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【最新】ヨーロッパの電気自動車の普及率は?EV販売が減速しているって本当?

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電気自動車(EV)の販売が伸び悩んで踊り場を迎えていたヨーロッパで、2025年に入りEVの販売台数が再び増加する兆しを見せています。現在のヨーロッパ自動車市場のEV普及率はどれくらいなのか、また販売台数が増加傾向にある理由はどこにあるのでしょうか。ヨーロッパ市場のEV普及率や最新動向などを自動車ジャーナリストの佐藤耕一さんが解説します。

 

※この記事は2024年11月7日に公開した内容をアップデートしています。

 

 

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ヨーロッパのEV普及率はどれくらいなの?

画像:iStock.com/Elif Bayraktar

 

まずヨーロッパ(EU+EFTA+UK)における2025年1〜5月のEVの普及率を見ていきましょう。

欧州自動車工業会(ACEA)の発表によると、ヨーロッパ全体(EU+EFTA+UK)の新車登録台数は2025年1〜5月累計で557万2458台となり、前年同期と比べて0.1ポイント増とほぼ同じ水準でした1)

このうちEVの登録台数は95万1653台、シェアは17.1%です。PHEV(プラグインハイブリッド車)は47万3033台、シェア8.5%となり、それぞれシェアは前年同期比で3.7ポイント、1.3ポイントの増加となっています1)

そのほか、簡易的なハイブリッド(マイルドハイブリッド:MHEV)を含むHEV(ハイブリッド車)は登録台数196万7089台、シェア35.3%となり、シェアは前年同期比5.5ポイント増と伸びが続いています1)

〈図〉ヨーロッパのEV・PHEV販売台数とシェアの推移

※ IEA(国際エネルギー機関)の公表データより作成 地域「ヨーロッパ」選択 2)

 

これらのデータからは、ヨーロッパではHEVが大きく伸びていることが見て取れます。2025年に入ってガソリン車のシェアを超え、35.3%のシェアを獲得したことで、HEVが消費者のもっとも現実的な選択肢として確固たる地位を築きつつあるようです。

これは「EVへの直線的な移行」という従来の政策主導のシナリオと異なり、電動化に対する市場の回答を示すものと考えられます。

 

 

 

ヨーロッパ主要市場のEVシフトの進み具合は?

ヨーロッパは中国に次いでEV・PHEVの保有台数が多く、EVシフトにもっとも積極的な地域のひとつです。2024年のEV販売減少から、2025年に入って再び増加基調になりましたが、それも国や地域ごとに事情はさまざまです。域内の主要市場の事情を紹介します。

 

法人マーケットを中心にEVが再加速するドイツ

画像:iStock.com/ MarianVejcik

 

ヨーロッパにおける最大市場のドイツは、2023年末の購入者向け補助金の停止によって2024年のEV販売に急ブレーキがかかりました。しかし、ドイツのEV市場は2025年に力強い回復を見せ、5月までの累計でEVの登録シェアは17.6%(前年同期比5.6ポイント増)、PHEVは9.9%(前年同期比3.6ポイント増)を記録しています1)

さらに、2025年7月から施行される新しい電動車優遇策パッケージでは、企業が新規でEVを購入した場合、購入初年度に購入価格の75%を特別償却できるという、極めて積極的な制度が導入されます3)

新車登録の約3分の2を法人車両が占めるドイツ市場において、この優遇措置がEV導入の主要な推進力となることは確実視されており、ドイツ自動車工業会(VDA)は2025年通年のEV販売台数が前年比59%増加、PHEVが同40%増加すると予測しています4)

 

 

イギリス、フランス、イタリアのEV販売台数は?

画像:iStock.com/ Starcevic

 

そのほかのヨーロッパの主要市場をみてみましょう。イギリス市場は、政府による自動車メーカーへの電動化義務付け制度「ZEVマンデート」5)がEV販売を牽引し、2025年1~5月の市場シェアは20.9%に達しています1)。しかし、その成長は個人需要によるものではなく、メーカー側の大幅な値引きと法人需要に依存しており、持続可能性には課題があります。

それとは対照的に、フランスでは政府による補助金削減・廃止の影響が続き、2025年1~5月のEVのシェアは2024年とほぼ同じ17.8%となった一方で、HEVは44.9%ものシェアを占めており1)、HEVがユーザーの「現実的な選択肢」として圧倒的な支持を得ています。

イタリアでもHEVが支持を伸ばし、市場の44.3%を占めるほどに成長しています。一方でEVのシェアは5.1%にとどまっており1)、ほかの地域よりも相対的に低い水準です。今後導入される予定の電動車買い替え優遇施策が注目されます。

 

 

 

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ヨーロッパのEVメーカーの最新動向をチェック

数年前までEVへの全面移行を掲げていたヨーロッパの主要自動車メーカーは、市場の現実を前に、より柔軟で現実的な「2正面作戦」へと大きく舵を切っています。次世代EVの開発に巨額の投資を続けながらも足元の収益を確保し、多様な消費者ニーズに応えるため、ヨーロッパ市場におけるハイブリッド技術の重要性を再認識しているようです。主要メーカーの動向を紹介します。

 

【フォルクスワーゲン】小型EVやフルHEV車を導入

現行モデルの「T-Roc R」(画像:フォルクスワーゲンAG)

 

フォルクスワーゲン・グループは2025年末までに2万5000ユーロ(425万円:1ユーロ=170円換算)以下の手頃な価格の戦略モデル「ID.2 all」を投入し、傘下のCUPRA(クプラ)やSkoda(シュコダ)といったブランドからも小型EVなどを投入する計画を進めています。

一方で大きな戦略転換として、2026年にヨーロッパ市場に投入予定のクーペスタイルSUV、新型「T-Roc」を皮切りに、グループ初となる本格的なフルハイブリッド(ストロングハイブリッド)システムを導入する計画です。

この新開発のハイブリッドシステムは、ヨーロッパの主力プラットフォーム「MQB Evo」を通じて「ゴルフ」や「ティグアン」といった量販モデルにも展開される見込みで、EVへの移行に躊躇する幅広い顧客層を取り込むことを狙いとしています。

 

 

【メルセデス・ベンツ】全車種EV化を修正して現実路線へ

新型「CLA」(画像:メルセデス・ベンツAG)

 

メルセデス・ベンツグループでは、1回の満充電による航続距離が800kmに迫る4ドアクーペの新型EV「CLA with EQ Technology」6)を筆頭に、社運を賭けた次世代EV/マイルドハイブリッド車(MHEV)用プラットフォーム「MMA」をベースにした野心的な電動車群を欧州市場に投入する計画です。

しかし、その裏ではヨーロッパ市場を含むグローバルでの「2030年までに”市場が許す限り“すべての新型車をEVのみにする」という目標を事実上修正し、高効率なHEVとPHEVの提供を当面継続する方針を明確にしています。

これはヨーロッパにおけるEV需要の鈍化に対応し、収益性の高いHEV・PHEVで販売を下支えする現実的な判断といえます。

 

 

【BMW】顧客ニーズに合わせた全方位戦略を堅持

BMW「ビジョン・ノイエ・クラッセ X」(画像:BMW)

 

BMWグループは「Neue Klasse(ノイエ・クラッセ)」と名付けた次世代EVアーキテクチャを、2025年末より量産が開始される新型「iX3」から導入し、効率性、充電速度、航続距離の大幅な向上を目指します7)

しかし、同時に「テクノロジー・オープンネス」という理念を掲げ、EVだけでなく、「X5 xDrive50e」のようなEV走行距離が100km以上に達するPHEV、さらに高効率なエンジン車もヨーロッパ市場における重要な選択肢として磨き続けています。

顧客の多様なニーズと、ヨーロッパ各地域のインフラ整備状況に合わせた最適なパワートレインを提供するという、全方位戦略を堅持しています。

 

 

【ステランティス】EV戦略を進めつつHEVで首位に

ステランティス傘下のフィアットが発売したブランド初のHEVモデル「600 Hybrid」(画像:ステランティス)

 

ヨーロッパとアメリカをおもなマーケットとする自動車グループのステランティスは、EVを中心とした長期的戦略「Dare Forward(デア・フォアード)2030」8)を掲げつつも、市場の変化をいち早く察知し、「マルチエネルギー戦略」へと柔軟に移行しました。その結果、2025年第1四半期にはヨーロッパのHEV市場で販売首位を獲得しています。

一方で、ステランティスはヨーロッパのメーカーのなかでは中国との結びつきが強い自動車グループであるため、EUによる中国製EVの関税強化に伴い、今後は戦略を見直す可能性がありそうです。

 

 

【ルノー】往年の名車「ルノー5」のEV版がヒット

ルノー5(画像:ルノー・グループ)

 

ルノー・グループは、EVとソフトウェアの会社である「Ampere(アンペア)」を設立し、1972年に発売された往年の名車「ルノー5(サンク)」をEVとして復活させてスマッシュヒットさせました。一方で、ドッグクラッチを使用した独自のハイブリッド技術「E-Tech」の進化にも注力しています。

 

 

 

ヨーロッパの“2つの脱炭素規制”はどうなる?

画像:iStock.com/ Ziutograf

 

一時期はEVへの全面的な移行を表明していたヨーロッパの自動車メーカーが、一転してHEVの開発にもリソースを投入しています。こうした戦略転換を後押ししているのが、EU(欧州連合)が強化していたはずの2つの脱炭素規制の「揺らぎ」です。

 

規制緩和はEVが伸び悩む自動車業界に配慮した結果

最大の焦点であった「2035年のエンジン車新車販売禁止」法案は、自動車大国ドイツの強い抵抗に遭ったことにより、「e-fuel(合成燃料)を使用するエンジン車にかぎり、2035年以降も販売を認める」という例外規定が盛り込まれる形で決着しました。

議論はこれで終わりません。EVの普及鈍化とヨーロッパの産業基盤保護を理由に、影響力の強いドイツ自動車工業会(VDA)は現在、2035年の目標をエンジン車100%削減から90%削減へと緩和することを公式に提案しています。これが実現すれば、限定的ながらも高性能な新型エンジン車が市場に残り続けることになるでしょう。

この一連の動きは、「2035年のエンジン車新車販売禁止」がもはや固定された期限ではなく、政治的な交渉のカードへと変質したことを意味しています。

もうひとつの重要な規制、次期排ガス規制の「Euro 7」も、当初の厳格な案から大幅に内容が緩和されました。乗用車は排出ガス基準が現行規制と同等レベルに据え置かれ、ブレーキやタイヤの摩耗粉塵に関する新たな規制が追加されるなどに留まりました。適用開始時期も、新型車で2028年1月からに延期されています9)

この一連の規制緩和は、EVの販売が伸び悩むなかで自動車業界の短期的な懸念に配慮した結果といえます。そして、この時間的猶予は、メーカーが高効率なハイブリッド技術を開発し、電動化への移行期間における収益を確保するための重要なモラトリアムとなっています。

 

 

 

ヨーロッパで存在感を高める中国製PHEV 

画像:iStock.com/ goc

 

ヨーロッパの自動車メーカーが戦略の再構築を迫られるなか、中国のEVメーカーやブランドが驚異的なスピードでヨーロッパにおける存在感を高めています。中国メーカーが販売するEVのヨーロッパEV市場におけるシェアは2025年1月に7.8%となっています10)

これに先立ち、EUは中国製EVに最大35.3%の追加関税を課すことを決定していますが、中国勢はこの「関税の壁」を乗り越えるための巧みな戦略をすでに実行に移しています。

そのひとつが、PHEVモデルの積極的な投入です。追加関税がおもにEVを対象としていることを見越し、ヨーロッパの消費者の間で需要が高まっているPHEVを新たな武器としています。

たとえば、その代表格がBYDでしょう。同社はSUVの「Seal U」に独自のPHEV技術「DM-i」を搭載したモデルをヨーロッパ市場に投入。さらに、セダンの「Seal 5 DM-i」も東欧から販売を開始するなど、着々とラインナップを拡充しています。

BYD「Seal U DM-i」(画像:BYD)

 

中国メーカーはHEVでも攻勢をかけています。上海汽車集団傘下のMGがヨーロッパで発売したコンパクトな新型HEV「MG3 Hybrid+」は現地で高い評価を受けており、トヨタ「ヤリス」など日本車の強力なライバルとして注目されています。

もうひとつの強力な戦略が現地生産です。これは関税を回避するもっとも直接的な手段であり、BYDはハンガリー南部のセゲドに巨大な乗用車工場を建設中で、2025年後半には生産を開始する予定です11)。将来的には年間30万台の生産能力を目指すとしており、「欧州で、欧州のために」車を生産する体制を構築し、真のローカルプレーヤーとなることを目指しています。

 

 

 

ヨーロッパ市場は理想と現実が交錯する移行期へ

欧州自動車工業会(ACEA)が発表した2025年1月から5月までの市場データは、現在進行中の地殻変動を物語っています。EVの市場シェアが17.1%へと着実に伸びる一方で、HEVはさらに伸びて35.3%というシェアを誇り、消費者にもっとも支持されるパワートレインとなっています。PHEVもシェアを8.5%に伸ばしており、とくに直近の販売の伸びが著しいです。

この「ハイブリッドへの回帰」は、単なる一時的な現象ではありません。割高な車両価格、信頼性に欠ける充電インフラ、そして根強い航続距離への不安というEVの課題に直面する消費者にとって、HEVは電動化への移行期におけるもっとも現実的で安心な「着地点」となっています。

同時に、メーカーにとっては、莫大な投資が必要なEV開発を続けながら、足元の収益を確保するための生命線でもあるのです。

2025年の欧州自動車市場は、政策が描いた理想と市場の現実が交錯する、複雑な移行期にあります。ヨーロッパの自動車産業は、この過渡期を乗り切るために、中国勢との競争を凌ぎつつ、次世代EV開発で長期的な競争優位性を確立し、依然として不確実な規制の行方に対応していくという、極めて困難な課題に直面しているといえるでしょう。

 

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この記事の著者
佐藤 耕一
佐藤 耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT業界に転じて自動車メーカー向けビジネス開発に従事。2017年ライターとして独立。自動車メディアとIT業界での経験を活かし、CASE領域・EV関連動向を中心に取材・動画制作・レポート/コンサル活動を行う。日本自動車ジャーナリスト協会会員。




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