米国の経済学者・ジェフリー・サックスの The Ages of Globalization を読んだ。
これは人類誕生から現代にいたるまで、グローバリゼーションという視点で世界史をとらえなおした意欲作である。世界史から政治史を削除して、主に通信・交通・交易に焦点を当てたダイジェスト世界史と言っても良いと思う。
彼は7つの時代に分けて論じている。
The Paleolithic Age(70,000-10,000 BCE) 旧石器時代。アフリカから出発した現生人類が欧州やアジアに広がっていった。狩猟採集時代。
The Neolithic Age(10,000-3000 BCE) 新石器時代。農業の始まり。人々は定住し村ができた。宝石や貝などの貴重品を長距離交易。
The Equesterian Age(3000-1000 BCE) 騎馬時代。馬の家畜化。馬は、運搬用・乗用として大活躍。同時期に発達した銅・青銅という冶金技術を広めるのにも大活躍した。
The Classical Age(1000 BCE-1500 CE) 古典時代。ローマ帝国や漢などの古典的帝国が繁栄。
The Ocean Age(1500-1800) 大航海時代。最初はスペイン・ポルトガル、遅れてオランダ・英国・フランスなどが世界に航海し交易拠点や植民地を広げていった時代。
The Industrial Age(1800-2000) 工業時代。蒸気機関の普及とともに始まった。最初は英国、のちに米国という世界的な覇権国家が誕生。
The Digital Age(Twenty-First Century) デジタル時代。デジタル化によってグローバリゼーションが加速。先進国と発展途上国の所得格差が縮小するも、国内での貧富の格差は拡大。米国の相対的衰退と中国・インドの台頭。
また経済は地理・技術・制度の3つの要素の相互作用によって成長または停滞すると述べている。そして現代においては「持続可能な開発」が重要であると説く。単なる経済的繁栄だけでなく、貧富の格差が少なく、環境の持続可能性があることも重要であると。
この本を読んで気づかされたのは、グローバリゼーションは20世紀になって突然始まったものではなく、人類誕生以来ずっと続いてきたものだということ。アフリカで誕生した人類が長い長い時間をかけて欧州に渡り、オーストラリアに渡り、アジアに渡り、やがてアメリカ大陸まで到達した。これ自体も立派なグローバリゼーションである。しかし、最初のうちは100年単位のごくゆっくりした変化でしかなった。それが馬に乗って移動するという「イノベーション」により、遥かに速く移動できるようになり、広域の帝国が成立する原動力になった。化石燃料を使って船舶や鉄道を動かせるようになり、ますます人々は迅速に移動でき、大量の荷物を運べるようになる。まだ電信・電話が発明され、遠距離の通信が一瞬でできるようになった。20世紀に入っては、飛行機によってさらに移動速度が速くなり、ラジオ・テレビによって大量の情報が瞬時に伝えられるようになった。21世紀にはインターネットによって情報の流通量は爆発し、リアルタイムに世界中の人々が意思疎通する時代がやってきた。
グローバリゼーション自体は昔からあったけれども、時代が最近になるにつれてどんどん変化が激しくなってきているとは言えると思う。
ジェフリー・サックスは米国人であるにもかかわらず、米国の帝国主義的な態度には厳しく批判的である。彼は米国の相対的衰退していき、中国・インドがこれから台頭して世界は多極化すると主張している。彼はいまいろんな場で時事問題についても活発に発言しているが、そういう彼の世界観を知る上ではとても良い本だと思った。
まだ日本語訳が出ていないようだ。英語で200ページちょっと本なので、それほど長くなく、読んで読めないこともないと思うが、時間がない人は、
- Preface
- 1 Seven Ages of Globalization
- 9 Guiding Globalization in the Twenty-First Century
だけ読めば十分な気もした。Prefaceと1 Seven Ages of Globalization が本書全体の良い要約になっている。9 Guiding Globalization in the Twenty-First Centuryがではこれからどうすべきかというサックスの提言になっている。