A RESEARCH AGENDA FOR THE ECONOMICS OF TRANSFORMATIVE AIという論文を読んだ。
「変革的AI(Transformative AI, TAI)」とは、歴史的平均の3~5倍以上の持続的な全要素生産性の成長をもたらすAIのこと。全要素生産性の成長とは、技術進歩、経営効率の改善、組織効率の向上など、労働や資本といった投入量の増加では説明できない、質的な変化によって生産の伸びがもたらされることを指す。
この論文は、変革的AIについてポジションを取って何かを主張しているというより、AIによる社会システムの大変化に備えて、「人類にとってはこういう重大な問題が起こりえるよね?」という論点を整理したものだ。重要なものから研究していこう、と。そのありうる研究テーマを整理した論文になっている。
例によって私は、こういう論文の要約が苦手なので、AIに助けてもらう。今日は NotebookLM に頼る。 変革的AIに関する重要な研究課題として次の9つが挙げられている。
- 経済成長: TAIが成長率やボトルネック、資本の役割をどう変えるか。
- 発明・発見・イノベーション: 科学的発見の自動化や分野横断的イノベーションの促進。
- 所得分配: 労働市場への影響、賃金・雇用水準、富の不平等、社会保障制度の適応。
- 意思決定と権力の集中: 産業界や経済全体における権力集中のリスク。
- 地経学(Geoeconomics): 国際関係、軍事バランス、世界的な不平等の再定義。
- 情報・コミュニケーション・知識: 真実と偽情報の拡散、質の高い情報へのインセンティブ設計。
- AIの安全性とアラインメント: 経済的利益と壊滅的リスクの均衡、社会厚生との整合性確保。
- 意味と幸福: 労働が経済的必要性でなくなる世界での人間の目的意識と幸福。
- 移行期のダイナミクス: 急速なAIの進化と、人間スキルや制度の緩やかな適応との間のミスマッチ管理。
これはAIの影響範囲としては十分に網羅的で、AIに関わる問題を考える上でたいへん参考になると思う。こうやって見るとどれもが非常に重要な項目ばかり。あえて言えば、「3. 所得分配」「4. 意思決定と権力の集中」「5. 地経学」「7. AIの安全性とアラインメント」あたりは、あらかじめ十分に考えて準備しておかないと人類の存亡の危機になりかねないと思った。
研究手法としては次のようなものが提案されている。
- 理論的アプローチ
- 経済指標のダッシュボード開発
- 新しい厚生指標の策定
- AIエージェントによる経済シミュレーション
- シナリオプランニング
「2. 経済指標のダッシュボード開発」というのは、経済の各分野でのAIの発展状況をリアルタイムに監視する仕組み。そして既存秩序を破壊しそうな振舞いを見せ始めたら政策当局が早めに手を打てるようにしておくためのもの。「3. 新しい厚生指標の策定」というのは、AIによって生産が全自動化されたら、財サービスの価格がほぼゼロになり、そうするとGDPもほぼゼロになってしまうので、実際の経済的厚生状態を測る指標を開発しておこうね、という話。「4. AIエージェントによる経済シミュレーション」は面白い。たしかにAI時代らしい手法。経済におけるプレーヤーとして振舞うAIエージェントを多数実験環境に作っておいて、その相互作用の結果、経済状態がどう変化するか観察するという手法。これも実験経済学の一部なのだろうか。
この論文は、AIと経済の接点を考える上でとても参考になる。こうした問題意識に沿って、私もいろいろ調べていきたいし、また気になる論文が見つかれば読んでいこうと思う。