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【2026年最新】EVの普及率は?日本と世界の統計・政策、今後の課題を解説

普及率メイン画像

【2026年2月27日更新】世界中で電気自動車(EV)の販売・普及が拡大しています。しかし、日本ではまだEVが広く普及していると感じにくい状況でしょう。日本や世界各国ではどの程度、EVが普及しているのでしょうか? 自動車ジャーナリスト・桃田健史さん監修のもと、日本と世界のEV事情をまとめました。

※この記事は2025年6月30日に公開した内容をアップデートしています。

 

 

注:本記事で「EV」とのみ表現する場合、「BEV(Battery Electric Vehicle)」を意味しています。プラグインハイブリッド車(PHEV)やハイブリッド車(HEV)、燃料電池自動車(FCEV)とは区別しています。

 

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【日本のEV普及率】普通車・軽自動車の動向

 

Ⅰ.日本のEV普及率(年間推移:2020年〜2025年)

まずは日本におけるEV普及率の推移を見ていきましょう。

 

ⅰ.普通乗用車カテゴリの推移

車

画像:iStock.com/mtcurado

 

普通乗用車市場において、2020年以降、EV普及率(新車販売台数に占めるEV販売台数の割合)は着実に上昇してきましたが、ここ1〜2年は伸び悩んでいる状態です。

日本自動車販売協会連合会の発表1)によれば、2020年のEV普及率は0.59%でしたが、2023年には1.66%まで上昇してきました。ただ、2024年は1.35%に低下し、2025年は1.57%と持ち直しているものの、大きな伸びは見られません。

〈図〉EV普及率とEVの新車販売台数の推移(普通乗用車カテゴリ)

EV普及率とEVの新車販売台数の推移

 

なお、プラグインハイブリッド車(PHEV)の2025年の普及率は約1.6%(約4万1000台)です。EVとPHEVを合計すると約3.2%(約8万1000台)の普及率となります。

〈図〉2025年の燃料別新車販売台数(普通乗用車)の割合

2025年の燃料別新車販売台数(普通乗用車)の割合

 

  販売台数 割合
ガソリン車 80万7856台 31.89%
HEV 153万19台 60.39%
PHEV 4万1186台 1.63%
EV 3万9885台 1.57%
ディーゼル車 11万4099台 4.50%
FCEV 431台 0.02%
その他 47台 0.00%
合計 253万3523台 100.00%

※HEV=ハイブリッド車、PHEV=プラグインハイブリッド車、FCEV=燃料電池自動車のことを指します。

ちなみに、2020年以降の燃料別の新車販売台数のシェアの推移は以下のとおりです。ここ数年でガソリン車の割合が減少し、特にHEVの割合が大きくなっています。EV・PHEVの割合はまだ小さい状態であることがわかります。

〈図〉燃料別新車販売台数(普通乗用車)の割合の推移

燃料別新車販売台数(普通乗用車)の割合の推移

 

ⅱ.軽乗用車カテゴリの推移

軽EVの画像

 

一方、近年、存在感を示している軽乗用車のEV、いわゆる「軽EV」の状況も確認してみましょう。

全国軽自動車協会連合会2)のデータによれば、軽EVの新車販売台数は、2023年は約4万4000台でしたが、2024年は約2万5000台、2025年には約2万台と勢いが落ちている状態です

ただし、2025年秋にはホンダから「N-ONE e:」が発売され、2026年夏には中国メーカー・BYDも日本市場向けの軽EV「RACCO」を発売します。特に「RACCO」はこれまでの軽EVよりもさらに安い価格設定になることが期待されています。軽EVのバリエーションはどんどん増えているため、今後の盛り上がりが期待できるかもしれません。

〈図〉軽EV普及率と軽EVの新車販売台数の推移(軽乗用車カテゴリ)

軽EV普及率と軽EVの新車販売台数の推移(軽乗用車カテゴリ)

 

 

ⅲ.普通乗用車カテゴリ+軽乗用車カテゴリの推移

ここまでEVの普通乗用車カテゴリと軽乗用車カテゴリの推移を確認しましたが、合計も見てみましょう。

普通乗用車および軽乗用車の合計数の推移を見ると、軽EV(日産「サクラ」、三菱「ekクロス EV」)が登場した2022年に一気に普及率が上がり、2023年はピークを迎えました。一方で、ここ2年はやや勢いが落ちているのがわかります。

〈図〉EV普及率とEVの新車販売台数の推移(普通乗用車+軽乗用車の合計)

EV普及率の合計推移

 

Ⅱ.日本のEV+PHEVの普及率(年間推移:2020年〜2025年)

普通乗用車と軽乗用車のEV、そしてPHEVの販売台数と合計の普及率の推移もチェックしてみましょう。

2025年末までのEV・PHEVを足し上げたデータを見ると、2022・2023年をピークとして、なかなか伸びが見られないのが現状です。ただし、2026年1月から国のEV・PHEV補助金が増額され、購入しやすい環境が整っている状況です。2026年は販売台数および普及率が伸びるのかどうか、注目です。

〈図〉EV・PHEV月別新車販売台数・普及率の推移

EV・PHEV月別新車販売台数・普及率の推移

※区分「乗用車」。日本自動車販売協会連合会および全国軽自動車協会連合会の公表資料より作成。軽EVは「サクラ」「ekクロスEV」「N-ONE e:」の合計値。

 

 

 

アメリカ・ヨーロッパ・中国のEV普及率は?

続いて、海外のEV(BEV)普及率を見ていきましょう。

 

Ⅰ.アメリカのEV普及率

istock画像 アメリカ街中

画像:iStock.com/peeterv

 

アメリカの2025年累計のEV(BEV)販売台数は約128万台で、普及率(新車販売台数に占めるEV販売台数の割合)は約7.8%です3)

これまでの年間の販売シェアを振り返ると、2021年の約3.2%(約49万台)から2024年までは上昇してきましたが、2025年はわずかながら下落に転じていることがわかります4-7)。これまでの成長路線から「踊り場」になったと言えるでしょう。

〈図〉アメリカのEV新車販売台数と普及率の推移(2021〜2025年)

アメリカの普及率

 

ブレーキの要因は、2025年1月からスタートした第二次トランプ政権による政策転換に起因しています。

それまではバイデン政権のインフレ抑制法(IRA)による税額控除や、ZEV(Zero Emission Vehicle=ゼロエミッション・ビークル)規制を設けるカリフォルニア州などでのさらなる上乗せなど、手厚いEV支援策がありました。

しかし、税額控除は2025年7月に成立した新法「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」により、2025年9月末をもって前倒しで打ち切られました8)。また、連邦レベルでの排出ガス規制の大幅緩和により、メーカー側に課されていた実質的なEV販売義務も撤廃される方針となっています9)

また、2025年4月に発動された「トランプ関税」も大きな影響を及ぼしています。輸入車だけでなく、国内生産車であっても海外製のバッテリー部材や電子部品に依存しているため、EVの製造コストが高騰。税額控除などの廃止と相まって、ユーザーにとってEVは割高な選択肢となっているのです。

トランプ政権の政策は依然として流動的ですが、2026年現在、アメリカのEV普及に対する逆風は構造的なものとなっており、少なくとも当面続くでしょう。こうした不透明な情勢の中、これまでアメリカのEV市場を強力に牽引してきたテスラの動向も、大きな岐路を迎えています。

イーロン・マスク氏は2026年1月の投資家向け説明会にて、同社の成長を支えてきた旗艦モデルである「モデルS」および「モデルX」の生産をまもなく終了することを表明しました。同社は今後、空いた工場リソースを二足歩行型ヒューマノイドロボット「オプティマス」の量産事業へと大胆に転換する方針を打ち出しています10)

業界最大手であるテスラが「EV生産」から「AI・ロボティクス事業」へと軸足を移しつつある戦略転換が、今後のアメリカのEV市場の勢力図や、普及のスピード感にどのような影響を及ぼすのか。政策の行方とあわせて、注視すべき時期と言えるでしょう。

※ZEV=Zero Emission Vehicle(ゼロエミッション・ビークル)。走行時にCO2等の排出ガスを出さない車で、東京都の定義ではEVとPHEV、FCEVのことを指す。

 

 

 

Ⅱ.ヨーロッパのEV普及率

istock画像 ヨーロッパの道路

画像:iStock.com/petekarici

 

欧州自動車工業会(ACEA)によると、2025年のヨーロッパ全体(EU+EFTA+UK )におけるEV(BEV)の普及率は約19.5%となりました。販売台数は約259万台に達しています11)

近年のヨーロッパ(EU+EFTA+UK)の年間普及率を振り返ると、2024年までの数年間は15%前後と停滞していましたが、2025年は一転して大幅な伸びを見せています12-13)

〈図〉ヨーロッパ(EU+EFTA+UK)のEV新車販売台数と普及率の推移(2022〜2025年)

ヨーロッパ(EU+EFTA+UK)のEV新車販売台数と普及率の推移(2022〜2025年)

 

この躍進の大きな要因は、2025年から厳格化されたCO2排出規制(CAFE規制)にあると考えられます。この規制の特徴は、CO2排出基準を1gでも超えると、販売したすべての車に対して「超過分(g)×95ユーロ×販売台数」という巨額な罰金が課される点にあります。そのため、一部のメーカーはこの罰金を回避するため、EVの価格を戦略的に下げる14)など、EVの販売シェアを半ば強引に押し上げる戦略をとりました。

2025年の数字的な「伸び」は、市場の自然な需要というより、規制順守のための政策的な押し上げという側面が強いのが実情かもしれません。実際、メーカー側からの強い反発を受け、2025年12月にはEUの欧州委員会が「2035年エンジン車禁止」の実質的な撤回方針を発表するに至りました15)(ただし、CO2排出量を2021年比で100%削減から90%削減への修正にとどまりますので、基本的なZEV推進の方向性に大きな変更はありません)。

この市場の歪みを象徴するのが、大手ステランティスの動向です。同社はEVを含む次世代投資の大幅な軌道修正を余儀なくされ、巨額の減損処理によって2025年は赤字転落を見込んでいます16)。これは、短期的には規制対応でEVシェアが上昇したとしても、その裏で企業体力が削がれている現実を浮き彫りにしました。

ステランティスの苦渋の決断は、欧州EV市場の中長期的なビジネスモデルが依然として確立されておらず、先行きが極めて不透明であることを如実に物語っていると言えるでしょう。

 

 

 

Ⅲ.中国のEV普及率

istock画像 中国の道路

画像:iStock.com/Nikada

 

中国自動車工業協会(CAAM)のデータによると、2025年のEV(BEV)販売台数(輸出を含む工場出荷台数)は約1062.2万台に達し、普及率は約30.9%を記録しました17)。2021年時点のシェアは11.1%(約292万台)であったことから、わずか数年で市場構造が劇的に変化したことがわかります18-21)

〈図〉中国のEV新車販売台数と普及率の推移(2021〜2025年)

中国の普及率

 

ただし、注意したいのは、この販売台数増加・市場拡大はEVの低価格競争の結果であるという点です。メーカーの低価格競争がどこまで続くのかは不透明ですし、現に業界全体の売上高利益率は4%程度にまで低下したとも報じられています22)

このような低価格競争の激化を受け、日系メーカーは中国戦略を抜本的に見直すという一部報道も見られます23-24)。従来の「自前主義」を脱し「現地重視」へ舵を切る動きが加速。独自体制の維持が困難視されるなか、過当競争「内巻(ネイジュアン)」は、外資の生存戦略を変えつつあります。

なお、近年中国市場ではEV(BEV)よりも顕著な伸びを見せているのがPHEVです。2021年のPHEVの新車販売台数は約60.3万台で販売シェアは約2.3%に過ぎませんでしたが、2025年には約586.1万台に至っており、販売シェアも約17.0%になっています。特にEV並みのバッテリー容量があるレンジエクステンダーEVが注目を浴びています。ガソリン車と遜色のないくらいの価格になっており、需要が拡大中です。

中国では国内内需は飽和しつつあり、このままEV需要が続くのか、レンジエクステンダーEV含むPHEVの需要がさらに伸びるのかに注目です。

 

 

 

EV充電設備

 

EVの普及に向けた日本・世界の取り組み

ここまで、日本と世界の“EVの現状”を見てきました。ここからは、その少し先にある“EVのこれから”を見ていきましょう。
EV普及には、国の政策や方針が強力な推進力となるのはいうまでもありません。各国の政策や方針をそれぞれ確認してみましょう。

 

Ⅰ.日本の取り組み

国会議事堂

画像:iStock.com/Mari05

 

日本では「2035年までに乗用車の新車販売で電動車100%を実現する」という方針が定められています。ただし、ここで言う“電動車”には、EVやPHEVだけでなく、HEVやFCEVも含まれています。すべての車をEVにする、というわけではありません。

この方針は、経済産業省が2020年12月に関係省庁との連携で策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(以下:グリーン成長戦略)25)によるもので、2021年6月に改訂版が発表されました。

グリーン成長戦略の中では、充電インフラ整備を始めとして、税制優遇や研究分野への支援、国際連携などに触れられており、より具体的な戦略が打ち出されました。

なお、グリーン成長戦略の改訂版発表から1年後にあたる2022年6月には「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」26)で、グリーントランスフォーメーション(GX)は「重点投資分野」のひとつに位置付けられ、2023年6月には脱炭素社会を実現する政策支援の裏付けとなるGX推進法が国会で成立27)。また、2025年2月には国際情勢の緊迫化やGX・DXの進展に伴う電力需要増加の可能性なども加味して、中長期の見通しとして「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(GX推進戦略)を改訂した「GX2040ビジョン」を策定し、閣議決定されました28)。今後10年間で150兆円規模の投資を目指しており、再生可能エネルギーやEVの普及が後押しされる見込みです。

また、日本では自治体レベルでも、東京都の「ZEV普及プログラム」のようにインフラ支援や独自補助金を通じたZEVの普及促進がおこなわれています29)。なお、国も継続して補助事業を行なっており、2026年よりCEV補助金の上限を130万円に拡充し30)普及を後押しているほか、充電インフラの拡充も実施中です。

ただ、中長期的にはその在り方を精査すべき点がある状況なのは否めません。補助金は本来、市場自立への時限的支援であるべきですし、与党税制調査会が2026年末に取りまとめる令和9年度税制改正大綱で示されると言われる、EVへの車両重量をベースとした保有時の車体課税など31)、受益者負担への移行方針も踏まえた議論が欠かせません。また、充電インフラ整備も日本の住宅事情に適した充電環境を充実させるような議論も必要でしょう。今後日本のEV普及の鍵は、実需に即した持続可能な環境整備になってくるでしょう。

 

 

Ⅱ.アメリカの政策・方針

アメリカ国旗

画像:iStock.com/rarrarorro

 

アメリカではかつて、2021年にバイデン大統領が署名した「2030年までに新車販売の50%以上を電動化する」という大統領令32)のもと、国を挙げたEVシフトが進められてきました。その象徴が2022年に成立したインフレ抑制法(IRA)であり、最大7500ドルの税額控除という強力なインセンティブが、初期のEV普及を後押ししました。

しかし、2024年11月のアメリカ大統領選により、トランプ氏が勝利し、情勢は大きく変わります。トランプ大統領は「EV義務化撤廃」を掲げ33)、バイデン時代の支援策を白紙に戻す動きを加速させました。

たとえば、2025年5月、連邦議会はカリフォルニア州などが独自の厳しい環境規制(ZEV規制)を設ける権利を無効化する決議案を可決しました34)。これを受け、同年6月にトランプ大統領が署名を行い、実質的に「ZEV販売義務」は消滅しました。カリフォルニア州は即座に提訴しましたが、メーカー側は規制緩和を見越した戦略へと転換しています。

また、2025年4月より、輸入乗用車に対する関税が従来の2.5%から、25%の上乗せが課され、27.5%へと大幅に引き上げられました。さらに5月には自動車部品にも同様の追加関税が適用され、海外サプライチェーンに依存する多くのEVで製造コストが急騰しました35)。さらにトランプ政権はIRAに基づく税額控除の前倒し終了を断行し、実質的な購入支援は2025年後半には機能を停止しています36)

この結果、2025年のアメリカのEV市場は、駆け込み需要があった上半期こそ一定の水準を維持しましたが、下半期以降は税額控除の撤廃と車両価格の上昇が重なり、販売が減速する局面に突入しています。

 

 

Ⅲ.ヨーロッパ(EU)の政策・方針

istock画像 ヨーロッパ国旗

画像:iStock.com/legna69

 

2021年、ヨーロッパでは欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)により、「欧州グリーンディール」に関する法案が発表されました37)

このなかで、自動車分野についてはCO2排出量を「2030年までに2021年比で55%削減」「2035年までに100%削減」するという極めて厳しい目標が設定されました。これにより、事実上2035年にはEV(BEV)とFCEVを除く、PHEV・HEV・ガソリン車・ディーゼル車の新車販売が禁止されることになります。ただし、ドイツ等の提案を受け、2035年以降も合成燃料(e-fuel)を使用する場合に限り、内燃機関車の販売を容認する例外規定が設けられています38-39)

これを推進するため、各国で手厚いEV購入支援策が実施されてきましたが、2023年末から2024年にかけて大きな転機を迎えました。ドイツは財源確保方法の司法判断を理由にEV補助金を急遽終了し、フランスは製造・輸送過程のCO2排出量を評価する「環境スコア」を導入して、中国製などの長距離輸送されるEVを補助金対象から除外しました40-41)

これらの支援策縮小の影響で、2024年のヨーロッパEV市場は停滞を迎えました。これに対し、欧州自動車工業会は「現状のままでは2025年の厳格なCO2排出基準(CAFE規制)の達成は不可能であり、巨額の罰金により産業が疲弊する」として、EU当局に規制の柔軟な運用を強く求めました42)

この要望を受ける形で、欧州委員会は2025年4月、CO2排出基準の達成判定について、2025年の単年評価ではなく「2025年から2027年の3年間平均」での達成を認める緩和措置(一部改正案)を発表43)。この時限的な柔軟措置により、メーカーは当面の罰金リスクを回避しつつ、より長期的な視点で電動化戦略を立て直す猶予を得た形です。

2025年後半以降は、この規制対応のための各社の販売攻勢や、安価なコンパクトEVの投入により、販売台数は再び上向きの傾向を見せています。ただし、EUは2024年10月に中国製EVに対して最大35.3%の追加関税(既存の10%と合わせ約45%)を課す決定44)を行っており、市場に与える影響が注視されます。

こうしたなか、中国に代わる新たな供給拠点として注目されているのがインドです。2026年1月には、長年交渉が続いていたEU・インド自由貿易協定(FTA)が妥結に至り、自動車関税の段階的引き下げや基準の共通化が盛り込まれました45)。これにより、インドの自動車メーカー勢に加え、インドに生産拠点を持つ欧州メーカーからのEV輸入が今後拡大する可能性が高まっています。規制主導の回復が持続するか、あるいはインド産EVが中国製に代わる「安価な選択肢」として台頭するかが、2026年以降の欧州市場における焦点のひとつになるでしょう。

 

 

Ⅳ.中国の政策・方針

istock画像 中国国旗、建物

画像:iStock.com/tcly

 

中国ではEV(BEV)とPHEV、FCEVをNEV(New Energy Vehicle=新エネルギー車)と呼び、自動車メーカーに販売台数の一定割合をNEVにすることを義務付ける「NEV規制」を2019年から実施してきました。これは、自動車産業の後発国であった中国が、産業構造の転換を通じて世界的な競争力を獲得するための国家戦略でした。

2020年に中国自動車エンジニアリング学会から発表された「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0」では、NEVの義務化割合を2025年に20%、2030年に40%と段階的に引き上げる方針が示されました。さらに2035年までには、NEVの割合を50%以上とし、残りのガソリン車もすべてHEVとすることを目指しています46)

経過は非常に順調で、2024年1月には目標の前倒しを行い、2027年までに「NEVの割合を45%」と発表しました47)。しかし、実際の普及スピードはさらに早く、2025年通年のNEV販売台数は約1649万台に達し、新車販売全体に占めるシェアは約47.9%を記録。単月ベースではすでに50%を超える月も出ており、かつて掲げていた「2035年にNEVの割合を50%以上」という長期目標を、10年も前倒しでほぼ達成してしまったことになります。

そのためか、2025年10月には「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ3.0」が公表され、2040年までにNEVの割合を80%以上にするという新たな長期目標も示されています48)

こうした急成長を支えてきたのが、NEV購入時の車両取得税減免政策です。当初は2023年末で終了予定でしたが、経済対策の一環として2027年末までの延長が決定されました49)。ただし、普及段階の変化に合わせて支援内容は段階的に縮小されています。2024〜2025年は最大3万元が免税されていましたが、2026年1月1日からは免税額が最大1.5万元へと半減され50)、市場は完全な自立に向けた調整局面に入っています。

中国は「普及促進」のフェーズを終え、充電インフラのさらなる高度化や、国内の過当競争を勝ち抜いたメーカーによる海外輸出の拡大など、質の高い「EV強国」への転換を急ピッチで進めている状態だと言えるでしょう。

 

 

Ⅴ.その他の国・地域の政策・方針

その他の国・地域の目標や政策も見てみましょう。

 

ⅰ.イギリス

イギリスでは、2020年11月に「グリーン産業革命」51)を発表。「2050年までに温暖化ガス排出ゼロ」を目標とするもので、ガソリン車・ディーゼル車の新車販売禁止が、それまでに打ち出していた「2035年」から「2030年」へと前倒しされました。

しかし、その後も方針は定まらず、2023年には一転して「2035年」へ戻されましたが、政権交代した労働党が再び「2030年」へ前倒しを表明。そして、2025年4月には「2030年に純粋な内燃機関(ICE)車の新車販売禁止」「2035年にハイブリッド車(HEV/PHEV)を含む全新車のゼロエミッション(ZEV)化」という2段階の目標が再確認されました52)。同時に、自動車メーカーに課される「ZEVマンデート(販売比率義務)」については、未達時の罰金減額や達成判定の柔軟化といった緩和措置も導入されており、産業保護と脱炭素の両立を模索する局面に入っています。

 

ⅱ.インド

人口世界1位となったインドは、「ガソリン車・ディーゼル車禁止」をいち早く打ち出した国ですが、現在は2030年までに乗用車(四輪車)の新車販売の30%、二輪車・三輪車の新車販売の80%をEVとする目標を掲げています53)。2024年度のEV新規登録台数は過去最高の約196.5万台を記録し、内訳は二輪車が約115万台、三輪車が約70万台、四輪車などが約12万台となっています54)

政策面では、2024年10月から新たな補助金制度「PM E-DRIVE」(2026年3月末まで)がスタートし、二輪車・三輪車への普及に拍車をかけましたが55)、乗用車(四輪車)向けには補助金が設けられなかったこともあり、乗用車(四輪車)の成長は鈍化しています。しかし、2025年末に主要メーカーが本格的な新型EVを相次いで投入しており、普及の裾野が広がっています。

なお、インフラ面では、インド乗用車市場でシェア首位のマルチ・スズキ(インドにおけるスズキの販売子会社)が2025年12月に13社の充電事業者と提携し、2030年までに全国10万カ所の充電ポイント設置を目指す方針を発表するなど、官民一体での基盤整備を加速させています56)。さらに、2026年1月に妥結したEU・インド自由貿易協定(FTA)により、インド産EVや部品の対欧輸出拡大が現実味を帯びています。

 

ⅲ.東南アジア

タイやベトナムなどの東南アジアでは、BYDをはじめとする中国メーカーの積極的な進出によりEV市場が急拡大しています。しかし、普及の加速に伴い、急速充電器の不足や送電網の負荷といった充電インフラの整備遅れが持続的な成長に向けた喫緊の課題として浮き彫りになっています57-58)

 

ⅳ.台湾

台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は、傘下のフォックストロンを通じて独自のEVプラットフォームを核としたOEM供給ビジネスを本格化させています。2025年には三菱自動車へのEV供給(オセアニア向け)に合意59)したほか、2026年1月には三菱ふそうトラック・バスと日本市場向けのEVバス専業メーカー設立で合意しました60)。小型車から大型商用車まで網羅する受託製造モデルを構築し、日本や欧州メーカーとの連携を通じて、世界のEVサプライチェーンにおける主導権を狙っていると見ることもできます。

 

 

【グラフで見る】日本・世界のEV普及率の変遷

ここまで各地域での近年のEV普及の実態や、政策などを確認してきましたが、もう少し長いスパンで概観してみましょう。この10年の間に世界のEVはどれくらい増えたのでしょうか? 10年前からの推移をわかりやすいようにグラフにしてみました。

 

世界全体のEV・PHEVの販売台数・販売シェア

 

〈図〉2014〜2024年における世界全体のEV・PHEV(乗用車)の販売台数・販売シェアの推移61)

2014〜2024年における世界全体のEV・PHEV(乗用車)の販売台数・販売シェアの推移

 

EVやPHEVの販売台数は、10年前から着実に増加していますが、特にここ5年で急激に増えています。年間の販売台数は2022年に1000万台を超え、2024年には1750万台に到達。また、EV・PHEVの販売シェアは2024年に世界全体で22%に至るまで成長しています。

なお、グラフを見てわかるとおり、市場全体を牽引しているのは中国のEV・PHEVの存在です。ヨーロッパ、アメリカがこれに続いています。

 

世界全体のEV・PHEVの保有台数・シェア

 

〈図〉2014〜2024年における世界全体のEV・PHEV(乗用車)の保有台数・シェアの推移61)

2014〜2024年における世界全体のEV・PHEV(乗用車)の保有台数・シェアの推移

 

また、保有台数(世界中に出回っているEVの数)も年々増えてきています。2020年にEV・PHEVの保有台数は1000万台を超え、2023年には4000万台、2024年には5800万台に達しています。これは保有台数シェアで4.5%に達しており、今後も成長することが見込まれます。

 

世界各国のEV・PHEVの新車販売台数とシェアの推移

続いて、各国のEV・PHEVの新車販売台数とシェアもまとめました。詳しくは以下をご覧ください。

〈図〉2018〜2024年における世界各国のEV・PHEVの新車販売台数とシェアの推移61)

日本、韓国、カナダ、インドのグラフ

フランス、イギリスのグラフ

アメリカ、ドイツのグラフ

中国のグラフ

オランダ、ノルウェー、スウェーデンのグラフ

 

 

EV充電設備

 

日本の充電インフラの普及状況

ここまでEVの普及状況について解説してきましたが、EV普及のためには充電インフラの普及も必要不可欠な要素です。充電インフラの状況についても確認してみましょう。

経済産業省によれば、公共用のEV充電スタンドは2025年3月末時点で全国に約4万3000口が設置されており、内訳は急速充電器が約1万2000口、普通充電器(目的地充電)が約3万1000口となっています62)

〈図〉日本における充電器設置口数の推移

日本における充電器設置口数の推移

 

日本では、前述の「グリーン成長戦略」のもと、「2030年までに公共用の急速充電器3万基を含む充電インフラを15万基設置(遅くとも2030年までにガソリン車並みの利便性を実現)」を掲げて、充電インフラの普及促進や規制緩和を進めてきました63)

しかし、2023年10月に国が示した「充電インフラ整備促進に向けた指針」によれば、数え方の単位を「基」から「口」に見直した上で、2030年の設置目標を現在の10倍にあたる30万口に引き上げることを発表しています64)

また、充電インフラを増やすだけでなく、急速充電器の平均出力を倍増させる「高出力化」も進め、充電時間を短縮してユーザーの利便性を向上させる方針も示されています。

2017年以降の設置数は停滞傾向にありますが、設置数だけでなく、利便性向上も含めて、今後の普及をより一層推し進めていくことになりそうです。

 

 

 

【将来予測】今後のEV普及率はどうなる? 現在の課題とは?

istock画像 走行中の車

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Ⅰ.EV普及率の今後

アメリカや日本ではEV普及の鈍化が見られるものの、世界は低燃費・CO2削減のために車の電動化が進み、その中でもEVの普及率が高まっていくことは間違いないでしょう。

しかし、国や地域によってエネルギーインフラや社会情勢は大きく異なりますから、EVへのシフトが問題ない地域もあれば、ガソリン車やディーゼル車の方が適している地域もあります

また、資源採取~製造~流通~使用過程~廃棄・リサイクルまでの、LCA(ライフサイクルアセスメント)も考える必要があります。そういった様々な視点から考えると、全世界の車がすべて早い時期にEVに置き換わることは考えにくいでしょう。要は「適材適所」であることが重要なのです。

 

Ⅱ.EV普及の課題とは?

 

ⅰ.航続距離の問題はほぼ解決済み

日本ではEV普及の課題として、EVの性能にフォーカスが当てられることが多いですが、年々性能は向上しており、航続距離が500km以上ある車種も多くなってきました。バッテリー容量が100kWhを超える車種も増えてきているほか、電費改善も進んでいるため、普段使いで困ることはほぼないでしょう。

さらにバッテリーに関してはトヨタや日産が2027〜2028年頃に、従来より電池のエネルギー密度が高い全固体電池の量産を始めることを明らかにしています。バッテリーの性能が上がれば、航続距離が伸びるほか、急速充電への対応力が向上することでEVのデメリットと考えられている点を補うことができるようになるのです。

 

ⅱ.車種の選択肢も拡大中

また、これまで日本でEV普及がなかなか進まない理由のひとつとして、車種の選択肢が限られてしまうことが挙げられていました。日本で手の届きやすい価格のEVといえば数車種に絞られてしまう、という状況だったわけです。しかし、前述どおり、軽EVが登場したことで選択肢が広がりつつあります。自動車メーカー各社はEV開発を推進しており、車種も急激に増えています。日本でも車種の選択肢がより増えていけば、EVはもっと身近になっていくことでしょう。

 

ⅲ.リセールバリューの低さは課題

ただし、自動車産業界全体として、EV普及の「出口戦略」を模索している状況であることも事実です。日本で普及が進まない大きな要因のひとつは、リセールバリュー(下取り価格)がガソリン車などに比べて低い点にあります。

これはバッテリーの劣化に対する商品性が不明確であることが主因であり、今後は劣化度(SOH)の評価指標を明確化するなど、LCA(ライフサイクルアセスメント)を踏まえたバリューチェーンの構築が必須です。その上で、製造者側である日本自動車工業会が販売分野と密接に連携し、EV中古車の適正価格化や品質保証を推進するなど、商流を大きく変化させる必要があります。バッテリー診断基準の標準化が市場の成否を分ける鍵となるでしょう。

 

ⅳ.今後直面するのは税金の問題

もう1点、普及の大きな障壁となり得るのが「税金の問題」です。政府は、2026年末までにまとめる「令和9年度税制改正大綱」に、新しい自動車関連税制を盛り込む方針で動いています。そのなかで、現行の自動車税や重量税のあり方を見直し、出力(排気量)ではなく「車重」をベースとした新税体系への移行が議論されています。しかし、バッテリーを搭載するEVは同クラスのガソリン車やHEVよりも重量が重く、単純な重量課税では税負担が急増しかねません。さらに、燃料税の減収を補うための「走行距離課税」の導入も依然として議論の遡上にあります。

これまでは普及促進のために優遇措置が手厚かったEVですが、普及期に向かうなかで「受益者負担」の原則が適用され始めれば、維持費のメリットが薄れる可能性があります。技術的な出口戦略と、納得感のある税制。この両輪が整備されるか否かが、今後の日本のEV普及を左右するでしょう。

 

 

EV充電設備

 

EV普及には、社会全体の変化と理解が必要

istock画像 交差点

画像:iStock.com/kokouu

 

この記事を今、あなたが読んでいるのは、「もっとEVについて知りたい」「わからないことが多い」と思ったからでしょう。その思いは、多くの人にとっても同じです。日本ではEVは本格的に普及していくスタートラインに立った段階なのです。

EVは私たちユーザーにとっても、自動車メーカーにとっても、日本政府にとっても初めてのことだらけです。また、車の歴史を振り返ってみても、「環境のために車の構造を変化させなければいけない」という局面は初めてのことです。そのため、ユーザーの意識はもちろんのこと、様々な技術の進歩やインフラ整備、政策もまだまだ発展途上です。

また、単純に「ガソリン車からEVに、というような車の種類だけが変わればいい」というものではないことも、EVシフトの難しいところです。スマートフォンやインターネットなど、他の技術革新のように技術が生まれたから自然と普及するのではなく、EVは普及のために車自体はもちろん、それに付随するインフラなどについても技術を磨き、導入しやすい環境を整える必要があるのです。

日本政府が打ち出している戦略はありますが、社会全体がEVを受け入れられるように変化していくことが、EVの普及には不可欠です。最近では、カーシェアリングなどで身近にEVを利用する機会も増えています。様々な発展とともに、私たちも少しずつEVのある生活に慣れていけば、自ずとEVの普及率も高まっていくでしょう。

 

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この記事の監修者
桃田 健史
桃田 健史

日本自動車ジャーナリスト協会会員。専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。ウェブ媒体、雑誌での執筆のほか、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組や海外モーターショーの解説も担当。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ』(ダイヤモンド社)、「IoTで激変するクルマの未来」(洋泉社)など。




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