TL上で情報に接して興味を持ったので購入し、一通り目を通したので感想をメモ。目を通しておいて損のない一冊と感じた。
社会学者の著者の三冊の研究書の内容に基づき一般向けに書かれた本書では、「論理的思考」というのは、洋の東西を問わないものと根拠なく思いがちだが、そうではないというと指摘しており、価値観に紐づいた複数(具体的には4つ。経済(アメリカ)、政治(フランス)、法(イラン)、社会(日本))の「論理的思考」の型があることが、前記のそれぞれの国における初等教育での作文教育やそこで教えられる作文の構成等を通じて論じられ*1、そして、それらを目的に応じて、いかなる価値を優先するかに基づき、自覚的に使い分けることが説かれている。新書で180頁余とコンパクトなうえに、議論が段階的に進み、所々で従前の議論のまとめもはさまれているので、専門外の社会学の話であっても、読むのはそれほど苦痛に感じなかった。
個人的には、本書での指摘の当否を論じるだけの知見を有するものではないが、少なくとも、仮説または「見立て」としては有益だろうし、それぞれの領域から他領域を見たときにどう見えるか、という点の指摘が特に興味深かった。実際に書かれている批判をストレートにぶつけたら、諍いが生じることは避けがたいようにも見えるため、特段の何かがないと、相互に理解するのは困難なのではないかと感じられた。だからこそ、他の領域に立つ立場からすれば自分たちの立場はこういう風に見える、ということを理解していることは、おそらく、異なる文化を理解することに繋がるのだろうし*2、そうした理解は、異なる領域に立つ相手と話をしやすくするのではないかと感じる。また、日本語が論理的ではないなどというようなよくある見方についても、感情的ではない相応の根拠のある反論を提供してくれるあたりも興味深く感じた。
そういう次第で、目を通しておいても損のない一冊ではないかと感じた。