前々回と前回の2回に分けて取り上げたWat Suthat Thepwararam(ワット・スタット・テープワラーラーム/วัดสุทัศนเทพวราราม)の近くに、とりわけ潮州系の方々の間で絶大な信仰を集める廟が建っています。
今回の記事は、タイガー神社の異名を取るそのSan Chao Pho Sua(サンチャオ・ポー・スア/ศาลเจ้าพ่อเสือ)について。
タイガー神社のロケーション
Wat Suthatへと続くバムルンムアン通り(通称仏具通り)にSan Chao Pho Suaが建立されたのは1834年。
その後、ラーマ5世(在位1868~1910年)の肝煎りで進められた道路拡張プロジェクトによって、タノンタナオ通り沿いの現在地へ移転しました。

タイガー神社の50m圏内にはミシュランのビブグルマンにも掲載されているRat Na Yot Phak 40 Years(ラートナーヨッドパック40年/ราดหน้ายอดผักสูตร 40 ปี ศาลเจ้าพ่อเสือ)や、バンコクNo.1のカオパット屋台と評されるKhao Phat Poo Thanon Tanao(カオパットプー・タノンタナオ/ข้าวผัดปู ถนนตะนาว)を筆頭に、ハイレヴェルな食堂がズラリ。流石は食にうるさい華人の集まるエリアです。
最寄り駅はMRTサムヨート。3番出口から徒歩15分程度かかります。また、カオサン通りからも歩いて10分以内。カオサンに宿泊される方は、食事に行きがてらお参りするのも手でしょう。
なぜにトラ?

San Chao Pho Suaがタイガー神社と呼ばれる所以は、トラ(Sua/เสือ)の霊を祀っているため。周辺にはかつて野生のトラが数多く生息していたらしいです。確かに、遷都当時のバンコクを描いたWat Suthatの壁画でも、トラが大々的にフィーチャーされていましたっけ。
とはいえ、San Chao Pho Suaの境内は思いのほかトラ要素が希薄。ひときわ目を引くのはドラゴンのオブジェです。しかも、この廟のメインは北極星を神格化した道教の神様=玄天上帝。
タイガー神社の名前に惹かれて参拝を検討されているトラ好きの方は、過度に期待しないようご注意ください。
独特な参拝方法

かく言う私もトラのオブジェ目当てで行ったクチ。しかし、ガッカリするどころか、タイにある他の社寺とはひと味もふた味も違う雰囲気に圧倒されました。
特筆すべきはユニークなお供え物。San Chao Pho Suaでは生卵と生の豚バラ肉ブロックを玄天上帝に捧げます。
上掲写真の中央あたりに卵しか映っていないのは、真っ昼間の一番暑い時間帯だったせい。豚バラは別途クーラーボックスに保管されています。じゃなきゃ、すぐに腐っちゃいますもんね。

なぜ卵と豚肉なのかは不明。建築様式は中国南部の廟を模したみたいですが、ざっと調べた限り、本場・中国で卵と豚をお供えする施設は見つかりませんでした。
San Chao Pho Suaでは玄天上帝の像に卵と豚肉セットを供える他、6つの香炉に18本の線香を3本ずつ立て、最後に赤いロウソクを手向けるのが正式なお参り作法。
参拝者1人につき18本も線香を立てるので、当然の如く内部には煙が充満しています。暑さも相俟って頭クラクラ。異世界へ紛れ込んでしまった錯覚に陥りました。
どんなご利益があるの?

San Chao Pho Suaには開運と商売繁盛のご利益があり、なかでも18本の線香と赤いロウソクを供えることで出世が早くなると信じられています。さらに、赤い棒状の中国式おみくじは予言が的中するんですって。
その不思議な力が噂を呼んでか、もともとの信者である華系タイ人の方のみならず、上座部仏教を信仰するタイ族の方もこぞって参拝に訪れます。
私が行ったウィークデイど真ん中の昼時もなかなかの混雑具合だったものの、翌朝に前を通ったら、入口に人だかりができ、外まで煙が漏れ出ていました。
何でもない普通の平日でさえけっこうな賑わいなのに、春節の時期ともなると全国各地から人が押し寄せ、長蛇の列ができるとか。

タイには3万か所を優に超える寺院と廟があり、大乗仏教や道教関連の施設もそれなりに見かけます。加えて、宗教情報リサーチセンターの資料によれば、タイ国内の中華系社寺は過去20年間で急激に増加。
そんな状況にもかかわらず、わざわざ遠方からも参拝客が来るなんて、やっぱり強いご利益が得られると評判だから……なのかな?
なお、地元の人曰く「San Chao Pho Suaは、ヤワラー(※タイ最大のチャイナタウン)のWat Mangkon Kamalawat(ワット・マンコン・カマラワート/วัดมังกรกมลาวาส)と人気を二分し、華系の社寺では最強クラスのパワースポット」だそうです。

ちなみに、私はこういう場所に行ってもあまりお願い事をしません。感謝の気持ちを伝え、場合によっては旅の安全祈願をする程度。普段はまったく神様に手を合わせないくせして、旅先でこれみよがしに神頼みしちゃう自分が白々しくなっちゃうんですよね。
したがって、「San Chao Pho Sua詣での後に仕事運がアップしました!」的なご報告はできないながらも、少なからずこの旅では大したトラブルに遭いませんでした。これだけで十二分にご利益はあった気がしています。
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