一通り目を通したので感想をメモ。機関法務系の業務に関わるのであれば目を通しておいても良いのではなかろうか。
取締役会周りの実態調査や、企業内の担当者との対談や、担当者インタビュー、実務家の弁護士の論考などを通じて、実務レベルでの取締役会の現状と展望を探る、という感じの書籍というのが本書のざっくりとした紹介になるのではないか。企業担当者、この分野の実務経験豊富な弁護士の方々や、研究者に声をかけて実務者研究会を開いているのが信託銀行で、こういうところでも知見を蓄えているのか、という点でも興味深い。
出てくる企業の方々も錚々たる企業の方々ばかりで、そういうところとは縁遠い企業にいる身からすれば、そういう、人的資源*1の豊かさなどが比較にならないようなところで、種々の思考錯誤をされているお話を伺っても、こちらの現在の勤務先*2の現状に対応するうえでどこまで資するところがあるのか、というと正直疑義があるのは否めない。とはいっても、他社事例*3は、やはり経営者には理屈よりも「刺さりやすい」と感じるところなので、こういう形で、ある程度じっくりと話を聞いたものが出るのは、そうした意味では意義のあることなのだろう。
読んでいて感じたのは、ガバナンス系の話では、ある種の「外形主義」が広まっていて、個人的にはその辺りに違和感があるから、ガバナンス系の業務に積極的にならないという側面が自分にあること。その意味で、倉橋先生が次のように述べているのが、印象的だった(もっともこの発言の後で、外形論が必要な場面があることもしてきされれているのだが)。
私はガバナンスに関しては、外形論が大嫌いなのですけれども、
また、同先生が次のように指摘されている点も印象的だった*4。
...社長が次の社長で子飼いの人を選び、それが企業価値向上に資さないサクセッションにつながっているという事例については、そういう会社はそもそも外在的なガバナンス論でどうにかできるものではないのかと思います。そうした会社に対して、外在的・外形的に色々な取組みを要請したり規制を作るのは、実効的なコーポレートガバナンスが必要な会社には効き目がそもそも発揮されず、逆に自律的な取組みをしている会社にとっては規制過剰の状態になり、社会的にはコストばかり発生させるのではないか。
ともあれ、どこか少しでも自社の業務・状況の改善に資する内容があれば良しとするくらいで、本書に接するのが良いのかもしれない。そういう意味で、企業内で機関系の法務に関わる*5のであれば、本書に目を通しておいても良いのではないかと感じる。