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答えのないリーガル的分野の歩き方 / 渡邊 満久 (著), 田中 陽介 (著), 西尾 暢之 (著)

一通り目を通したので感想をメモ。

 

「はしがき」での表現を借りれば、本書は次のような本であるとのことである(手打ちなので強調表示は再現できていない。)。

本書は、昨今増えていると思われる、答えを出しづらいリーガル的な領域における、価値判断を伴う対応や意思決定の仕組み(ガバナンス)づくりを目指す方々のために、考え方の一つの標準のようなものを提示しようとしたものである。

「リーガル的な領域」とは、従来から「法務」(その意味はさておき)領域とみなされてきた領域以外の分野、ESGとかサステナとかAI等デジタルテクノロジーに関する倫理等のあたりが想定されているようである。これらに関する意思決定の仕組みづくりについて、ここでいう「標準」の意味内容は不明確に感じる。ともあれ、それが何であれ、本書で示されているものが、それに値するかは、直ちに判断しかねるが、少なくとも、一つ以上の考え方が示されているのは事実だろうし、その限りで読者に示唆するところが何らかの形で本書に含まれているであろうことは間違いないのだろう。

 

本書は4章構成。

序章で問題意識が示され、第1章で、考え方のアプローチが3つ(機能的アプローチ、原理原則アプローチ、コモンロー的アプローチ)示される。言われてみればというところもあるが、仮に自明に見えたとしても、こういう形で言語化されたのは相応に意義があるのだろう。

第2章では、第1章とともに後半2章の分析の前提として、ステークホルダー論と日本論の接合が試みられている。まあそういうものかもしれないと読むが*1、中根「タテ社会の人間関係」とか出てくると、今なおこれが出てくるの?という疑問を抱いた。

第3章、第4章は、最初の2章の内容を実践する形で展開される。第3章ではAIガバナンスが、第4章がルール創造とガバナンス体制構築がそれぞれ説かれる。そういう見方はできるよなと思いつつ読む。

 

論じ方には興味深いものがあると感じる反面で、なんとなく釈然としないものが残った。それぞれのアプローチが有効に機能し得る場面が存在することは否定しないものの、常に妥当する訳ではなく*2、使えるところ、使えないところがあるはずなのに、そのあたりについての言及が見受けられないから、うまく機能したところだけ集められても...という感じがした。

 

ともあれ、取り組みにくい事柄にアプローチする方法についての示唆を与えてくれる可能性があるのも事実なので、読んでおいてもよいのではないかと感じる一冊。

 

 

 

 

*1:今時の生成AIでもこの程度なら書いてくれるのではないかと思ったのはさておき

*2:コモンロー的なアプローチについて言えば、おそらく場当たり的な議論になる可能性は排除しきれず、結果として、予測可能性が高くなりづらいことは、使う場面を選ぶ一つの理由になるのではないか。




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