一通り目を通したので感想をメモ。企業内法務*1で仕事をするのであれば、目を通しておいても良いのではないか。
コーポレートガバナンスについての入門書を、M&Aの分野で名高い(とこちらは理解する)*2太田先生が、「敵対的買収とアクティビスト」に続けて、岩波新書から出される、ということで、とりあえず買って、目を通してみた。
コーポレートガバナンスとは何か、という問いについては、著者は経営者に対する「規律づけ」が本質であるが、その目的、目的実現のための仕組は、「その時々における目指すべき資本主義のあり方や会社を取り巻く社会・経済の環境によって、不断に変改し続けるものである」としている。本書では、これらの点について、日本だけではなく、主に英米独仏の比較をしながら*3、歴史的事実や最近の事件等*4も踏まえて解説をしている*5。リサーチの広汎さと索引の丁寧さは特筆に値すると思う。
現役の実務家が書かれた本ということもあってか、地に足の着いた感じで、比較的中立的に書かれている印象で、あまり「上から目線」くささも感じず、この種の本としては、相対的に読みやすく感じた。
もっとも、一定の予備知識があるのが前提になっているので、入門という割には敷居はそれほど低くないかもしれない。コンパクトな分量に収めるためにはやむを得ないのだろうが。
いずれにしても、良い本だとは思うので、企業内で何らかの意味で法務に関わるのであれば、コーポレートガバナンスに直接関わることが仮にないとしても、目を通しておいてよいのではないか。
*1:ここでいうのは、機能としてのそれであり、部署名は問わず、また、法務としての業務分野も問わない。
*2:最近ではニデック対牧野フライスの件で牧野側で対応をされたと聞く。
*3:ガバナンスの方向性はアメリカ式に収斂する方向にあると著者は指摘していて、その傾向があるのを否定する気はないが、もともとアメリカ特殊な事情もあってのアメリカの実務なので、どこまで他国に適用可能かは疑義があって然るべきとは思うし、それとは別に、ここしばらくの政権の挙動を見ていると、その傾向がどうなるかは予断を許さないと感じる。
*4:固有名詞も書かれているので、中途半端に省略された結果の分かりにくさがないのも良いと感じた。
*5:個人的には、ロッキード事件がFCPAの制定を通じてコーポレートガバナンスにもたらした影響については、あまり意識していなかったので、なるほどと思いながら読んだ。