元丸紅、現小樽商科大学で、英文契約作成のキーポイント、英文契約修正のキーポイントでおなじみ(?)の中村先生の本。前記2冊と同じデザインで色違いの装丁の1冊だが、絶版なのか探したけど見つけられなかったら、いつも行く丸沼書店の古本の棚に初版(昭和63年、
ご本人のbioを見るとこの後に1998年に新版が出ていたらしい)を発見したの、回収もとい、捕獲して、読んでみた。
さすがに昭和の末期の本(ちなみに、中に、発刊直後に買った人が挟んだと思われる池袋旭屋のレシートが入っていた)なので、古色蒼然とした内容もある。テレックスとか言われてももう僕もわからないし、まだワープロ専用機が出始めのころでそのあたりの事情を前提にした記載とかは、純粋に歴史の一駒でしかないだろう。
とはいうものの、まだ、現在でも有意義な記載はあると思う。
たとえば、英語で契約交渉交渉にあたる人間(法務に限られない)が英語、特に法律英語が上手であることのメリット、デメリット、逆に、英語よりも商売の得意な人を交渉に起用するメリットについて、次のような記載がある。内容について、疑問がないわけではないが、個人的にはデメリットについて、および、英語よりも商売の得意な人を交渉に起用するメリットについての記載が興味深い。それぞれのポイントは次のとおり(見出しだけ拾い上げてみた)
| 法律英語が上手であることのメリット | 法律英語が上手であることのデメリット | 英語よりも商売の得意な人を交渉に起用するメリット |
| 法律概念が英語で表現できる | 程度の高い会話を強いられることになる | 実務的な契約ができる |
| スピーディーな交渉ができる | 相手の話がわからないふりがしにくくなる | 相手に簡素な契約を作らせるインセンティブを与えることができる |
| より一層論理的な思考ができる | 複雑な契約を作らされるおそれがある | |
| 交渉の主導権が取れる | 法律の専門家と交渉させられるおそれがある | |
ほかにも、国際契約交渉、特にそれが長期戦になったときの、それぞれのフェイズ(サイニングセレモニーまで含めて)での実務的な気の遣い方や策の弄しかたについても記載がある。たとえば
- 交渉における会議室の大きさ、テーブルの形、座席配置、窓の向き
- 交渉が行き詰まった時の打開策
- 弁護士同士の連帯感、事業部門担当者同士の連帯感の使い方
- 家族で会食をする場合の相手方の担当者の奥様にこちらに対して好印象をもってもらうことのメリット
これらが常に有用というかというと疑問もないわけではないし、諸刃のものも多々あると思うけど、ともあれ国際契約交渉の細部に至るまで書かれていて、商社の人はここまで考えるのか、と感心しつつも、読み物としても楽しめるし、実際に交渉に立ち会ったときには、デメリットも勘案しつつ、このうちのいくつかをうまく使えるようになっていれば、それはそれで有用なのではないかと思う。
上記の新版からも既に10年以上たっているし、その間にテクノロジーの進歩とそれを踏まえたビジネスのスピード感も大きく変わっているので、願わくは、昨今のそのあたりの事情を踏まえたupdate版が出てほしいところである(ご本人だけではきつければどなたか、現役の商社の法務マンとの共著でもよいので)。