掲題の企画を見てきたので簡単に感想等をメモ。
白石先生がtwitter で呟かれていたので、見に行くことにした。法学入門も気になったが、下請法改正を受けて白石先生が改正についてどういうコメントをされるかが気になったので。
本郷で学生をしていたときは、政治志向で、法律志向ではなかったので、法学の授業を聞きに行くのが楽しみという感覚はなかったが、このトシになってそういう思いで教室に向かうというのはなかなか味わい深いな、と思いつつ、本郷三丁目から教室に向かう(学生の頃は小田急線沿線だったので根津駅から弥生門経由だったが)。
一番乗りだったようで教室の後ろの方に座る。主たる聴衆ではないだろうから。21番教室は、椅子部分が新しくなったようだった。ほどなく先生が来られる。てきぱきと準備をされる。インカムをされていたのが印象的*1。こちらはなぜかクセ強バッジを持って行ったのでそれと企画のチラシを21番教室で写真に撮ってみた。

今回は2部構成。10時台と11時台にわかれる。これは安住さんのラジオ番組に習ったとのこと。時間厳守でしっかり間に休憩をはさんでおられたのはさすが、というところ。
第1部はわりに普通の法学入門というところだろうか。大谷選手の某プレーを皮切りにルールに基づく判断と、立証責任(証明責任)との関係についての議論、その延長線上での公益通報者保護法の改正(3条3項)での議論が繋がっていて、そこから、道垣内先生の理論を題材にした、言葉と論理構造の関係に話が及び*2、最後に法学学習の順序まで話が繋がっていったのは、拝聴していて個人的には面白かった。ただ、こちらが一応法曹資格者だから理解できた部分があったものと推測され、その点が本来の聴衆であるはずの予備知識のない方々にどう映ったのかはよくわからないが。
質疑と休憩をはさんで第2部へ。休憩の間に、プロと思われる方々(研究者または実務家)が入ってこられるのに気づく。
第2部のお題は、下請法改正と法学*3。下請法とフリーランス法が独禁法の優越的地位の濫用規制の補完規制となっているとの指摘は、言われてみるとなるほどというところ。企業法務関係者の注目を集めている原因についていくつか指摘いただいた中では、個人的には3条書面等の日常対応が必要になる点が大きいと個人的には感じるところ*4。下請法が大学の法学教育の中で関心を集めなかった理由について、裁判になる法律が重要という考え方の下で、下請法は、裁判で争われない勧告による執行が中心のため、重要視されてこなかったという点の指摘は、個人的には考えたことがなかったので、なるほど、と思う。そのうえで、これまでの独禁法・下請法をめぐる歴史を振り返って、競争をなくす行為を規制するというアメリカの競争法の考え方からすれば重視されない*5、中小下請け保護の要請が、優越的地位濫用規制が既定の精緻さゆえに機能不全になる中で*6、代替的な手段を通じて図られるようになる*7という歴史の振り返りがあって、これも非常に興味深く感じた。
そのうえで、下請法の基本構造の解説を踏まえて、今回の改正のポイント(企業区分に従業員数を追加/適用取引に発荷主からの運送委託も追加/価格転嫁の推進/手数料控除後満額が得られる形の支払方法の推進)についての説明がなされた。そのほかにも言葉の問題もあるということでそちらについては、別途公表予定とのことなのでそちらを期待したい。今回の改正について、意義深いとしつつも、規制が複雑になりすぎないように注意する必要があるというご指摘は納得するところ。既に十分複雑になりすぎている気がするが。
その後の質疑では、実務家の方からの従業員数の扱いのついての質問があり、7月に予定されているガイドラインなどをパブコメに出すあたりで、手掛かりが得られるのではないか、という指摘と、「常時...」という表現は、他の法律でも使われているので、それらの法律の中での解釈論を参考にできるのではないかという指摘は、ここからの実務をするうえで参考にしたいところ。こちらも実務めいた質問は企画の趣旨に反するので、異なる観点から質問させていただいた。
久しぶりに大学の教室に座ってメモを取りながら一生懸命授業を聴くというのは新鮮な経験であった。白石先生には感謝申し上げる次第。