kWhのバッテリーを搭載し、その航続距離は200km(JC08モード※)3)でした。それから15年後となる2025年に発表された3代目の「リーフ」は、最大で78kWhのバッテリーを搭載し、航続距離も最大702km(WLTCモード)4)まで伸ばしています。
※JC08モードはクルマの燃費表示や燃費の測定方法を示すものとして2011年から2018年まで使用されていました。2018年10月以降、燃費表示はより実燃費に近い「WLTCモード」に切り替わっています。
そして現在では中型SUVタイプの国産EVの多くは70kWhほどのバッテリーを搭載し、600km程度の航続距離を実現しています。また、軽自動車の国産EVであれば、20~30kWhのバッテリーを積んで180~295kmを走れるようになっています。
近年のEVは、搭載するバッテリー容量が大きくなり、航続距離も伸びています。そのため、新型モデルになるほど、電欠しにくくなっていると言えるでしょう。
〈表〉航続距離・バッテリー容量の一例
| 車種・グレード名 | 航続距離(WLTCモード) | バッテリー容量 |
| アウディ「Audi A6 Sportback e-tron performance」5) | 769km(846km※) | 100kWh |
| 日産「リーフ B7」 | 685~702km | 78kWh |
| トヨタ「bZ4X Z」6) | 687~746km | 74.7kWh |
| ホンダ「N-ONE e:」7) | 295km | 29.6kWh |
※オプションの「レンジプラスパッケージ」装備車
参考資料
3)日産「ゼロ・エミッションの電気自動車(EV)「日産リーフ」を発売」
4)日産「新型「日産リーフ」B7を発表」
5)アウディ「Audi A6 Sportback e-tron」
6)トヨタ「bZ4X」
7)ホンダ「N-ONE e:」
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充電インフラの拡充状況は?

電欠を回避するために重要な要素として、充電インフラの整備が挙げられます。
出先での充電は、移動途中に行う急速充電(経路充電)と、滞在先などでの普通充電(目的地充電)の2種類があります。その数は、経済産業省の発表によると、年々じわじわと増えており、2025年3月末の時点で、急速充電器と普通充電器(目的地充電)の総数は、全国で約4万3000口となります。急速充電が約1万2000口で、普通充電(目的地充電)が約3万1000口です8)。
日本では、2023年10月に「充電インフラ整備促進に向けた指針」が国から出ており、2030年までに30万口の整備を目指すという目標数が示されています9)。そのため、充電インフラのさらなる拡充が期待できます。
〈図〉日本における充電器設置口数の推移

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電欠になってしまったら? 対処法とロードサービス

対応が厄介な電欠ではありますが、万が一発生しても、落ち着いて正しく対応すればそれ以上大きなトラブルに発展することは避けられます。ここでは、まず取るべき行動とロードサービスの活用方法を整理します。
電欠が近づくとどうなる?
電欠状態に近づくと、どのEVも駆動用バッテリーの容量が減ってきたことを知らせる警告灯が点灯します。メーカーによって名称が異なりますが、「駆動用電池充電警告灯」や「バッテリー残量警告灯」などと呼ばれています。さらにバッテリー消費を抑える「出力制限表示灯」(日産の場合、亀を模しているため通称「亀マーク」)が表示されることもあります。
いずれにせよ、昨今のEVであれば、しっかりとメーターを見ていれば、誰でも駆動用バッテリーの残量が少なくなっていることがわかるようになっています。
電欠するかも、と思ったら取るべき行動
電欠しそうな状況に陥った場合に取るべきは、余裕を持った行動です。バッテリー残量が残り少なくなってきたと気づいた時点で、すぐに充電スポットに向かいましょう。車両のメーターなどに、残りの航続可能距離が表示されますが、ギリギリの距離まで走れると計算するのは危険です。なぜなら、現実には、メーター表示よりも短い距離で電欠してしまう可能性があるからです。
残り30km走れるとメーターに表示されていても、実際には、20kmしか走れなかったということもあります。充電場所探しは、ナビアプリやカーナビなどを活用します。アプリによっては、リアルタイムで充電器の使用状況がわかるものもあります。
もし、どうしても充電スポットまで届かない場合は、完全に停止してしまう前に安全な場所にクルマを停めます。そこからJAFや自動車保険などのロードサービスに連絡して、充電スポットまでクルマを移動してもらいます。
電欠が起こる状況として最悪のケースは、電欠によって走行車線上でピクリとも動けなくなる状態です。ギアをN(ニュートラル)ポジションにすれば、人力で押して移動できる車種もあります。その場合は、クルマを押して、路側側にクルマを移動させます。もしも、押してもまったく動かない場合は、クルマの後方に三角表示板を置いたり、発炎筒を焚いたりして後続車に停止車両があることを知らせます。その上で、クルマから降りて、安全な場所に移動して、道路管理者に通報したり、ロードサービスの救援を呼んだりしましょう。
ロードサービスでできること・できないこと

電欠したEVに対するロードサービスの救援方法は、基本的には「充電スポットまでの車両の移動」です。
車両を移動する場合、EVは駆動輪にモーターがつながっているため、駆動輪をひきずる格好でクルマを移動すると故障してしまいます。つまり、ロープなどで引っ張っての移動、いわゆる「けん引」には注意が必要です。移動させたいときは、FWD(前輪駆動)ならば前輪を浮かした状態で、4WD(四輪駆動)なら4輪すべてを浮かした状態でレッカー車を使っての移動となります。ロードサービスに問い合わせる際は「EVである」「車輪を浮かせる必要がある」ことを事前に伝えましょう。
一方で、「充電スポットまでの車両の移動」に加え、「その場での充電」という救援方法が近年スタートしました。たとえば、JAFでは2023年からサービスカーなどに充電機材を搭載し、停車した場所で充電するサービスの実証実験を開始しています。2025年12月からはサービス対象を全国47都道府県に拡大しています10)ので、JAFでの救援の場合、電欠したその場で充電できる可能性も高まっています。また、損害保険ジャパンも自社の自動車保険加入者向けに「その場での充電」サービスを2026年1月より全国で開始しました11)。こちらの特徴は、救援車から電欠車へ直接充電する「V2V(Vehicle to Vehicle)」の方式を取っているところです。
なお、その場で充電して走れるようになると言っても、現場での充電時間は20~30分程度で、充電量は航続可能距離でおおよそ20~30km分のみとなりますので覚えておきましょう。
JAFを筆頭に、ロードサービスを行うスタッフは、まさに救援のプロばかりです。筆者も経験がありますが、トラブルで落ち込んだときに、そうしたプロの救援は非常に心強く感じるものです。日頃から、万一のトラブル時の連絡先のメモをクルマの中に用意しておくことをおすすめします。
参考資料
10)JAF「JAF、BEV充電サービスの実証実験を全国47都道府県へ拡大 ~BEVトラブルの約11%は電欠、ロードサービス現場での対応を強化~」
11)損害保険ジャパン「EV電欠時の不安を解消 「現場駆け付け急速充電サービス」を全国に拡大」
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電欠の予防策
電欠を防ぐために特別な知識や装備が必要なわけではありません。基本的な考え方と少しの工夫を知っておくだけで、リスクを大きく下げることができます。
正しい航続可能距離の考え方

EVの航続可能距離は、外気温やエアコンの使用状況、走行速度、道路の勾配などによって変化します。そのため、航続可能距離は、刻一刻と変化することを理解しましょう。メーターに表示される航続可能距離はあくまでも参考です。
基本的には、気温が高すぎ・低すぎてエアコンを強く使用するときは、航続可能距離が短くなります。同様に、速度が高くなるほど、上り坂が多いほど、航続可能距離が短くなると覚えておきましょう。
航続可能距離の表示は「走れる限界」ではなく、「次に充電すべき目安」と考えることが大切です。表示距離の7〜8割を実質的な航続可能距離と捉え、早めに充電行動へ移ることが電欠予防につながります。
電欠になりにくい走り方と電費改善のコツ
電欠を避けるには効率のよい走りを心がけることが大切です。特に注意したいのが無駄な加速を減らすことです。発進から全力で加速したり、先の信号が赤なのに加速したりする、といった運転は無駄な加速の一例です。加速は、交通の流れに合わせて適切に行い、目的の速度に到達したら、速度の維持に努めます。減速では、アクセルをオフすることで発生する回生ブレーキを積極的に使いましょう。
また、EV DAYSが過去に行った走行実験では、高速道路において、80km/hを基準にした走行が最も電費がよく、逆に120km/hでは平均電費を17%も下回るという結果がでました。ガソリン車同様、EVも高速走行では電費が悪化するのです。そのため、適度な速度での走行が電費の良い走りにつながります。加えて、走行距離を最短にして効率的に走るために、カーナビを積極的に利用するようにしましょう。
充電計画の立て方とアプリ活用術

遠出をするときや、知らない場所に行くときは、充電を考慮した計画を立ててから出発しましょう。
どこに充電スポットがあるのかを把握して、どのタイミングで充電を行うのかを考えておくのが大切です。意外に重要なのが、充電スポットの最大出力です。同じ急速充電器でも、最大出力が25kW、50kW、90kWでは、同じ30分間の急速充電でも充電できる電力量が変わります。
アプリなどを使うことで、どこに充電スポットがあるのか、最大出力はいくつか、現在充電スポットが空いているのかどうかなどを確認することができます。使いやすいアプリを探しておきましょう。
ちなみに、駆動用バッテリーは100%の満充電に近づくほどに充電しにくくなっていく特性があります。無理に100%の満充電を求めて充電を繰り返すよりも、80%以上で走り出す方が効率的なのです。
都市? 郊外? 長距離? 電欠しないためのEV選びのヒント
EVの性能と価格に大きな影響を与えているのが、駆動用バッテリーの容量です。容量を大きくするほどに、航続距離は長くなり、電欠のリスクも下がりますが、価格も上昇します。逆に、航続距離が短くてよいのであれば、バッテリー容量を小さくするという選択もあります。
バッテリー容量を小さくすると、車両価格が下がるだけでなく、充電にかかる時間は短縮され、車両重量も軽くなり、走る・曲がる・止まるの基本性能も向上します。バッテリーが小さいことが有利になることもあるのです。バッテリーは大きければ大きいほどよいわけではなく、使い方にあった適切な容量であることが重要なのです。
もしも、EVの使い方が「近所の買い物や送り迎え限定」であれば、大きなバッテリーは不要です。バッテリーが小さくて安いEVを選ぶといいでしょう。郊外で、近隣への移動が数十km、100kmにも及ぶようであれば、ある程度大きなバッテリーを搭載したEVを選びましょう。そして、週末のロングドライブが多いとなれば、予算の許す限り、なるべく大きなバッテリー容量のモデルがおすすめとなります。
電欠を正しく理解し、安心してEVライフを楽しむために
EVの電欠は、事前の計画不足やエアコンの使用過多・上り坂などで発生することが多いです。万が一、電欠になりそうな場合は、完全に動けなくなる前に、安全な場所に停まってロードサービスを手配しましょう。駆動輪を浮かしたレッカー移動をしてもらう必要があることをお忘れなく。
電欠を防ぐには、アプリなどを使ってしっかりと事前に充電計画を立てておくことが重要です。また、最近は高出力な急速充電器が増えていますので、上手に活用しましょう。
そして、EVを買うときに、自分のライフスタイルにあったモデルを選ぶようにしましょう。無理のないEVライフを実現することが、結果として電欠を遠ざけることになるはずです。
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