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【映画】しゃぼん玉:更生の道に無償の愛と承認が必要だと知る

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人は生きながら生まれ変われるチャンスがある、と思いたい

 

名優 市原悦子さんの遺作

 20代のころ、私はペンネームに『悦子』という名を友人から賜り名乗っていたことがある。それは市原悦子さんの悦子から由来した名前で私はとても気に入っていた。

 映画『しゃぼん玉』は2019年1月に逝去された市原悦子さんの遺作で、2017年に公開された。この作品が、全国の刑務所や少年院などで上映されて多くの受刑者の人たちの心を動かしているというニュースをたまたま目にして、私はどんな作品なのかとても気になっていた。

www.dailyshincho.jp

 主人公の青年、伊豆見翔人を演じるのは信作(『スカーレット』じゃないや)もとい、林遣都くん。『おっさんずラブ』の牧くんで多くの人のハートを釘付けした。彼はあの甘くてかわいいお顔をしているのでついつい年齢より若く見られそうだけど、今年で30歳、イケメンぞろいの1990年生まれ組である。同じ年生まれは、大好きな三浦春馬くんや池松壮亮くん、柳楽優弥くんもいる。

「かてーり」の精神を通して日本人が大切にしてきた「絆」を見る

shabondama.jp

 物語の舞台は宮崎県椎葉村(しいばそん)。日本で最も美しい村だと言われているそうだ。九州山地のほぼ中央に位置し、村のほとんどが森林。秘境のような村なので村人たちは相互扶助の精神「かてーり」を大切にしてきた。

 そんな村にある日、ひったくり強盗で人を刺し、警察から逃げている伊豆見翔人がやってくる。

 

 逃亡の果てに迷い込んだ山中で、伊豆見はオートバイの転倒事故で動けなくなっている老女のスマを見つける。老女は椎葉村の住民だ。彼女を助けたのをきっかけに、伊豆見は独り暮らしのスマの家で寝泊まりをするようになると、村人たちは、疎遠になっていたスマの孫が戻ってきたのだとすっかり勘違し、あれやこれやと世話を焼く。

 はじめは隙あらばスマの家から金を盗んで逃げようと思っていた伊豆見だったが、スマや村人たちと接しながら山仕事や農作業をするうちに、少しずつ荒んだ心がほどけていき…。

 

 人口が首都圏に集中し、過疎地は高齢者のみ残され、椎葉村のような村は存続の危機にある一方で、都会は個々人で区切られた生活で、人とのかかわりを極力避けて個人の自由を大切にすることを気楽だと捉えながらも、どこか人恋しさを抱える人が増えているような…切ない社会だったりする。

 主人公の伊豆見翔人は親の愛情を知らずに育ち、身勝手で反社会的な行動を重ねた挙句、とうとう人を刺してしまういわゆる『札付きのワル』だ。彼は利己的で弱者を狙う犯罪を繰り返し、罪の意識などないまま逃亡生活を続けていた。スマの孫だと思い込んでいる村人はすんなり伊豆見を受け入れ不審に思われることはない。ましてやこんな辺鄙なところにまで捜査がやってくることもない。穏やかな生活を続くのだが、やがて、伊豆見は『椎葉平家まつり』の手伝の最中に一人の女性と出会う。二人はしだいに惹かれ合う...が、何の因果か思わぬ事実を知り、伊豆見は良心の呵責に苦しむことになる...。

 

人との関わりと承認が『人の子』に育ちなおす

 この映画を観た受刑者たちの多くが涙するという…。つまり『札付きのワル』だとしても、人の心は必ずどこかに残されているということだ。こうした人たちの背景には悲しい生育過程が見え隠れする。「自分が罪を犯しても悲しむ人がいない」ことや「裏切れない大切な人の不在」によって自暴自棄の行動へと走ってしまうのではないか?と。

 伊豆見翔人はスマとの暮らしの中で、人の子として育ち直す。どこから見ても訳アリそうな伊豆見に何も聞かず、何も言わず、温かいご飯を作り、お風呂を沸かし…、ごくごく普通の日常を送りながら、ことあるごとに「あんたはええ子じゃ」と語りかける。

 何一つ条件などないスマの「あなたがそこにいるだけでいい」という承認が、伊豆見の凍った心を溶かしていくのだ。

 

 その温かい過程をぜひ観て欲しいと思う。

 

穏やかな時間と美しい風景が人の心を洗う

 原作は、直木賞作家・乃南アサのベストセラー小説『しゃぼん玉』(新潮文庫)。主題歌は秦基博の「アイ」。何もない田舎の景色の中で、唯一、盛り上がりを見せる椎葉村の伝統行事『椎葉平家まつり』が見どころだ。この村は平家の落人が住み着いたと言われ、平家を追ってきた那須与一の弟である那須大八郎宗久がこの村人たちの穏やかな暮らしを見て、反乱の恐れなしと討伐をとりやめて住み着き、そこで平清盛の末裔である鶴富姫に出会い、一女をもうける…という優しい伝説がまつりの由来だ。

 その伝説と伊豆見の心が溶かされた人の温かさがリンクして椎葉村の魅力が倍加する。映画は終始静かで落ち着いていている。まるで椎葉村のように。派手な演出はなく、穏やかに淡々と人間の営みを描く。

 あぁ、こういうのが映画の良さだなぁ…と思う。

 

 だれもがユーチューバーになれる「盛り」や「映え」がもてはやされ、無意識下のハイテンションで疲弊しながらも、そんな無理のある日常に気づきづらい時代だからこそ、何の飾りもない閑静な日常の有難いことか…。そんな世界にホッとするのは私がそんな歳だから?

 だとしてもいい。もう、人生の後半にさしかかったのだから、自分が心地良い世界を大事にしていこうと思うばかりだ。

 とてもいい映画です。

 

★みじん子レーダー【映画】しゃぼん玉
●ドラマティック度:★★★☆☆
●鑑賞後の心地良さ:★★★★☆
●ドラマの重量感:★★★★☆
●涙活度:★★★★☆
★穏やかに流れる時間、美しい景色が人の心を洗う108分




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