次の段階の説明の前に、ヘーゲルについて予備知識が必要だと思ったので、解説します。
ヘーゲルの思想の原点にあるものは、新プラトン主義である。3世紀にギリシャの哲学者プロティノスによって創始され、ネオプラトニズムとも呼ばれます。プラトン(紀元前4世紀)のイデア論からの流れを汲む哲学の宗派です。万物は「一者」から流出したものと捉える。写真はプロティノス先生。

そして、修行の方法ですが、究極の真理は認識できず、直観するのみという、後期の親鸞のような態度をとります。
『法身はいろもなし、かたちもましまさず。しかれば、こころもおよばれず、ことばもたえたり。』-唯信鈔文意
「一者」である神については感覚を閉じ,言葉を放棄し「沈黙」のうちにそれと合一しようとする神秘主義です。ほぼ〈禅〉の修行論のようです。
さらに、ヘラクレイトスの唱えた「万物は流転する」というパンタレイ(panta rhei)哲学や、ルネサンス頃から発展した諸哲学、そしてマイスター・エックハルトなどのドイツ神秘主義の豊かな土壌の影響のもとで形成されたものがヘーゲル哲学です。
そこで重要なのが「一者」という用語。生命根元に存在する「一者」が姿をさまざまに変容させて展開されてゆくと考えます。万物は神の、即ち〈一者〉の自己啓示だが、見るものと見られるもの、つまり自己と他者に分裂しています。アウフヘーベン(止揚)と言って弁証法的な思惟と認識の高次化(アップデート)により、その自他の分裂から一者としての自己を取り戻すという思想がヘーゲル哲学です。