ここ数日、ずっとAIと人類の未来について考え続けている。
繰り返しになるが、私はAIは最終的には人間の仕事をすべて奪うことになると思う。多くの場合、AIはあなたの助手の顔をして職場に入ってくる。部分的にあなたより仕事ができる部分があるので、そのタスクを任せる。AIはその後も進化を続ける。改善するたびに新しいタスクができるようになる。そうやってあなたはどんどん「まだAIにはできない仕事」に追いやられていく。そして最後にはAIはすべてのタスクであなたより仕事ができるようになり、あなたは失職する。
この現象を何と呼ぶか。「仕事を奪われる」と考えるか。それとも「仕事から解放される」と考えるか。もしベーシックインカム(BI)が実現していれば、それは仕事からの解放だろう。BIの実現可能性については、いままでも何度も論じたので今日は論じないでおく。それは政治的に実現がたいへん困難だが、いずれ実現するだろうとは私は信じている。なぜなら、AIの進化を止めないかぎり(それはたいへん難しそうだ)、BIが実現しないと人類は滅びるしかないからだ(大多数の人たちが失業して飢餓に陥るため)。
今日は代わりにこの現象を「雇用と技術のデカップリング」という側面から考えたい。AIが仕事を人間から奪うことには、別の効果もある。人間はある仕事をこなすのに長い時間をかけて熟練していく。だからベテランの労働者を全く違う種類の仕事に配置転換するのは難しい。これを雇用(人間)と技術がくっついている状態と考えることができる。しかし、AIが一度、その仕事を人間から奪ってしまえば、その仕事を別の形に転換するのは容易である。AIに新しいスキルを覚えさせるのはずっと容易だからだ。これを「雇用と技術のデカップリング(切り離し)」と呼ぶことにしよう。
CO2などの温室効果ガスの増加により気候変動が加速している。CO2の削減のためにはEV化・再エネ化が急務。しかし、EV化・再エネ化は遅れている。これは化石燃料・自動車産業の抵抗のためと考えてよい。彼らは、自分の利益のためであっても、雇用の確保を理由にする。上で述べたように人々を他の産業に振り向けることはそれほど簡単ではない。だから雇用の維持を持ち出されると政府も耳を傾けざるをえない。そうやって化石燃料産業や内燃機関車を作る自動車産業は温存されやすい。このように雇用と技術が結びついていると社会的に最適な技術を選択するのが難しくなるのだ。
「雇用を維持する」という理由で多くの産業で古い技術が温存されている。そこでAI化による「雇用と技術のデカップリング」が起こるとどうなるか?AIに対する指示を変更するのは簡単だから、環境に優しく経済的に合理性のある新技術を採用しやすくなる。
これは、知能爆発(intelligence explosion)の成果をフルに活かすための必要条件でもあるのだ。知能爆発とはAIが自分の知能を自ら改善することで、能力が倍々ゲームで増大していく現象のことである。知能爆発が起こると技術が極めて速く改善していくので、人間がスキルをもはや学習する意味がなくなる。AIが開発した技術を覚えたところで、すぐに陳腐化してしまうからである。「雇用と技術のデカップリング」によって、人間と仕事を切り離すことで初めて、AIは知能爆発と同じスピードで生産活動の改善ができるようになる。いままでは生産において人間の学習速度がボトルネックだったのだが、それから解放されるからである。
昔は人々は何世代にもわたって同じスキルを使って仕事ができた。しかし現代に近づくにつれて、若い頃に学んだスキルは、高齢になって退職する頃には陳腐化することが増えた。一つのスキルの通用する期間が30年だったのが、10年になり、3年になりと、どんどん短くなってきている。技術進歩が加速しているからだ。知能爆発はそれをスキルの通用期間を極限まで短くしたものと考えることができる。もはや人間は必要スキルの変化についていけなくなるため「雇用と技術のデカップリング」を通じて仕事を人間から切り離して技術進歩を反映しやすくする必要があるのだ。