以下の内容はhttps://dtk1970.hatenablog.com/entry/2024/07/25/230000より取得しました。


外注管理をめぐるエトセトラ

なんのことやら。お久しぶりの#萌渋スペースの為の原稿です。

 

なぜそうなったのかは既に忘却の彼方ですが、お題は、くまった先生からの振りで、ざっくり言って「企業内法務*1における外注管理」というあたり。AIとやらを活用したところで*2、業務量が現状の人員では対応しきれないこと等も生じるわけで、その時の「外注」管理をどうするか、企業の外に所属する生身の弁護士さんand/or弁護士事務所に依頼する際にどういう点に気を付けるかというあたりかと*3

 

例によっていくつかにわけて考えてみる*4*5

  1. なぜ「外注」なのか
    1. 「外注」のメリットとしては、一般的には「外注」先の専門性が活用できるということがあり、今回の検討対象についても同じことが妥当するだろう。他方で、「外注」対象業務の実施過程で得られるメリットは実際に当該業務に従事される「外注先」に蓄積される可能性があり、自社に蓄積がなされないかもしれない。当然のことながら費用も、それなり以上にかかる。これらのデメリット(という表現が適切かはさておき)にも拘わらず「外注」するのはなぜか、という点はまず確認しておくべきだろう。いくつかの理由が想定可能だろう。要するに「外注」で何を買うのか、ということになろうか。以下の理由は競合しうることも付言しておく。
      1. 時間と労力を買う
        業務が溢れたときに、補充で人が採れれば増員もあり得るが、そう簡単に増員はできるとは限らない。外部からの採用は必ずしも容易ではないし、人が来ても「中の人」として業務ができるようになるためには時間がかかるだろう。企業内部での異動も、異動対象足りうる人間がいるのかという問題もあろう。
        そんなこんなを考えると、とりあえず「外注」で当座の業務の需要に対応するということが選択肢として出てくる。
        やや異なる文脈では、M&AのDDなどのように短期集中的に一定の能力のマンパワーが必要な時には「外注」にならざるを得ないことがあるだろう*6
        以上のような例は、極論すれば時間と労力を買う、という形と整理できるだろう。
      2. 仮に内製しても使い道が想定しづらい「専門性」を買う
        こちらは極論すれば「専門性」を買うということになろうか*7。外国法の調査とか、特定の専門分野の知見(知財とか税務とかM&Aとか)についてのサポートを求めるようなケースが想定される。内製し、知見を更新し続けるのが企業内では難しいという意味で前項のものとは区別されるだろう。
  2. 「外注」形態について
    「外注」の仕方にもいろいろなやり方が、特に最近ではあり得るだろう。
    1. 顧問弁護士との違い
      個人的にはその他の形態とどう違うのか必ずしも十分明確ではないように思う*8。顧問をしているボス弁は、事務所の経営者で、特定の顧問先に常駐などするというのはにわかに考えにくいが、その下にいるアソの方が、自社に来られるケースというのはあり得て、そうなると違いが何かは明確になりづらくなるのではないか。
      「拡大ブルペン」で指摘が出ていたのは、顧問弁護士はそれ以外と異なり、自社との関係性が長期にわたるため、自社をめぐる諸々の事柄に対する「解像度」(これが何を意味するかは脇に置く)が異なるだろうということ。まあ、分からないではない。自社と付き合いの長い顧問弁護士だと、経験年数の短い法務担当者よりも自社に詳しかったり、自社の内部との人脈があったりするので*9
    2. 「外注先」からの自社内への受け入れ
    3. 法務受託
    4. オンライン常駐型サービス(チャットとかに張り付く形のもの)
      個人的には、「外注先」からの自社内への受け入れ(要するに事務所からの出向)しか経験がなく、法務受託とオンライン型常駐サービスの経験はないが、これらについては、類型としては大きな差異はなく*10、個別具体的な実態次第で差異が生じる感じなのではなかろうか。
      ただ、実際に自社内に物理的に存在する形を取る場合は、「顔を見せる」ことで、直接または間接に依頼するかもしれない、事業部門側の人間の心理的ハードルが下がる可能性があること、実際に職務を行う弁護士さん自身の中で自社及び従事される業務等についての蓄積度合いが変わること*11、はあるのかもしれない。
  3. 「外注」する業務の選び方
    で、次にどういう業務を「外注」すべきかということを考えてみる。
    1. 「管理できない」業務は「外注」するには注意が必要
      当然のことながら、「管理」できずに、放し飼いになってしまうのは適切ではない。その意味では自分でできない業務を「外注」するのは危険ということもあろう。危険ではあるが、「外注」せざるを得ない時には、より注意を払う必要があるということになるのだろう。
    2. 「外注」しやすい業務、しづらい業務
      「外注」相手が社外であることからすれば、自社固有の事情を知悉していることが求められる度合いが少ない方が「外注」しやすく、そうでない業務が「外注」しづらいということになろう。そういう意味で、M&Aのようなプロジェクトものは、比較してみると、通常、自社固有の事情への知悉はそれほど求められない*12ので、比較的「外注」しやすいことが多いのではなかろうか。
      もっとも、自社固有の事情については、自社との付き合いが長い顧問弁護士などは把握していることも想定可能だろうし、その辺りは実務をしながら、依頼者の企業内法務担当者側から適宜補うことで対応できるということもあろう。
      また、社内での「政治的調整」が必要なものについては、そもそも外注に出せないだろう。
      さらに、自分で手を動かさない業務についてのノウハウは自社内にたまらないので、自社内にノウハウが蓄積することが必須ではないということもいえるだろう*13
  4.  「外注先」の選び方
    1. 「信頼」できない相手は選ばない
      ある意味当然のことかもしれないが、言うほど簡単ではない。土地勘のない分野について依頼をする必要が出た時等は、信頼できるかどうかそれ自体の見極めが困難なこともあろう。
      そうした場合への対処でよくあるものは、信頼できる弁護士に見立ててもらうというものになろう*14。弁護士に同業者目線で選定を依頼することになるわけだが、選ぶ側の弁護士に、弁護士のネットワークや弁護士の目利き力、自社の事情や選定を依頼するに至った事情への理解が不足していると、うまくいかない危険があることはいうまでもない。
      別の手としては、小規模な依頼をしてみて、その様子を見るというものになろうか。前掲の方法との併用もあり得るだろう。そういう用途に供する「案件」が*15、そうそうあるわけではないのが難点だが。
      ちなみに、信頼できるかどうかについては、報酬の請求の場面で分かることが多いと感じる。そういう意味でも案件を依頼してみて様子を見ることに意味があるだろう。
      また、こうした観点での確認と共にコンフリクトチェックもすることになろう。グローバルネットワークのある事務所の場合は、この手のチェックに時間がかかることも留意が必要かもしれない。チェックが終わらないうちは辞任の可能性が残るとものと考えておくべきだろう。
    2. 「管理」できない相手は選ばない
      これも当然のようでいて、貫徹は難しいと感じる。こちらのいうことを聞いてくれないとなると、どれほど能力があっても、自社が「外注」する相手としては適さないということになろう。この辺りは企業側の「身の丈」ということも勘案する必要があるかもしれない。
    3. 「外注」する業務に適した「外注先」を選ぶ
      「外注先」の専門性とのミスマッチを防ぐということになろう。正味どの分野が「強い」か、という点も見極めがしづらいところであろう。依頼しようとする案件の実績の有無を尋ねることでその辺りを見極めるという対応が想定可能だが、訴訟事件ではそもそもの事実関係のところで勝負が決まっているような場合もあり*16、そういう場合は弁護士の「腕」や「専門性」が発揮される以前の話で終わっていたりするので、訴訟事件の実績だけで判断しきれるかは、議論の余地があるのではないかと感じる。
  5.  選んだ「外注先」の具体的な「管理」の仕方
    前置きの方が長くなったけど、実際に「外注先」を選定して依頼をした後での具体的な「管理」について、思いつくことをいくつかメモしてみる。
    1. 親しき中にも礼儀あり
      まずはこの点だろう。金を払えばよいというものではなく、専門家に依頼をする以上は、相応の経緯は払うべきだが、裏を返すとそれ以上の敬意を払う必要はないだろう。他方で、相応の緊張関係も必要だろう。
    2. 遠慮なくものが言える関係を
      双方が言うべきことが言えないようでは依頼の意味がないだろう。表現の仕方は考えるとしても、双方が懸念点や不安点を適時に、円滑かつストレスなしに共有できる関係が気づけないのであれば、「外注先」として適切なのか疑義があると言わざるを得ないだろう。
    3. 期待値は明確に
      特に関係性がそれほどない場合には、期待している内容については、出来るだけ事前に詳細に伝えるべきだろう。時間に関するものであれば、次のアクションや企業内法務側の作業の予定も踏まえて説明をしておくべきだろう。期待値が不明瞭なままで、期待通りのパフォーマンスが得られなかったことを嘆いても意味がないだろう。
      契約審査の場合は、審査基準を明確化することで対応することになろうか。さらに必要に応じて、社内のルールや他部署との業務の切り分け等についても説明が必要になることもあろう。
      最近一部で話題になった特定の会社などの場合はその辺りをきちんと明確化したうえで実施に踏み切ったものと考える*17。裏を返せば、その辺りをやらずにいきなりやろうとしても上手くいかないし、その意味ではそうそうハードルの低い話ではないということになろう*18
    4. 適切なモニタリングの重要性
      モニタリングが必要となるのは、求めるパフォーマンスが得られているかという点と、特にタイムチャージの場合は、費用が想定外に膨らんでいないか、という観点からであろう。
      まずはパフォーマンスのモニタリングという意味では、本来は、打ち合わせなどの際にはすべて企業内法務の担当者が立ち会うのが望ましいのだろう。とはいえ、企業内法務側の事情、特に人的資源に関する制約との関係でそういうことが困難な場合もあろう。そういう場合は、メールなどでやり取りされている内容やそこに添付されているファイルなどに記載のある内容のチェックをすることで、それに替えることになろう。
      それとは別に、費用との関係では、プロジェクトなどであれば、上限を付すなどして費用が膨らまないようにするということはするだろうが、それ以外の場合でも、月次で請求してもらい、その際に個々の担当者の活動明細を添付してもらって、その内容を精査する、というような形で、依頼内容に対して何をしてくれたのか、ということについてのモニタリングはできるだろう。その際に期待と実際のパフォーマンスは費用の掛かり方の間で優位な乖離が発見された場合には、弁護士側との協議が必要となることもあるだろう。
      さらに、特に顧問契約をしている場合には、これらとは別に、必要に応じて、事務所などの上層部と企業内法務の上層部が定期的に話をするというのも、あり得るモニタリングの方法かもしれない。
    5. 「切る」道は最初から明確に
      契約関係からの離脱方法が不明確で離脱がしづらいという状態を避けるべきなのは、どの契約でも同じではないかと思うが、この手の「外注」に関する契約についても同じだろう。もっとも、関係性が長く続いているときには、容易な話ではないのだが。

...と雑駁なメモを書いてみたけど、以上のことを考えると、そう簡単な話ではないのではないか、と感じる。このメモがどなたかのお役に立てばうれしいし、これで萌渋スペースが盛り上がればうれしい限りである。

 

追記)経文緯武先輩のエントリはこちら

tokyo.way-nifty.com

*1:機能としてのそれであり、部署の名称は問わない。

*2:そもそも正味どこまで「使える」のか、というところにも疑義がありそうだが略。

*3:「管理」という表現が、「外注」を受ける先生方からすれば、表現として好ましくないかもしれないが、他に適切かつ分かりやすい表現が思い当たらないので、ここでは使用をご容赦いただければと思います。

*4:以下については、拡大版「ブルペン」(要するに一定の方々との間でのクローズドな形でのDMのやり取り)でのやり取りも踏まえさせていただいている。その場におられた?皆様には感謝する次第。あの場でのやり取りを公開した方が有用なのかもしれないが、クローズドなところだから言える話もあったので、そうもいかないのが難点。

*5:例によっていつものお約束の留意事項の記載ももしておく。本エントリの記載はエントリup時点のこちらの考えであり、時間の変化で推移しうる。また、現在過去未来の所属先とは一切関係がない。さらにいえば、こちらの現在過去未来の行状とも整合していない可能性がある。

*6:以前こういう話を「リーガル土方」と書いたことがあった(汗)。

*7:対外的な「権威」を買うというのを含めてよいのかもしれない。

*8:報酬の支払方法として顧問契約については、月額定額で、一定時間内の相談対応がその中に含まれているから、その範囲内では相談しやすいということはあるかもしれないが、その他の形態でも同様の報酬のアレンジをするれば同様の効果は得られるものと考える。

*9:こうした状況の末に、以前書いたような「老師」系弁護士が生まれることになるのだろう。

*10:コンフリクトの出方が違う可能性はあるかもしれない。

*11:そうした蓄積の有無が、アドバイスの「解像度」の高さに繋がり、その会社に対しては、他との差別化要素になることは留意しておきべきなのだろう。

*12:代わりに同種案件や業界特有の事情(業界特有の規制に関するものも含む)への知見が求められるというのがこちらの体感である。

*13:同種の業務が大量にあって、一定数社内でするからそこでノウハウは蓄積して、残りは外注するという仕分けをすることも一応想定可能だろう。ただし、その場合は同じような契約書でも誰が見るのかで有意な差異が生じないよう適宜の対応が必要になるし、そこには結構な手間がかかる可能性がある。

*14:言うまでもないが、その分の弁護士費用が発生するだろう。

*15:依頼した結果に問題があった場合に何とかリカバリーができないといけない、などと思うと簡単な話ではなくなるはず。

*16:訴訟事件の依頼をする際には、自社の事件と類似する事件の取り扱い実績を聞きたいところだが、その辺りを開示していないこともまだ多い。

*17:別の機会にそういう話を聞いた覚えがある

*18:状況によっては準備なしに始めざるを得ないこともあるかもしれないが、そういう場合を別にすれば、やらないとわからないことがある、などと調子のことを言って、十分な検討もなく始めるのは定見のなさを疑われたとしても仕方がないのではないか。自分たちでやらなくなることについては、ノウハウの蓄積ができなくなり、その部分の能力は劣化することも想定可能だろう。そのために気づくべきものの見落としが生じる等の事態もありうるかもしれない。そうした最悪の事態の際に現場レベルで尻拭いをすることもなく、大所高所からエラそうにご託宣を述べるのは、仮にそういうことがあるのであれば、いかがなものかと、こちらとしては、思わざるを得ない。最悪の事態が発現するまでに定年などで「逃げ切る」蓋然性が高いような場合にはなおのことそう思う。




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