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羊羹の厚さと降り積もる雪

昔、植草甚一という人がいて、エッセイなんかをたくさん書いてました。

ぼくが彼のエッセイに気がついて読むようになったのは、結構後のことです。

植草甚一全集みたいな感じの本がシリーズで出版されていて、そいつを買って読みました。

ぼくらぐらいの世代、新宿にジャズ喫茶がたくさんあった頃にうろついていたような世代には、ずっと歳が上なんだけど彼の感覚が身近に感じられました。

今は、我が家には本がほとんど無くなり、この全集も綺麗さっぱりありません。

 

いくつか覚えているエッセイがあって、例えば五木寛之が「青年は荒野を目指す」という作品で話題になった時に、主人公がシベリア鉄道でヨーロッパへ行くために船に乗ってナホトカに向かうのです。主人公はボタンダウンのシャツを着たと書かれているのですが、植草さんは「ボタンダウン」てのを知らなかった。そういう時代だったんです。で、知り合いの黒人に「ボタンダウンって何?」と聞いたら、その黒人がシャツの襟の先を指で押さえたので、ああ襟の先をボタンで止めるあのシャツかと理解したとか書いてあるとか、そんなふうに変なことを覚えているのです。

 

どこかに植草さんが行ったときに、お茶と羊羹を出されて、その羊羹の切り方が薄くて、羊羹というのは分厚く切るものだ、とか変な文句が書いてあったのも覚えてます。

今朝、お茶と一緒に食べる羊羹を自分で切りながら、それを思い出しました。

よく思い出すんです、羊羹の厚さ。

ぼくは、あんまり分厚すぎる羊羹は、ちょっと食べるのに辛い気がします。

こんなもんだなと思いながら分厚くはなく切って、ああ、やっぱりこのくらい。

 

羊羹を食べてお茶を啜っているぼくは、今日は外には出ていません。

玄関を開ければ、雪に埋もれている自分の車が目に入り、少し除雪しないと車は出せないし、だいたい自分が出ていく道もありません。

大雪なんです。

現実逃避をしましょう。今日は外には出ません。

明日の朝、たっぷり積もった雪をどうにかしようという気になるまで、ぼくは家から出ないのです。

ということで、ABEMAの相撲中継を三段目から見ています。

 

 

 

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