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つなぎ技術としての再エネとBEV

素人ながらLENRについていろいろ調べてきた。結局のところこの動画のLENRに対する評価が正しい気がする。

www.youtube.com

LENRは実際に起きている(特にミューオン核融合重水素イオンビーム照射などは科学的に確立した方法)が、エネルギーの出力を入力より大きくできるかどうか、つまりQ>1である安定的な技術を生み出せるかは、なかなか難しいということかもしれない。ただ、彼女が最後に付け加えているように、人類は化学プロセスや原子核のふるまいについてそこまで知っているわけではないのだろう。LENRの一連の実験は、人類がまだよく理解していないメカニズムがあることを示しているのは間違いない。これを研究することで、「安全でクリーンで事実上無尽蔵な」エネルギーを入手する突破口になるだろう。

LENRの実用化という視点では、いくつかの企業が実際に動き始めている。

  • Clean Planet(日本)
  • Brillouin Energy(米国)
  • NewFire Energy(米国)
  • HYLENR(インド)
  • ENG8(英国)

中でも日本のClean Planetは高名な科学者やアカデミアの重鎮を陣容に加えていて、おそらく数々のLENRスタートアップでは一番「オフィシャルぽい」のだ。

www.cleanplanet.co.jp

LENRでは基本的に入力物質は水素(重水素または軽水素)だ。日本は無類の水素好きで知られる。私はそれをさんざん批判してきた。ただ、私の批判は、化学エネルギーの媒体としての水素に向けられていたのであって、核エネルギーとしては全く話が違う。この場面では、日本の水素好き、そして新奇技術好きが珍しくプラス方向に向かう可能性がある。「日本発のLENR革命」という可能性すら残っているのだ。

さまざまなAIといつLENRでMVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)が作れるかについて議論したところ、一番慎重なGeminiでさえ、2035年までに50%の確率で登場するという評価だった。Grok, Copilot, ChatGPT はもっと前のめりで70%前後の確率で登場するのでは?とのことだった。現状ではにわかに信じがたいのだが、近年、LENRのスタートアップに資金が集まり始めていることを見ると、あと10年でひょっとしたらひょっとするのかもしれない。

LENRの特徴はそれが人間の扱いやすい規模感である点である。いったんMVPができれば、研究開発に資金が殺到するのは間違いない。いまのAIと似たような熱狂的なブームが起こるはずだ。多数の企業が同時並行で市場で競争しながら研究開発を進めていくので、半導体太陽光パネル・蓄電池の生産で観察されたような学習効果が働いて、性能向上と価格低下が指数関数的に進んでいくだろう。

人類が現在知っていて、現実的に操作ができそうな技術のうち最もエネルギー密度が高いのは、核エネルギーである。地熱を除く再エネは、基本的に地球から1億5000万km彼方にある太陽で起きている核融合エネルギーを受け止める仕組みである。そういう意味ではこれは天然の核融合発電なのである。

人類は地上で太陽内部と同じ核融合反応を持続的に起こして発電しようと長年努力してきた。しかし、人類はいまのところ水素爆弾という兵器を除いては、核融合反応の実用化には成功していない。ITERのように高温・高圧で水素の核融合を起こそうという試みを熱核融合と呼ぶ。原理的には太陽内部で起きていることと同じなので、この点について科学者たちに異議はない。問題は、太陽内部に似た高温・高圧の条件を作り出そうとする点である。高温プラズマを強力な磁気で閉じ込める方法や、周囲からレーザー光線などを当てて狭い領域に閉じ込める方法などが提案されているが、どれも工学的に極めて困難であり、なかなか開発が進んでいない。

ソフトウェアエンジニアとしてシステムを見てきた勘で言えば、熱核融合の工学的チャレンジは人類の手には余る。究極のスパゲティコードを前にして、機能追加を行おうとするときの絶望感に似ている。

一方でLENRはおそらくは核反応が起こるナノ構造に鍵があるので、半導体と同じような微細加工技術が突破口になるだろう。こちらの方が人類にはよほど取り扱いやすい技術なのだ。それゆえに、いったん開発の目処が付けば、LENRのほうが熱核融合よりはるかに速く技術が進歩するだろうと予想している。

私は、ここで従来の価値観を転換せざるを得ないことを悟った。再エネとBEVはおそらく人類のたどり着く最後の技術ではなく、LENRが実用化するまでのつなぎ技術に終わるだろうと。

LENRが実用化されれば、すみやかに再エネに取って代わるだろう。再エネと同等にクリーンでありながら、広大な土地が不要だからだ。また、車載LENR発電機のようなものが開発されれば、従来のリチウムイオン電池・ナトリウムイオン電池などは不要になる。出荷時にわずかな量の水素を搭載しておけば、自動車が物理的に壊れるまで、燃料を再補給せずに走り続けることができるだろう。燃料費はほぼ無料になり、充電の手間や航続距離の不安から完全に解放される。コストが十分安くなれば、BEVよりLENR車が選択されるようになるだろう。

さていまはどうなるかわからないLENRであるが、2035年までに50%の確率で実用化するという前提で、日本の取るべき道を考えてみよう。

日本は、「土地が狭い」という理由で再エネ導入がこれ以上あまり進まないと考えている人が多い(私は同意しないが)。また、福島原発事故の影響もあり、今後も原発の再稼働や新規建設は困難なままだろう。このままでは化石燃料依存が続き、国際的非難を浴びるようになる可能性が高い。

まだ、日本の自動車メーカーがEV導入に消極的なこともあり、日本でのEV普及は低調なままである。新車販売に占めるEV比率が世界では25%に達しているが、日本はまだ2%前後。EV開発で出遅れた日系自動車メーカーは今後もEV製造販売に苦戦し続けるだろう。それが原因で、経営不振に陥り、買収・合併・倒産・清算という可能性もある。

しかし、私はLENRの可能性を知ってから、正直、こういう諸々の事柄がなんだかどうでもよく見えてきてしまった。本当に2035年あたりからLENR発電が普及するのであれば、仮に日本が化石燃料に依存し続けても、日本がそのことで非難を受けるのは高々数年程度なのかもしれない。BEVを作れずに日系自動車メーカーは衰退するかもしれないが、その後、LENR車の流れが来て、もう一度自動車産業はひっくり返る。LENRによるエネルギー制約からの事実上の解放と、AIによる技術革新の加速を考えると、もうその先に何が起こるのかは、私の想像力を越えてしまう。

気候変動についても、人類が無限のエネルギーを使えるのなら、DAC+CCSでいくらでも大気中のCO2濃度を下げることができる。平均気温を下げて、気候変動を巻き戻すことができるのだ(正確に言えば tipping point を越えてしまうといろいろ不可逆的過程が発動してこんなに単純ではないかもしれないが、いずれにしろ豊富なエネルギーがあればいろんな対抗手段を使うことができる)。

もちろん、力というのは常に諸刃の刃であり、思わぬ副作用を伴うことが多い。LENRがいかにクリーンな分散的エネルギー源であったとしても、その力が強すぎれば、社会に深刻な動揺をもたらしたり、地政学的な大変動を引き起こす可能性はある。だが、ここから先は今の時点では私にはもう何が起こるのかうまく想像できない。もう、なるようになるしかないとしか言えないのが正直なところである。

昨日、Xでポストした通り、もう日本がいま再エネやBEVを増やそうと増やすまいと結局のところそんなに結末は変わらないのかもしれない。投げやりに聞こえるのは承知している。しかし、それが現実なのかもしれない。それが日本にとって希望なのか、絶望なのか、自分でもよくわからないのだが。




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