例によって目を通した範囲について、呟いたことを基に箇条書きで感想をメモ。
- 判例速報。
会社法の簡易株式交換手続に対する株主の反対通知と個別株主通知の時期は、個別株主通知については、株主側でコントロールしきれない部分が残るように思うので、酷に過ぎないかという気がする。
労働判例の地方公務員の自殺にかかる県の注意義務違反の有無の判断と公務災害にかかる認定基準の関係は、行政の認定と民事訴訟とでは基準が違うから結論は納得し得るが、そもそも基準が違っていいのかという気もする。
独禁法事例速報の監視受託者として日本の弁護士及びエコノミストが選任された事例は、管理受託者として何をなしうるのか(制度面と実態面で)、そしてその内容が問題解消措置として適切なのかが気になった。
知財のパテントリンケージにおける特許権者による情報提供と不競法の虚偽告知該当性は、パテントリンケージという制度自体知らなかったので、そういう制度があるのかと思いながら読んだ。
租税の土地建物の一括譲渡に係る消費税法施行令45条3項適用の可否は、評釈での批判に賛成。 - HOT issueはDXにおけるデータ利活用とプライバシー。結論ありきで辻褄合わせを仲間内でしているように見えたけど、それでも気になる点を2つ。
リスクベースアプローチという話が出て、それ自体は理解不可能ではないけど、換言すれば、リスクが低いと判断したら対応が後回しになるという意味に見えた。そういう結果になりかねないけどいいのだろうかという事が気になった。
もう一つ。エビデンスというかデータに基づく云々については、採るべきデータが取られて、それが入手可能かつ検証可能で((数字は嘘をつかないといわれるが、そこからどういう意味を読み取るかについては嘘の入る余地があると感じる。))、信頼性も高いことが前提だが、今の行政でそれが確保されるのか諸々見てると疑問。そこが確保されないと、ご都合主義のつじつま合わせの隠れ蓑にその美名が使われると思うのだが*1。 - 特集はコンテンツIPビジネスの支援と留意点。
イントロのあとはUGCに関する近時の動向と課題への対応。景表法での対応は言われてみると確かにそうかと思った。
文化芸術団体に期待される役割—働く環境の改善のためには、芸能従事者の就労環境について。重要な話だと思う。改善傾向にあるのは良いことだろう。
メディア展開と著作者人格権は、問題の構造がわかりやすく示されていたと思う。NDC禁止にしたうえで作品版DBSとか作ったらどうなるだろうかと感じた。
2次創作への対応は、「お目こぼし」をGLで可視化するしかないんだろうな、と感じた。
ネタバレサイトの侵害行為への対応は、ネタバレ行為自体を不法行為としてとらえようとする発想は、近時の裁判例などからすれば、なるほどと思う反面、結構大変そうだなと思う。
特集はこのあたりの今時の状況を垣間見ることができるものとして有用なのではないかと思う。 - 霞が関インフォの中小企業等協同組合法が定める団体協約制度については、発想は理解できるものの、団体内での意向の集約が容易にできるのか、疑問でその意味での制度の使い勝手は疑問が残った。
- 地方創生に向けた官民連携の法実務の地方創生におけるPFI・コンセッションは、ない袖は振れないというところから適用範囲が広がっているものと理解した。それでもなお、そういう形をとることが適切かどうかの議論なしに使うものではないと感じる。
- 書評。
「契約法を考える」の書評は、この本をよまないとと思わせてくれるものだった。こちらは、件の本については途中まで目を通したものの積読のままになっているので...(汗
「経済安全保障と国際法」の書評は本書の意義を昨今の状況から説明していて、このあたりの知識のないこちらにもわかりやすかった。 - 海外法律情報
地方消滅? 人口減少に直面する韓国は、人口減少で地方が消滅の危機、というのは本邦とも共通するところがあるが、かの国での状況を知らなかったので、興味深く感じた。
ロシアの外国人の滞在・居住に関する規制の強化は、この状況でそもそもかの国に行こうという人がどの程度いるのか、労働力不足の中で規制強化をすることで労働力不足が加速するだけなのではないかと感じた。 - 家庭裁判所の現状と展望の養育費支払の実効性確保についての現状と展望は、制度は整ったものの、手元不如意の抗弁は利きそうなので、免許類の更新と結びつけるなど不払側本人に実害が生じる形でないと、実効性に限界があるのではないかと感じた。
- 広報と法務の広報・PR領域に潜む法的リスク・コンプライアンスリスク(2)—メディア対応に関するリスクは、リーク報道の難しさを感じた。やらないほうがいいのだろう。きっと。
- 時論のウェブサイト等の旧部落所在地情報の差止めと差別されない人格的な利益は、結論としてインターネット上に情報を載せるのは認めてはまずいと思っても、どういう論理構成に基づくべきか、対立利益との調整をどう考えるかが難しい中で、差別されない人格的な利益を認めているのはすごいと感じた。
- 景品表示法における確約手続の実務的考察—第1号事案を踏まえては、被害回復措置が重視されているとの指摘はなるほどと思う。当たり前と言えば当たり前だけど。
- 判例詳解の現行の法令が同性間の婚姻を認めていないことの憲法適合性は、結論はさておき、その結論を導く論理構成も裁判所間で差が出るあたりで難しい判断だったのかなと感じた。
- 時の判例の租税特別措置法施行令の件(詳細略)は、当事者の関連会社が実名表記されていて結果的に当事者が推定されてしまって、仮名化の意味がないのではないかと感じた。この調子で判決の全件公開とかして大丈夫なのか気になった。
- 判例研究。
経済法の株式会社博報堂刑事被告事件は、ストレートな入札談合という印象。入札参加者が他の参加者の下請けになるとか参加者同士の事後的なJV 組成は禁じないと駄目なのではないかと感じる。
商事の代表者共通の利益相反寄付と取締役の任務懈怠責任は、評釈末尾の指摘は、直ちに賛成できるかは不勉強で分からないが、一理あるのではないかと感じた。
退任慰労金減額に関する株主総会決議と取締役の損害賠償責任は高裁判決への評釈。問題の総会の後の総会での意思決定を問題の総会時点での総会の意思を判断する際にどこまで勘案できるかについては疑問。株主構成が仮に同一でも都度招集され、議事が終わると散会するところで継続的に意思を観念可能なのか疑問に感じた。
受取人変更後の保険金受取人の実在性—保険金受取人を特定するための判断基準は、保険の実務を知らないものの、保険者の負担を考えると評釈での評価はあり得るかなと思う。
予備校講師に対する業務委託契約非締結の不当労働行為該当性は、新たな契約の非締結の不利益行為該当性についての評釈最後での指摘になるほどと思う。
労働契約法19条2号の「更新」の解釈と同条の射程—東光高岳事件は、評釈での、実務における有期労働契約の位置付けの変容についての指摘にはなるほどと思う。
立退料について消費税法上の「資産の譲渡」の対価に当たらないとした事例は、評釈での分析に鋭さを感じた。評釈最後での通達の見直しが事態の打開には必要なのではないかと感じた。
韓国の裁判所を指定する国際裁判管轄合意を専属的と判断した事例は、個人的にはこの辺りが争いになった事案を経験したことがないこともあり、管轄合意の専属性の判断の検討が興味深い。
*1:データに基づく議論というのはそういう表現だけ見ると尤もな気がするけど、あってしかるべきデータが存在して、しかもそのデータが信頼できることが前提にないとただのまやかしになりかねないと思う。ついでにいうとデータが存在するというのは、存在するデータがアクセス可能でなければならないし、信頼できるかどうかは検証可能でないといけない。最近の日本の役所みたいに、何かあってもなかなか情報を公開しないとか、ややもすると記録がないとかいうところで、データに基づく議論とかできるのかというと素朴に疑問。