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常温核融合の復権

昨日、私は核融合発電について書いた。確かに核融合反応は巨大なエネルギーを放出するので、それを安定的に引き起こして、電気に変えることができれば素晴らしい。

ただ、私はソフトウェアエンジニアとしてシステムを長年観察してきた経験から言って、核融合発電はどうにも工学的に筋が悪いなと思わざるを得ない。核融合炉の仕組みが複雑すぎるのである。プラズマを1億度まで加熱しなければならない一方で、そのすぐ外側では超電導磁石をマイナス200度以下に冷やさなければならない。反応炉の周りに無数のサブシステムが取り巻いていて、それが調和を保って完璧に動かないとシステム全体が止まってしまうのである。

従来の原子力発電所核分裂炉)も同じような問題を抱えているが、核融合炉は輪をかけて複雑だ。それが過去数十年間、いくら挑戦してもいまだに核融合発電に成功していない理由なのである。

こういうシステムは重厚長大になりがちである。つまり巨大すぎて参加できるプレイヤーが限られてしまう。そうすると市場での競争が起きにくくなり、技術の改良速度が遅くなる。原発が再エネにコストで負けたのはそれが根本的な原因だろうと思う。

核反応では、物質の一部を直接エネルギーに変換する。したがって、通常の化学エネルギーに比べると同じ質量あたり文字通り何桁も放出するエネルギーが違う。核エネルギーはほしい。できれば放射能を持たずに手軽に人間の取り扱いやすい形で。

そんな都合のいい技術があるわけがないと思うだろう。ところが実はあるのである。

常温核融合である。

「何を言っているんだ、解散、解散」と言わず少し私の話を聞いてほしい。

1989年にイギリスのマーティン・フライシュマンとアメリカのスタンレー・ポンズが、パラジウム電極を用いた重水の電気分解で過剰な熱が発生する現象を発表し、常温核融合だと主張したものの、追試試験で再現性が確認されず、最終的には主流の科学者たちからは詐欺か疑似科学のように扱われるようになってしまった。

しかし、その後も、ごく限られた数の科学者が細々とこの分野の研究をつづけた。その結果、最近では、水素を投入することで安定的に熱を発生させることができるようになりつつあるのである。熱量が化学反応と比べて何桁も多く、核反応として考えようがないという。反応の後に、新しい元素が発生している(核転換)ことも報告されているようだ。「常温核融合」という名前に否定的なイメージが結びついてしまったので、いまは英語圏では、LENR(Low Energy Nuclear Reaction, 低エネルギー核反応)と呼ばれることが多いらしい。

安定的に熱を発生させられるようになって、これを熱源として売っていこうとするスタートアップも出てきた。実は日本にもクリーンプラネットという会社があり精力的に活動しているようだ。LENRの歴史や現在の状況はこの記事が参考になる。

www.yomiuri.co.jp

どうやら電極にある金属のナノスケールの微細的な構造が反応のカギらしい。本来、水素原子はプラスに帯電しているので、近づくと電気的に強く反発しあう。この強い斥力に逆らって融合させるためには高温・高圧な環境が必要だと信じられていたのだが、特殊な構造をもつ金属の中に水素が入りこむと、何やら量子力学的に不思議なことが起こって、あら不思議、融合してエネルギーを出すことがあるらしいのである。適当なことを言っているように聞こえるかもしれないが、実際、まだちゃんとした理論が確立していない。それゆえに、主流の学会からはいまだにキワモノ扱いが続いているようだ。

しかし、私のセンサーはビンビン反応している。LENRは、将来とてつもない可能性があるのではないかと。なぜなら、これは(おそらく)核反応であるにもかかわらず、大学や企業で簡単に実験できるような種類の反応であるからだ。核分裂炉や従来の高温核融合炉とちがって、研究開発の敷居が比べ物にならないほど低い。有望だと人々が信じれば、多くの企業が参入して、市場での競争を通じて技術革新が次々と生まれる可能性が高い。これは人類にとっては勝利の方程式なのである。そうやって半導体チップも太陽光パネルも品質が大幅に向上する一方で価格は大きく下がった。常温核融合でも同じことが起きるのではないだろうか。

これは分散的な熱源・電源になりうる。核融合反応においては、ごくわずかな量の水素が膨大なエネルギーを放出するので、まるで乾電池のように製造時にわずかな量の水素を注入しておけば、機械が壊れるまでの数十年、エネルギーを出し続けてくれるなんていうこともありうるかもしれない。なんと「燃料補給」から人類が解放されてしまうのだ。

LENRが仮にそこそこ近い未来(10年~15年後)に実用化してしまうと、いままで私が信じてきた再エネを中心とした未来図はかなり大きな修正を迫られることになる。特に日本にとっては救世主になる可能性がある。日本はいまのままでは再エネ導入はあまり進みそうもないし、原発の新設もできないからだ。

常温核融合騒動のトラウマで、主流の学界やマスコミからはまだほぼ無視されているLENRであるが、人類史を書き換えるような、エネルギー界のダークホースになりうると思う。今後も注視していきたい。




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