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民主主義を守るために本当に必要なもの

面白いインタビュー記事を読んだ。

globe.asahi.com

エマニュエル・トッド曰く、自由貿易は民主主義を破壊すると。民主主義を守るためには保護主義に戻れと説いている。

グローバル化自由貿易の進展を原動力にしている。グローバル化自由貿易と考えても差し支えないだろう。自由貿易をやめるということは、グローバル化をやめるということだ。しかし、そんなことが果たしてできるだろうか?私はそんなことは無理だと考えている。グローバル化は不可逆のプロセスであり、今後も進み続ける。ただこの十数年の進展速度が速すぎて、社会の適応が難しくなっている。グローバル化に対する反論はその反動にすぎない。

エマニュエル・ドットの主張はもっともらしい。だが私には懐古主義の一つの変形に過ぎないように思える。

彼の文章を引用しながら、私の考えを述べていこうと思う。

ドットは、自由貿易は、経済的には合理性があることは認めている。しかし以下のように言う。

「問題は、完全な自由貿易は国内で格差を拡大させることです。エリート主義、ポピュリズムによる衝突も引き起こします。自由貿易に賛成するか、反対するかではなく、どの程度の自由貿易なら社会が許容できるかという話なのです」

彼の念頭にあるのは、製造業が空洞化した先進国、特に米国の今日の姿であろう。1990年ころに米ソ冷戦時代が終わり、世界市場が統合された。中国などの発展途上国の安い労働力を求めて、先進国の製造業が移動していき、その結果、先進国の国内製造業は衰退した。米国では製造業従事者数は、1979年には2246万人だったが、2024年には1502万人に減っている。製造業には比較的学歴の高くない人たちも従事することができ、中程度の賃金を安定して稼ぐことができた。そういう人たちが米国では確実に減っていった。 製造業は地方に多く立地しており、地域経済を地盤沈下させ、コミュニティの荒廃を招いた。

一方で米国は金融業とITで栄えた。金融とITは莫大な富をもたらしたが、その恩恵を受けたのは、主に投資家と従業員たちだけだった 金融業とIT産業の従事者は高学歴のエリートが多い。もともと賃金が高かったが、それがさらに増えた形になる。その結果、国内の貧富の差が拡大した。

確かに自由貿易は、先進国では、学歴が高くない人たちの割の良い仕事を減らす傾向はある。しかし一方で安価で良質な製品を世界中から手に入れるというメリットをもたらした。これを味わった人々が、過去のような品質が悪く高い製品に満足できるはずがない。

まず、保護主義ナショナリズムを切り分けなくてはなりません。保護主義ナショナリズムではないと、私は考えています。保護主義は現時点では民主的だが、ナショナリズムは違います。保護主義は純粋に経済的なものですが、ナショナリズムは『力』です。ナショナリズムの深層には、自らが世界の中心であるという考え方があります

この考えには無理がある。自由貿易自体は、経済全体に大きなメリットをもたらすので、これに反対するためには何らかの政治的なイデオロギーが必要だ。それがまさにナショナリズムなのである。「製造業が繫栄していた過去」に対する憧憬をかきたて、「もう一度偉大な国を建設するのだ」というナショナリズムがなければ、今の時代、保護貿易は推進できない。

ただ、ドットの問題意識は間違ってはいないと思う。確かに、自由貿易は貧富の差を広げるし、社会を不安定化させるかもしれない。ただ、本来ならば国家内部の再分配政策によって対応すべきことなのである。国民経済全体は確かに豊かになっているのだから。しかし、カネを持つ勢力(大企業・富裕層)は政治資金の提供を通じて政治力も持つので、再分配政策がうまく行われない傾向がある。もともと国家の介入を嫌う米国において、その傾向が特に顕著である。

仮に保護貿易を実現できたとしても、製造業が栄え、中所得者層が厚く、社会が安定・繫栄する「古き良き時代」は戻ってこないだろう。なぜなら技術体系が変化してしまったからだ。過去においては、製造業や鉱業など、学歴が高くなくても比較的良い収入が稼げる仕事が多くあった。しかし、IT化(これとグローバル化は表裏一体である)は、人々の知的能力を増幅するテコの役割を果たし、高学歴者たちの賃金を大幅に増やした。この傾向は今後AI化の進展に伴いますます加速するだろう。

我々が本当に取り組まなければならないのは、この「ますます限られた人たちだけがますます高賃金の仕事に従事し、それ以外の人たちの仕事がなくなっていく」という経済構造の変化への対応なのである。自由貿易は単にその変化を加速しているだけであって、保護主義にしたから元に戻れるわけではない。いずれ強力な貧富の格差を是正するための措置を取らない限り、特に先進国では社会秩序を維持できなくなるかもしれない。社会秩序が崩壊すれば、権威主義的なポピュリストが生まれる可能性が高く、民主主義は維持できない。

貧富の格差を是正するのは、伝統的な累進課税や公的医療保険公的年金だけでなく、ベーシックインカムかもしれないし、何か全く異なるメカニズムも考えられるかもしれない。いずれにしろ、この問題が21世紀のこれからの世界にとって最大の問題になって行くだろう。




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