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【電気自動車の将来予測まとめ】世界の市場規模、技術の進歩はどう進む?

アイキャッチ

電気自動車の普及に向けて、世界各国は動き出していますが、2025年現在、それぞれの国や地域の事情によって大きな差が出てきています。電気自動車は今後どのように普及が進むのか、そして消費者側のメリット、デメリットにはどのようなものがあるのか、紹介していきます。

※この記事は2024年11月14日に公開した内容をアップデートしています。

 

 

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2025年のEV普及の現在地【日本・世界】

 

日本市場におけるEV普及率

日本の高速道路

画像:iStock.com/bee32

 

まず、EVがどれくらい普及しているのかを日本市場から見ていきましょう。

2025年1〜6月における、普通乗用車のEV新車販売台数は約1万8000台、軽乗用車のEVは約9700台でした。同期間の新車販売台数は、普通乗用車が約132万6000台、軽乗用車が約66万4000台でしたので、EV比率は前者が1.33%、後者が1.46%という結果が出ています1,2)

普通乗用車と軽乗用車を合わせた比率は、2025年1〜6月段階で1.37%。減少傾向に転じた2024年が1.60%ですから、前年以上に伸びていない状況が見て取れます。

一方、普通乗用車のEVについては、2025年1~6月までの販売台数1万7627台のうち、輸入車が1万4157台と約8割を占めており、国内メーカーは非常に厳しい状況が続いています。

 

 

普通車カテゴリではPHEVのほうが売れている

PHEVの販売状況も併せて確認しましょう。PHEVの2025年1〜6月の累計販売台数は2万2578台でした。軽自動車にPHEVのモデルは存在しないので、これらはすべて普通車のPHEVの台数となります。

同時期の普通車EVの販売台数は1万7627台ですので、普通車においてはEVよりもPHEVのほうが多く売れているということになります。これは前年までと同様の傾向です。

参考までに、EV(軽自動車含む)・PHEVを合計した台数4万9895台は、全体の乗用車販売台数に対して2.51%の販売比率となりました。

 

 

世界最大の中国市場におけるEV普及率

中国

画像:iStock.com/Mr. Socrates

 

続いて中国市場を見ていきましょう。中国は現在、世界最大の自動車市場であり、2025年1〜6月までの販売台数は1565万3000台に達しています3)

このような巨大な中国市場において、EVやPHEVの販売はますます伸びており、なんと全体の約44.3%の水準にまで達しています。これは他の主要地域を大きく引き離しており、ダントツの電動化先進国です。

中国では、EV・PHEV・FCEVをまとめて新エネルギー車(NEV)と呼んでカテゴライズしており、2025年1〜6月までのNEVの販売台数は693万7000台、NEV比率は新車販売の44.3%に達しました。

そのうちEVは441万5000台(前年同期比46.2%増)で、EV比率は約28.2%(前年同期比6.7ポイント増)ということになります。PHEVの販売台数も順調に伸びており、同じ期間で252万1000台(前年同期比31.1%増)を販売しました。

 

 

 

アメリカのEV普及率は地域差が大きい

アメリカ

画像:iStock.com/sanfel

 

では、中国の次に規模の大きいアメリカ市場を見ていきましょう。

2025年1〜6月のEV販売台数は約60万7000台となり、対前年同期比1.5%増となっています4)。2025年7月4日、トランプ大統領がEV購入に対する7500ドルの税額控除を2025年9月30日付で廃止する法案に署名し成立しました5)。この政策変更は上半期の販売に「前倒し購入」効果をもたらし、消費者が税額控除を受けるために購入を急いだことが成長を後押ししましたが、下期は減速が予想される状態です。

2025年1〜6月の全体の新車販売台数は約812万台で、EV比率は約7.5%となり、前年同期比でほぼ同水準となりました。中国に比べるとかなり低い数値に感じますが、アメリカでは地域ごとにEV比率が大きく違う傾向があります。

なお、アメリカ中西部ではまだ数%台の州も目立つ一方、カリフォルニア州では2025年第1四半期(1〜3月)のZEV(EV・PHEV・FCEV)販売比率が23%にも達しています6)

 

 

 

ヨーロッパのEV普及は堅調に推移

EU

画像:iStock.com/Tramino

 

環境意識が高いと言われているヨーロッパ市場はどうでしょうか。

ヨーロッパ(EU+EFTA+UK)における2025年1〜6月のEVの販売台数は、前年同期比24.9%増の約119万台(市場シェアは17.5%、対前年同期比3.6ポイント増)と、EV普及は堅調な成長を示しました7)

また、ドイツ市場では大きな変化が見られました。2023年12月にEV購入補助金制度が終了し、しばらく低迷していましたが、2025年1〜6月のEV販売は約24万9000台(前年同期比+35.1%)と大幅に増加し、市場シェアは17.7%に達しました。同じくイギリスが前年同期比34.6%増、ベルギーが19.5%増と好調を記録したのとは対照的に、フランスは6.4%減少しました。

 

 

 

2025年現在、日本のEV普及率の低さが目立つ結果に


ここまで長くなりましたが、世界各地における2025年のEV普及状況をまとめると、以下のようになります。

 

・日本でのEVの販売比率は1.37%と前年の1.60%をさらに下回るペース
・中国市場でEV比率は約28.2%。PHEVを合わせるとなんと約44.3%
・アメリカにおいては約7.5%と微減、ヨーロッパにおいては約17.5%で成長トレンド

 

直近の動きとして最も注目すべきは、中国市場でEVがまだ伸びつつも、PHEVが急増しており、両方を合わせたNEV比率が市場全体の半分に迫りつつあるということでしょう。中国は、他の地域に先駆けて電動化市場としての経験値やビジネス開発を積み上げており、EV関連ビジネスの発信源になっています。

一方で、日本におけるEV比率の低さは、あまり市場に受け入れられていないと言っていいレベルです。

中国に次ぐ巨大市場のアメリカでは、EVの普及は鈍化し、踊り場といった様相です。

 

EV普及の将来予測

 

EV普及に強く影響を及ぼす各国の政策とは

世界図

画像:iStock.com/NiroDesign

 

EVの販売動向を占う上で、各国の政策は極めて重要な影響を及ぼしています。アメリカを除き主要地域の電動化目標のスケジュールは維持されつつも、その実現に向けたアプローチには変化が見られます。ここで主要地域の電動化目標のスケジュールをもう一度おさらいしておきましょう。

また、各地域においてEV普及において重要になっている規制の動きについても確認してみましょう。

〈表〉各国の電動化目標

経済産業省作成の表をベースにEV DAYS編集部が改編8)。 ※EVは航続距離が150マイル(約241km)以上かつ急速充電が可能なものに限る。また、PHEVはEV走行距離が50マイル(約80km)以上かつ販売割合はZEV全体の20%以下とする。ICEとは純ガソリン車・純ディーゼル車を指す

 

 

【アメリカ】カリフォルニア州のZEV規制が撤回の見通し


直近に導入される規制の中で、自動車メーカーにとって最も厳しく、かつ影響が大きい規制のひとつが、カリフォルニア州のZEV規制「ACCII(アドバンスト・クリーン・カーズII)」です。各自動車メーカーはここ数年、この規制への対応に頭を悩ませてきましたが、トランプ政権は2025年6月、この規制を撤回しました9)

もともとこの規制は州の権限のもとに定められたものであるため、カリフォルニア州は政権を提訴しましたが、現政権の期間中は撤回方針が有効になると見られています。

 

 

【ヨーロッパ】ACEAからの要請でEUのCAFE規制が緩和

EUでは、2035年に車からのCO2排出量をゼロにする目標に向け、段階的に規制が強化されています。

当初、2025年に迫るCO2排出量の基準値更新(CAFE規制)が、EVシフトの遅れから多くのメーカーにとって達成困難と見られ、巨額の罰金リスクが懸念されていました。

この状況に対し、欧州自動車工業会(ACEA)などが緩和を要求。結果として、2025・2026年は単年での達成義務を免除し、「2025〜2027年の3年間の平均で自動車メーカー各社に目標値を課す」という緩和措置が設けられ、メーカーは一時的ではあるものの時間的猶予を得ました10)

 

 

【ヨーロッパ】中国製EVへの関税が発動

欧州自動車業界のもうひとつの悩みは、中国製EVとの競争激化と、それに対する保護主義的な動きです。

EUは、中国政府の補助金によって不当に安価になっているとして調査を行い、2024年7月から中国製EVに対して追加関税を課す暫定措置を開始しました11)

この措置は2024年10月30日に正式に発動されました。既存の10%の関税に加え、メーカーごとに異なる税率(BYD:17%、吉利汽車集団:18.8%、上海汽車集団:35.3%など)が上乗せされたのです。

このような動きに対し、中国の各メーカーは、規制対象とならないPHEVの輸出や、EU域内に自社工場を設置する(BYDのハンガリー工場12)など)といった対応を進めています。

 

 

【日本】多様化する選択肢と補助金制度の行方

日産

画像提供:日産自動車

 

日本では、2030年のEV・PHEVシェア20〜30%という政府目標に向け、EVが普及しやすい環境を整備するための取り組みが進んでいます。

EV市場をリードする軽EVでは、日産「サクラ」と三菱「eKクロスEV」が市場を牽引する構図は変わりませんが、2024年10月にはホンダが軽商用EV「N-VAN e:」を発売し、販売好調が伝えられています。また、ホンダからは新型軽EV「N-ONE e:」が2025年秋、トヨタ、スズキ、ダイハツからは共同開発する軽商用EV13)が2025年度中の市場投入が予定されています。

そして、BYDが日本専用の軽EVを開発し販売するというニュースが伝えられました。乗用車タイプの軽トールワゴンで、2026年後半の市場投入が発表されています14)

普通車のEV市場では、日本のメーカーから販売されているのは600万円以上の高額なモデルが多く、普及が進みませんでした。

その状況が、2025年にはいよいよ変わりそうです。まず、EVのパイオニア的存在である日産「リーフ」がフルモデルチェンジし、今年秋にも導入予定です15)。日本市場ではもっとも人気のある全長4.3m前後のSUVとなり、価格は未公表ながら、400万円台になることが期待されています。

そしてこの人気のカテゴリには、日産「リーフ」だけでなく、スズキ「eビターラ」、そしてその兄弟車であるトヨタ「アーバンクルーザー」も投入される予定です。

EVの輸入車市場では、以前から大きなシェアをもつテスラの主力車種「モデルY」がモデルチェンジして新型となり、また充電無料キャンペーンなどの強力な販売施策を打ち出してさらに販売を伸ばしています。

また、BYDが販売網を全国に拡大し、「シーライオン7」などの新型SUVを投入。ヒョンデも、人気のコンパクトSUV「インスター」を200万円台からという戦略価格で発売するなど、海外勢の攻勢が続いており、市場の多様化が進んでいます。

一方、購入のインセンティブとなるCEV補助金は、2025年度の場合、車両の性能やメーカーのインフラ整備への貢献度などに応じて補助金額が細分化されています16)。毎年、金額や金額設定方法が変更するため、購入を検討する際は、最新の制度内容を確認することが不可欠でしょう。

 

 

 

将来のEV市場におけるキーワードのひとつは「PHEV」

EV車

 

2025年1〜6月の中国市場では、PHEVの販売台数が前年同期比31.1%増と成長していることは前項でお伝えしたとおりですが、2024年から急成長を続けています。その背景には何があるのでしょうか。

ひとつには、EVの採算性の低さから、PHEVのニューモデルをラインナップするブランドが増え、消費者の選択肢が増えたことが挙げられます。BYDは以前からPHEV比率が高いことで知られていますが、そのほかにPHEVの販売を伸ばしたのが、AITO・理想汽車など都市部で人気のある新興ブランドです。中国でも、都市部において集合住宅に暮らす世帯は、EVは選択肢になりにくく、このようなブランドのPHEVを購入しているようです。

他の地域でもPHEVの販売は伸びており、今後世界的な拡がりになることが考えられます。

 

 

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EVの最新技術動向

現在、EV市場では次世代バッテリーの開発競争が世界中で激化しています。EVの心臓部であるバッテリーは、そのコスト、航続距離、安全性、そして充電速度を決定づける最重要コンポーネントであり、現在のバッテリーが抱える課題を克服することが今後の市場で勝ち残るための最重要のファクターなのです。

これは単一の技術による覇権争いではなく、多様なニーズに応えるための複数の戦線が同時に進行する、複雑な「バッテリー戦争」です。

ここでは、次世代バッテリーの主役候補たちの特性と課題点を紹介します。

 

いまや主役となったLFPバッテリー

画像:iStock.com/ Black_Kira

 

高価で資源偏在リスクのあるコバルトやニッケルを使用しないリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池は、コスト競争力と安全性を武器に急速にシェアを拡大しています。

LFPバッテリーは、三元系(NMC/NCA)バッテリーと比較して、熱安定性が高く火災リスクが低いことに加え、充放電を繰り返しても劣化しにくい長寿命という特長を持ちます。

一方で最大の弱点はエネルギー密度が低いことでしたが、近年はパッケージ技術や急速充電性能が大きく向上し、実用性が大幅に向上しています。さらに、LFPにマンガン(Mn)を添加したLMFPバッテリーは、LFPの低コスト・高安全性という利点を維持しつつ、エネルギー密度を15%程度向上させることができ、三元系電池との性能差をさらに縮める存在として注目されています。

 

 

資源制約のないナトリウムイオンバッテリー

画像:iStock.com/ kynny

 

ナトリウム(≒塩)をリチウムの代替として利用するナトリウムイオンバッテリーは、数年前からコンセプトの提案が見られるようになりましたが、いよいよ量産車への搭載が始まる段階にきています。2023年ごろから中国で一部の二輪車や小型EVへの搭載が始まり、今年にはCATLが量産する計画を発表しています17)

ナトリウムイオンバッテリーは、低温環境での性能劣化が少なく、急速充電性能に優れ、熱的にも安定しているため安全性が高いといった利点があります。LFPバッテリーのように、充電耐性の高さを生かした実用性の向上も見込めるでしょう。

一方で、最大の課題はエネルギー密度がかなり低く、ゆえに重くなるというものです。そのため、近距離用の小型EVやコミューター、二輪車、定置型蓄電システムなど、コストが最優先される分野での活躍が期待されています。

またナトリウムは当然のことながら安価、かつ事実無尽蔵ではありますが、そのコスト競争力はリチウム価格の動向にも左右されます。エネルギー密度はLFPと比べてもさらに低いので、リチウム価格が下落するとその魅力は薄れるという不安定さを抱えています。

 

 

究極の目標である全固体電池

可燃性の液体電解質を固体材料に置き換える全固体電池は、長らくEV用バッテリーの「聖杯」とされてきました。最大の利点は、発火や液漏れのリスクが原理的に存在しないという安全性の高さです。さらに、理論的にはエネルギー密度の大幅な向上と、急速充電性能の改善も期待されています。

一方で、液系リチウムイオンバッテリーの性能の向上と低コスト化により、聖杯としての地位が疑問視されているのも事実です。いまだ試作段階にとどまっており、果たして液系リチウムイオンバッテリーと競合できるだけの実用的なコスト圧縮が可能なのかどうか。言い換えると、低コスト化が可能なだけの大量生産に向けた投資ができるのかどうか。筆者としては疑問視しているというのが正直なところです。

 

 

単一技術から適材適所へ

画像:iStock.com/ leonello

 

自動車産業が直面した航続距離・コスト・安全性というバッテリーの「トリレンマ(三律背反)」は、もはや単一の技術で解決すべき課題ではなくなりました。

自動車メーカーは、単一の「完璧なバッテリー」を追求するのではなく、市場セグメントに応じて最適なバッテリーを使い分ける「ポートフォリオ戦略」へと移行しています。

都市部のコミューターは航続距離よりも低コストを(LFP/ナトリウムイオン)、高性能車には最先端技術と究極の性能(LMFP/三元系)というように、車載バッテリーも適材適所が進んでいます。

 

 

電動化だけでは足りないSDVの要件とは

画像:iStock.com/ kate3155

 

また、電動化がもたらす自動車の革新的な進化として、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル:ソフトウェアを更新して車の機能をアップデートしていく自動車のこと)が挙げられますが、SDVを実現するためのハードウェアとして、車側のE/E(Electrical/Electronic)アーキテクチャの進化が必須です。

従来の自動車は、特定の機能ごとに独立した多数の電子制御ユニット(ECU)を搭載する、いわゆる分散型とも呼ばれる、アーキテクチャともいえないような状態でした。

そして、機能の高度化に伴いECUの数は100個を超えることも珍しくなく、開発の複雑化、コスト増、そしてイノベーションの阻害要因となっていました。

この課題を解決するため、業界はE/Eアーキテクチャの進化を急速に進めています。

まず、機能=ドメインごと(パワートレイン、インフォテインメント、ADAS、その他電装品など)に統合ECUを置いて、それらをまとめる「ドメインアーキテクチャ」が導入されます。

その次の進化形が「ゾーンアーキテクチャ」です。これは、車両を物理的なゾーン(前方、後方、キャビンなど)に分割し、各ゾーンに配置されたゲートウェイが、そのエリアのセンサーやアクチュエーターを、強力な中央のハイパフォーマンスコンピューター(HPC)に接続するという、いわゆるセントラルコンピューティングの形態です。ここまで来てやっと、いわゆるスマートフォンやパソコンのようなIT機器のアーキテクチャに近づくことになります。

この新しいアーキテクチャは、ハードウェアを仮想化し、あらゆるAPIが解放され、アプリケーションレイヤーから車の様々なセンサーや電装品、モーター、アクチュエーターにアクセスしてデータを集め、あるいはコマンドを発行して動かすという、つまり“車のスマホ化”を実現するものです。

そのほかにも、ワイヤーハーネス(配線)の大幅な削減が可能です。例えば、テスラ「モデル3」は、ゾーンアーキテクチャの採用によりケーブル長を3kmから1.5kmへと半減させ、ハーネス全体の重量を85%も削減したと報告されています18)。これは軽量化による航続距離の向上に直結します。

 

 

イノベーションにおける最大の課題は人材不足

このようなアーキテクチャの移行は、車両の設計・開発プロセスの見直しにとどまらず、現在の自動車産業ピラミッドを見直し、スクラップ&ビルドするほどの革命的な構造変化が必要です。

サプライチェーンやTier構造など、これまで自動車産業が築き上げ、最適化を重ねてきた産業ピラミッドは、従来の車づくりにおいては極限の効率を叩き出してきましたが。それは同時に、新しい概念の車を作るには、適応が難しい硬直した組織になっているともいえます。

しかしながら、最大の障壁は、技術そのものよりも人材にあります。アーキテクチャの刷新に必要なスキルを持った人材が、そもそも自動車メーカーにはとても少ないからです。

資金力があったとしても実行する人材がいない。この課題はますます重い試練となって自動車メーカーにのしかかっています。将来の価値の源泉となるSDV、その礎となるE/Eアーキテクチャと、その上で動くソフトウェアを本当に自動車メーカー自身の手で実現できるのでしょうか。

その両方をすでに実現しつつある「Tier0.5」と呼ばれるファーウェイやボッシュ、デンソーなどのサプライヤーは、E/Eアーキテクチャとその上で動くソフトウェアを、SDVを実現するソリューションとして強力にセールスを進めています。

自動車メーカーは、イノベーションのジレンマを克服して、自動車産業を裾野から再構築することができるのか。あるいはブランドを持つだけのリセラーとして生き残るのか。将来を決める重要な岐路に立たされているといえるでしょう。

電動化技術とSDVへの移行は、それぞれが独立して存在するのではなく、相互に深く関連し合い、変革への大きなうねりを形成しています。これからの自動車産業における成功は、これらの要素をいかに巧みに“統合”できるかにかかっています。

すなわち、ソフトウェア、ハードウェア、サプライチェーン戦略、そしてユーザーエクスペリエンス(UX)といった多岐にわたる領域を統合し、ひとつの価値として顧客に提供する能力です。

この変化の核心にあるのは、自動車メーカーの役割そのものの変容です。サプライヤーから部品を調達し、それらを組み立てるというマニファクチャラーとしての役割は、もはや過去のものとなりつつあります 。

これからの自動車メーカーに求められるのは、テクノロジーとモビリティ体験を統合する「インテグレーター」としての役割です。

この困難な変革期を乗り越え、安全で信頼でき、かつ新しいユーザー体験を提供できるメーカーが、EV/SDV時代をリードすることになるでしょう。

 

EVとエネルギーに関する将来予測

 

充電しながらお金がもらえる「デマンドレスポンス」

充電

画像:iStock.com/metamorworks

 

EVはCO2削減だけでなく、電力インフラと協調して効率的な電力利用に貢献するデマンドレスポンスへの対応が期待されています。

デマンドレスポンスを簡単に説明すると、電力が足りないときには充電をストップし、電力が余っているときには充電をする、という仕組みのことです。

EVは軽自動車でも20kWh、普通車であれば40~100kWh程度の駆動用バッテリーを搭載しており、これは家庭用蓄電池の数倍~数十倍もの容量になるため、デマンドレスポンスでの電力需給への貢献も大きいと期待されているのです19)

EVがデマンドレスポンスに対応し、電力利用に貢献するためには、普通充電器の高度化と、EVユーザーへのベネフィットの還元が必要です。

家庭用充電器として、コンセントタイプを利用している家庭が日本ではよく見られますが、デマンドレスポンスに対応するために、遠隔で充電のON/OFFを切り替えることができる充電器が必要です。

また、デマンドレスポンスによって電力供給の安定に貢献したユーザーに対しては、金銭的なメリットを還元する仕組みも必要になるでしょう。

このような取り組みが先行しているイギリスでは、遠隔で充電のコントロールができる充電器の設置が義務付けられており、またデマンドレスポンスに対応した場合のインセンティブも提供されています。

再生可能エネルギーの比率が高いイギリスでは、天候・風況によって電力が余る日があります。そのタイミングで電力をEVで吸い上げたユーザーに対して、マイナスの電気料金、つまり充電と同時にお金をもらうことができる、というサービスも登場しています。現地のEVオーナーは、ゲーム感覚でデマンドレスポンスを楽しんでいるとのことです20)

日本ではまだ再生可能エネルギーの比率は低いのですが、それでも電力が余る日は多くなってきていますし、今後、再生可能エネルギーの割合が高くなるのと同時に、調整電源である火力発電の比率が下がってしまうと、電力の安定供給の難易度がさらに高くなるおそれがあります。

日本でも、イギリスのようなユーザーにもメリットのある仕組みが普及し、EVで社会貢献するとともに、楽しみながら電気代を節約&お小遣い稼ぎができるようになれば、EVの新たな訴求ポイントとして普及の後押しになるのではと考えます。

 

 

 

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EV、いまだ持続的普及に至らず

EVの普及は、世界的に見るとますます地域差が広がっています。EV・PHEVの販売シェアが4割を超え、完全に市場の主役となった中国、補助金や免税政策によって販売が大きく左右され、持続的普及に至っていない欧州、トランプ政権によってEV優遇措置が廃止されたアメリカ、いまだEVの存在感が非常に薄い日本。各国の市場における事情が、こうした状況の背景となっていることはここまで説明してきたとおりです。

車両の性能面においては、EV・PHEVとも十分な実用性を確保しており、市場に受け入れられる水準に達していると考えますが、中国以外の市場では価格面でいまだ十分な競争力がなく、普及を阻んでいる原因といえるでしょう。

その価格差を埋めるための政策も強く影響しています。全体的には、市場の反応を見ながら現実的な政策に落とし込む方向性に軌道修正されていますが、しばらくは、産みの苦しみとも言える期間が続きそうです。

 

※本記事の内容は公開日時点での情報となります

 

この記事の著者
佐藤 耕一
佐藤 耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT業界に転じて自動車メーカー向けビジネス開発に従事。2017年ライターとして独立。自動車メディアとIT業界での経験を活かし、CASE領域・EV関連動向を中心に取材・動画制作・レポート/コンサル活動を行う。日本自動車ジャーナリスト協会会員。




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