一通り目を通したので感想をメモ。上場会社の取締役会を巡る現状の良い鳥瞰というところか。
四大事務所*1の一つ森・濱田松本がビジネスパーソン向け(裏返せば法務担当者向けではない)に開催したセミナーの内容を基に、上場会社の取締役会をめぐる様々な問題について解説したもの、ということになろうか。機関設計、任意の指名・報酬委員会、取締役会実効性評価、役員責任と内部統制、役員報酬の動向、社外取締役増加に伴う取締役会への影響、社外取締役との契約、機関投資家からの要請、有事対応への準備、特別委員会の活用、社外取締役増加による取締役会のミニ株主総会化、等、様々な問題について、平易な表現でポイントを解説している。末尾にソニーグループの取締役会について法務担当執行役へのインタビューも付されている。報酬周りの話は正直これまであまり接していなかったが、それ以外のところは、実務で接するなり書籍・雑誌などで接したところから新しさを感じるものはあまりなかったが、バラエティに富む内容をデータも交えてきれいに、200頁ちょっととコンパクトにまとめているのは、流石、というべきなのだろう。もともとが法務以外の人向けなので、細かい説明やそれぞれの記載の典拠については記載がないが、性質上やむを得ないのだろう。もっとも平易な表現ということは、役員向けの説明には使いやすいのかもしれない。この手の書籍は、事務所の宣伝目的が主だろうと考えて、新刊では買わなかったのだが、思っていたよりは宣伝臭は少なかった。
一通り読んでみると、改めて、上場企業の取締役会を取り巻く状況の大変さを感じさせるし、それを支える事務方(こちらも含まれるが)も大変ということも感じる。
他方で気になった点もいくつか。
- 仮に取締役会がミニ株主総会化するのであれば、株主総会自体不要なのではないか*2。事前の議決権行使で議案についての採決は開始前に確定している状況であればなおのこと。そこまでいかないのであれば、株主総会にいかなる意義を持たせ、その意義を果たすためにはどういう形が良いのかということを個社の状況に応じて考える必要があると感じた*3。
- アメリカの実務が「グローバルスタンダード」という前提で議論が進んでいるが、それは本当なのかというのも、不勉強で良くわからないし、仮にそうだとしても、かの国の実務のすべてを取り入れる必要があるのか、検討の余地があるのではなかろうか、その意味でアメリカ以外の国、例えばイギリスやフランスあたりとの比較検討があってもよいのではないか*4。