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【中国の電気自動車】普及率はどれくらい?世界最大のEV市場の最新動向

アイキャッチ

アメリカで電気自動車(EV)の減速が懸念される一方、中国ではEVの販売が好調です。世界最大の自動車市場・中国におけるEV普及率はどれくらいなのでしょうか。また、どんなEVメーカーがあり、売れている人気車種とは? 自動車ジャーナリストの佐藤耕一さんが中国EV市場の最新動向をレポートします。

 

 

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自動車大国・中国のEV普及率はどれくらい?

中国国旗

画像:iStock.com/Igor Kutyaev

 

中国は世界最大の自動車市場です。2024年の自動車販売台数は約3144万台となり、16年連続で世界一となりました1)。中国に次ぐ市場規模のアメリカ市場が約1598万台2)ですから、じつにその約2倍となる規模です。

このうちEVの販売台数は約772万台とこれも世界最大で、市場全体に対するEV販売比率は約24.6%に達します。また、プラグインハイブリッド車(PHEV)の販売台数も約514万台と伸びており、EVとPHEVを合わせた市場占有率は約40.9%。中国で販売されている車のうち約10台に4台がEV・PHEVということになります。

〈図〉中国市場のEV・PHEV販売台数と市場占有率の推移

※IEA(国際エネルギー機関)「Global EV Data Explorer」の公表データより作成

 

つまり、現在の中国自動車市場は、「世界最大の自動車市場」というだけでなく「世界最大のEV市場」でもあるわけです。

 

 

 

なぜEVが売れる? 中国EV市場の最新動向

中国の自動車市場ではなぜこれほど数多くのEVが販売され、ユーザーの支持を集めているのでしょうか。世界でもっとも巨大な中国EV市場の特徴と、その最新動向を詳しく紹介します。

導入から普及へとフェーズが移行した中国EV市場

中国のEVイメージ写真

画像:iStock.com/Rafmaster

 

中国市場の特徴は、ほかの国や地域に比べて「自動車市場全体に対するEVの販売比率が飛び抜けて高い」ということです。

たとえば、消費者の環境意識が比較的高いとされる欧州(EU+EFTA+UK)の2024年のEV販売比率は15.4%です3)。またアメリカ市場も8.1%にとどまっています4)

マーケティング理論の定説のひとつに「キャズム理論」というものがあります。キャズム(Chasm)とは、新製品を市場に普及させていく過程で現れる「壁」や「溝」などを指し、その製品の市場シェアが16%を超えると普及が加速するとされています。

この論に当てはめると、EVの販売台数が全体の約24.6%、PHEVを合わせると約40.9%に達する中国市場は、すでに電動車がひとつのカテゴリとして確立され、キャズムの壁を超えたといえるでしょう。導入から普及へとフェーズが移行したと考えられます。

 

 

 

低価格なコンパクトEVが消費者の支持を集めている

車の写真

画像:iStock.com/gremlin

 

なぜ中国市場ではこれほどまでにEVが消費者の支持を集めているのでしょうか。その理由のひとつとして「低価格でコンパクトなEVが数多く用意されている」という点が挙げられます。

中国の低価格EVでは、2020年に上汽GM五菱(上汽通用五菱汽車)が約50万円という驚きの車両価格で販売した「宏光MINI EV」が大ヒットしたことがありました。いったん販売が落ち着いていた時期もありましたが、2024年になって再びこのクラスの人気車種となっています。そして、もう一回り大きい全長4m前後のボディサイズの4人乗りハッチバックも支持されており、なかでもBYD「シーガル(海鴎)」と上汽GM五菱「ビンゴ(繽果)」が人気を二分しています。

このうち「ビンゴ」には2025年モデルとして5グレードが用意され、航続距離(CLTC)が203km(バッテリー容量:17.3kWh)のエントリーモデルは車両価格5.68万元(約118万円:1元=20.7円換算)5)。このように低価格かつコンパクトなEVが数多く供給されるのは世界中を見渡しても中国市場だけです。

 

 

 

ガソリン車よりEVのほうが合理的という市場心理

中国の貨幣

画像:iStock.com/Max Zolotukhin

 

車両価格が安いだけでなく、EV購入時にはさまざまな優遇措置を受けることもできます。普及期に入ったことで補助金制度はほぼ終了していますが、旧型車から新エネ車へ買い替える際の補助金が2024年から設定されたほか、税率10%の自動車取得税の減免措置は2027年末まで延長され、最大で免税となります6)車両価格が200万円とすれば、約20万円の負担軽減となるわけです。

また、中国ではEV・PHEVには緑色のナンバープレート、ガソリン車やハイブリッド車(HEV)には青色のナンバープレートが交付されますが、車両台数抑制のためナンバープレート規制が設けられている都市部では緑ナンバーのほうが格段に取得しやすく、都心への流入制限も受けないというメリットがあります。

こうしたことから、環境への配慮や車としての性能を評価しているというより、単純に「ガソリン車よりEVに乗るほうが合理的な選択である」という市場心理が浮かび上がってきます。

 

 

 

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中国市場でPHEVのシェアが伸びている理由

EV

画像:iStock.com/shisheng ling

 

中国市場では現在、EVだけでなくPHEVが販売台数のシェアを伸ばしています。とりわけPHEVの生産・販売に力を注いでいるのが、中国の民営系自動車メーカー最大手のBYDです。

 

「電比油低」で市場を席巻するBYD

BYDは2024年、PHEVの販売を大きく伸ばし、EVの販売台数176万台を大きく超える248万台を販売しました7)。これは同社内における58%ものシェアとなり、PHEVも含む電動車のトップメーカーとしての立場をますます強めています。

特にBYDは、2024年に発表した第5世代PHEVシステム「DM-i」を、ミドルクラス以上のほぼすべての車種にラインナップしました。長い航続距離と電動車としての高い性能を、ガソリン車並み、あるいはさらに低い価格で提供し、市場を席巻しました。

BYDは「電比油低(電動車はガソリン車より安い)」というスローガンを掲げ、価格に敏感な層まで顧客を広げ、市場シェアを盤石にしようとしています。またPHEVをEVへの移行期における最適解と位置付け、技術力と価格競争力で市場の主導権を握るというBYDの戦略が販売増に結実した格好です。

また、BYDだけでなく中国市場全体でも2024年はPHEVが非常に大きく伸びた年でした。EVの販売台数の伸び率(2023→2024年)が15.5%だったのに対し、PHEVの伸び率はなんと83.3%を記録しています8)

この背景には、中国市場においてもEVへの完全移行にためらいのある消費者の現実的なニーズがあります。具体的には、都市部に多いマンション住まいの消費者や、充電インフラが比較的脆弱な地方部の消費者などです。

これだけ電動化が進んだ市場で、ここにきてPHEVが大きく伸びたという事実は、他の市場に対してもさまざまな示唆を投げかけるものでしょう。

 

 

人気車種は? 注目すべき中国のEVブランド

アプリの写真

画像:iStock.com/Robert Way

 

中国は世界一のEV市場であると同時に、「世界一厳しい自動車市場」です。多くの国営系メーカーと民営系メーカーがひしめき合うなかで、日本、欧州、アメリカ、韓国のメーカーがこぞって参入し、新興EVメーカーは誕生しては淘汰される市場です。

しかし、そのように無数のメーカーが存続をかけて競い合う厳しい市場環境で、販売台数を伸ばして成長しているメーカーも少なくありません。注目すべきEVブランドを紹介しましょう。

 

シャオミの快進撃を実現したカリスマ「SU7」

画像:iStock.com/Robert Way

 

2024年春に発売されたシャオミの第一弾モデル、スポーツセダンの「SU7」は、驚異的な成功を収めて市場に衝撃を与えました。発表からわずか24時間で9万台近い予約受注を記録するなど、生産が追いつかないほどの人気を博しました9)

大手スマートフォンメーカーでもあるシャオミの創業者兼CEOの雷軍氏は、中国で数千万人以上のフォロワーを持ち、”中国のスティーブ・ジョブズ”という異名を持つ立志伝中の人物でもあります。「私のファンのうち1%がEVを買う」と豪語した逸話がまことしやかに伝えられており、2024年には13万5000台を販売しました。

2025年6月には第二弾となるSUVモデル「YU7」を発売し、受注開始わずか3分で20万台を受注したという記録破りの人気を集め、まさに台風の目としてその動向に注目が集まっています10)

 

 

ファーウェイが全面プロデュースする「アイト」

画像:iStock.com/Robert Way

 

アイトは、大手IT企業であるファーウェイが商用車・車体メーカーのセレスとタッグを組み、全面的にプロデュースするブランドです。2025年に入っても好調なセールスを維持しており、50万元(約1000万円)クラスの乗用車カテゴリにおいても、フラッグシップSUV「M9」がドイツなどの強力なライバルを凌ぎセールストップを記録しています11)

ファーウェイは米中貿易摩擦の影響などからBIS(アメリカ商務省産業安全保障局)に輸出規制を受けており12)、以来、自動車産業を注力分野のひとつにしてリソースを投入してきました。現在は自動運転・パワートレイン・インフォテインメントの3つの分野で多くのメーカーにソリューションを提供しています。

そうしたなかでも、アイトはファーウェイが商品企画や販売、セレスがおもに生産を受け持つという役割分担で成功を収めており、その意味でもブランドの今後が注目されています。

アイト(問界)の成功を受けて、このような座組み、つまりファーウェイが商品企画と設計・販売を担当し、自動車メーカーが生産を担当するという形の新たなブランドが次々に誕生しています。

民営系大手の奇瑞汽車と組んだ「LUXEED(智界)」、北京汽車とのタッグになる「STELATO(享界)」、江淮汽車とのブランド「MAEXTRO(尊界)」では1000万円を超える高級車をラインナップしています。

さらには2025年、政府系最大手である上海汽車もファーウェイと組み、ミドルクラスを展開するブランド「尚界」を立ち上げる計画です13)

ファーウェイはこれらのブランドをひとまとめに“HIMA”(Harmony Intelligent Mobility Alliance)と称し、同社の製品を幅広く導入しています。

市場で高い支持を集める同社の運転支援ソリューションをはじめ、eアクスルやインバータといったパワートレイン、コックピット周りのデバイス・ソリューション、それらを支える車載OSとクラウド側のアプリケーション、またOSの基盤となるE/Eアーキテクチャ関連ソリューションまで、ファーウェイのハードウェア・ソフトウェアで固めたHIMAのSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)を市場に供給しています。

ファーウェイはその幅広い技術力とマーケティング能力によって、「Tier0.5」とも呼ばれる影響力を持つに至りました。SDV時代のハード・ソフト・クラウドすべてを備える世界でも随一のトップランナーとして注目を集めています。

 

 

高級セダンでセールス上位に食い込む「ジーカー」

画像:iStock.com/ Robert Way

 

吉利汽車系のEVブランドであるジーカーは、高級セダン「007」と、次いで発売されたSUV「7X」が人気を集め、それぞれのカテゴリで好調なセールスを続けています。また吉利汽車のグループ「浙江吉利控股集団」は、ボルボの親会社かつメルセデス・ベンツの筆頭株主という立場でもあり、ボルボ「EX30」やスマート「#3」にジーカーの「SEAプラットフォーム」を提供し、結果として自社のEV技術を世界各国に展開しています。

またジーカーは2025年の日本市場進出も発表しています。前述のボルボ「EX30」とは兄弟車のような成り立ちのミドルサイズSUV「X」や、大型ミニバンの「009」の導入が有力視されています。

 

バッテリー交換式EVで勝負する「NIO」

画像:iStock.com/Victor Golmer

 

新興自動車メーカー「御三家」の一角であるNIO(上海蔚来汽車)は、バッテリー交換式のEVを展開していることで知られています。それと同時に、バッテリーの交換ステーションを中国全土に整備し、現在は主要高速道路のパーキングエリアや幹線道路沿いにて3000以上のステーションが稼働しています14)

これまでは大型の高級車中心にモデルを揃えてきましたが、販売台数が伸びず、セカンドブランドとなる「ONVO」や、小型車ブランドの「Firefly」など、廉価なモデルを中心に急速にラインナップを増やしています。

さらなる投資とそれに伴う資金調達を繰り返しているNIOですが、経営状況は好転の兆しが見えず、近いうちに大きな動きがあるのではないかという噂が絶えません。

 

 

そのほかの新興自動車メーカーの動向をチェック

画像:iStock.com/Robert Way

 

小鵬(Xpeng)は成長が鈍化し、厳しい経営状況が続いているなかで、フォルクスワーゲンが出資し、大型SUV「G9」をベースに開発された車両が、フォルクスワーゲンのニューモデルとして2026年に発売される予定とのニュースも2023年末に報じられました。

その後、2024年に立ち上げたセカンドブランド「MONA」の第一弾「M03」が好調なセールスを見せています。定評のある小鵬の運転支援システムを搭載しながら、300万円を切る価格ということもあり、中国で人気を集めています。

また、2022年からコンパクトなEVを中心に販売台数を伸ばしてきたLeap Motor(零跑汽車)は、2023年10月に世界5位の自動車グループ「ステランティス」との提携を発表しました。ステランティスがLeap Motorの株式20%を取得したうえで、EVの共同開発や欧州への展開など広範囲な分野で提携を進めていくとしています。

 

 

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中国EV市場で加速する2つの新たなトレンド

世界随一の巨大EV市場・中国は、世界のEV市場が今後どのような道筋をたどるのか、そのモデルケースとしても注目されています。中国市場で顕在化する新たなトレンドをまとめました。

 

都市部NOA競争の激化

画像:iStock.com/ metamorworks

 

高速道路でのハンズオフ運転支援機能はすでに普及期に入り、競争の主戦場はより複雑な都市部の一般道へと移っています。ファーウェイの「ADS(Advanced Driving System)」や小鵬汽車の「XNGP(XPeng Navigation Guided Pilot)」などが、車線変更、信号認識、交差点の右左折などを高精度で実行する都市部NOA(Navigate on Autopilot)機能の提供範囲を急速に拡大しています15)

同時に、これまで常識と言われてきたHDマップ(高精度3次元地図)とセンシングデータの照合による高度運転支援は、都市部NOAの普及とともに、HDマップがない地域で利用できないという欠点が市場のフィードバックから顕在化し、市場はすでにセンサーからのリアルタイム情報とAIの判断能力で走行する、いわゆるE2E(End-to-End)自動運転による「脱マップ」への動きが加速しています16)。運転支援先進国である中国でのこのようなトレンドは、他地域の開発動向にも影響を与えそうです。

 

 

LLM搭載とOS共通化によるHMIの進化

画像:iStock.com/ metamorworks

 

大規模言語モデル(LLM)の搭載により、車載AIアシスタントは単なるコマンド実行ツールから、文脈を理解し、複雑な対話が可能なパートナーへと進化しています。NIOの「NOMI」や小鵬汽車の「小P」などは、声だけで複数のタスクを同時にこなしたり、乗員の感情を読み取って空調や音楽を調整したりといった機能を実現しています。

また、クルマ以外のITデバイス・家電とのOSの共通化やAPIの標準化が進んだ結果、車がスマートフォンや家電とシームレスに連携し、車内から自宅の家電を操作したり、スマートフォンのアプリを車載ディスプレイで利用したりといったエコシステムの構築が進んでいます。

 

中国メーカーのEVの信頼性は?

画像:iStock.com/hallojulie

 

このように活発な動きを見せている中国の自動車産業について、日本国内には信頼性や安全性を懸念する見方もあるようです。 

信頼性への懸念を完全に否定することは難しいですが、その一方で、中国の自動車産業がこれまで数十年間の歴史を積み重ね、現在では年間3000万台もの車を生産し、大きな混乱なく市場が成り立っているのも事実です。そう考えると、地域性に起因する考え方の違いはあるかもしれませんが、中国市場では概ね問題のないプロダクトが流通していると考えるほうが自然でしょう。

安全性についても、中国のEVが海外での販売を伸ばしてきたなかで、欧州の自動車安全テスト機関「ユーロNCAP」の認証を取得し、車両の安全性能を評価・公表する自動車アセスメントで最高評価の「ファイブスター賞」のモデルも数多く排出していることを見れば、ある程度の客観性が担保されていると考えられます。

 

 

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中国EV市場は先進的モデルケースとして興味深い

中国の自動車市場には、中国でしか目にすることのないメーカーやブランドが多数存在します。中国市場で販売されるEVやPHEVは、ほかの国でほとんど見かけることがないため、外からは想像しづらい部分があるのは事実でしょう。

しかし、本記事で紹介したように、中国EV市場は独自の進化を遂げており、EVやSDVの先進的なモデルケースとしても非常に興味深く、知っておいて損のない市場です。今後も世界最大のEV/SDV市場である中国市場の動向から目が離せません。

 

※本記事の内容は公開日時点での情報となります

 

この記事の著者
佐藤 耕一
佐藤 耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT業界に転じて自動車メーカー向けビジネス開発に従事。2017年ライターとして独立。自動車メディアとIT業界での経験を活かし、CASE領域・EV関連動向を中心に取材・動画制作・レポート/コンサル活動を行う。日本自動車ジャーナリスト協会会員。




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