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イデオロギーと認知・生物学的特性との関係

カテゴリー:社会・政治・時事問題

はじめに

人間の存在はイデオロギーに包まれていますが、イデオロギー的態度と心理的特性との関係については、まだ十分に理解されていません。情報をどのように知覚し、処理するかという認知的気質については個人差があり、おそらく、それが個人のイデオロギー的世界観、過激主義的信念の傾向、証拠に対する抵抗感(または受容性)の形成と関係ありそうですが、その理解は発展途上の段階です。

マスメディアや SNS の情報は、人々のイデオロギー的態度や認知に大きく影響を及ぼすと考えられます。そして、伝統的マスメディア(legacy media)情報の支配下にあった先進国の民主主義とジャーナリズムは、いま SNS を含むソーシャルメディアの発達によって崩れ去ろうとしているように思えます。昨今の米国でのトランプ大統領の支持と再選、国内における都知事選の石丸現象、衆院選の玉木現象、兵庫県知事選の斎藤現象は、伝統メディアに登場してきたエリート層や識者の目論見とは、多かれ少なかれ異なる次元で起こりました。

一言で表すなら、SNS を通じた ポピュリズムポピュリズム的手法が SNS を情報取得デフォルトとする世代を圧倒的に支配するようになったということです。SNS としては X (Twitter)、FacebookInstagramTikTok などがあるほか、オンライン動画共有プラットフォームのソーシャルメディアとして YouTube があり、ポピュリズムの浸透や効果をきわめて容易にしています [1]。従来の民主主義とは異なる、歪んだサイバー・デモクラシーが形成されつつあります。

ポピュリズムは既存のシステムを批判しながら、単純かつ刺激的な政策メッセージで大衆の不満を煽動的に吸い上げる政治手法でありイデオロギーとして左右両派に見られるものの、多くは保守・右翼的思想、あるいは新自由主義と結びついています。したがって、人々のイデオロギー的態度や今起こりつつある選挙行動の現象を理解するには、第一にポピュリズムに感化されやすい人々の認知的気質、および保守・右翼思想との関係を理解すべきであろうと考えます。

私は個人的な素朴な疑問として、人々のイデオロギー的態度と心理特性について、果たして神経科学的な生物学的差異に由来するのか、もしそうであるなら保守・リベラル派の分断が起こるのは当然の帰結ではないか、ということを以前から考えてきました。この記事では、文献を拾いながらこの点を考察したいと思います。

そして、保守・右翼思想の認知・生物学的特性や SNS の特性を踏まえながら、昨今の投票行動(すなわち、石丸、玉木、斎藤現象)との関係を考えてみたいと思います。関連の記事を先に配信しています(→石丸、玉木、そして斎藤現象ーなぜ大衆に受けたか)。

1. キーワード:ポピュリズムマキャベリズム

あの立花孝志氏の言動は、政治的投票行動をかく乱させているとも言えます。彼は「バカな人たちをどうやって上手く利用するか。犬とか猫と一緒。バカに(票を)入れてもらう方法を考えるのが、本当に賢い人」、「くだらない人間だと批判するよりも、そこはやっぱり降りていく、この人たちに票を貰わなければいけない」と述べています(以下 "X" からの引用ツイート)。

もとより、立花氏のこれまでの選挙運動に関する言動は受け入れ難い部分が数多くあり、法的に大きな問題があります(逮捕される可能性もある)。しかし、彼が言う「バカな人に合わせて降りて票を吸い上げる」というのは、(表現自体は問題だとしても)本質をついていると思います。裏を返せば、彼が言う「バカな層」が立花孝志なるものを生んでいるとも言えます。

事実、単純でわかりすいメッセージ、大衆を煽る言葉、刺激的な言動が、政治に無関心の人たちが多い若年層を中心の意識を呼び起こし、票に結びついています。これは、単純かつ刺激的なメッセージを用いるポピュリズム、あるいはポピュリズム的手法が、SNS 世代の心に刺さるということでしょう。特に政治的関心が希薄で、旧メディアのニュースもほとんど見ない若年層が、SNS を通した情報なら喚起されるという今ならではの現象だと言えます。

もう一つの重要な要素として、暗黒パーソナリティの一つであるマキャヴェリズムがあります。目的の政策ためなら手段を選ばない、倫理、社会規範に反するようなこともいとわないという政治思想です。今回の米大統領選におけるトランプ再選は、まさに彼の資質や言動の負の部分を度外視した、政策や経済を重視する大衆の支持によるものです。

立花氏はユーチューバーという立場上、視聴・閲覧回数を稼ぐことがビジネスに直結しています。この目的のためには、政治運動を題材とした YouTube コンテンツをマキャヴェリズム的手法を用いてまでも発信するという傾向が見られ、それがスタイルとして確立しているように思えます。つまり、閲覧回数を上げるためなら、嘘、デマ、あるいは法律違反の過激な動画発信も行動もいとわないという姿勢です。YouTube のこの特性(金儲け手段としての情報バイアスがあること)に無頓着、判断不能なユーザーは多いのです。

しばしば、「貶す意味で」オールドメディアと評される新聞、雑誌、ラジオ、テレビなどの伝統的マスメディアは、プロ集団が情報を扱っている組織ジャーナリズムに立脚しており、組織の編集方針や事実の裏付けなどの査読で統制されています(いわゆるゲートキーピングが機能)。法律やスポンサーによる制約も受けます。これに対し、動画サイトを含む SNS は、これらの規制がありません。

SNS はプロからど素人まで(むしろ素人個人が圧倒的に多い)が情報発信・拡散者となり、あらゆる玉石混合の、差別、偏見、中傷、デマ、フェイクを含む情報が洪水のように流れる特徴があります。この特性が、ユーザーをポピュリズムとともにマキャヴェリズムに感化しすい環境にしていると考えられます。

今回の兵庫県知事選でいえば、PR を請け負った会社を含む斎藤応援団と立花氏のポピュリズムマキャベリズム手法にまんまと乗せられた低い認知力の、あるいは閉鎖的認知スタイルの大衆が、斎藤氏の白色化(whitening)にまで手を貸し、投票行動に出たということになるでしょう。なぜ、そうなるかは、生物学的特性との観点から以下に記します。

SNS と言えば、海外ではフェイスブックのユーザーが多いですが、日本では圧倒的に "X" の利用人口が多いです。X では匿名利用が可能で、多くのユーザーはハンドル名を使っています。匿名性の高さは、発言、拡散の客観性、論理性、倫理性、道徳性、責任感のハードルを取り払ってしまいます。素性・属性のわからないユーザーがリプ欄で投稿者に噛みつき、時には誹謗中傷をする例や、真偽不明、一次情報源不明な投稿を拡散させる例は枚挙にいとまがありません。

Twitter から E.マスクの X に変わってからこの傾向は一段と強くなりました。何よりもマスク自身が、大統領選においてたくさんのデマ情報を飛ばしていたことはよく知られています。そして、閲覧数に応じて報酬が得られるようになりましたので、デマでも炎上でも、拡散されれば勝ちという状況が生まれています。

表現の自由という名目で、実は暗黒パーソナリティー発の低質発言の可視化と拡散を可能としているのが SNS であり、X は先頭を切ってその機能を果たしていると言えるでしょう。

2. 保守派・右翼的思考者の特性

イデオロギーと生物学的特性の関係を論じる前に、まずは、心理・認知・社会学的見地からの保守・リベラル両派のイデオロギーの特性評価について、これまでの知見を述べたいと思います。他の生物と同様、ヒトは本能的に自己防衛、生活保護(生活第一)主義の特性があります。そこで、特に、保守的態度の認知特性についてここで記します。

イデオロギー志向において、保守主義・右翼思想はポジティブな情報よりもネガティブな情報の比重を高めることに関連しているというのが一般的学説です。例えば、カステリ(Castelli, L.)らの研究保守派はマイノリティに対してより否定的な印象を持ち、一貫した記憶バイアスを示すことを確認しました [2]。一般的に、数量的に異なる新奇な集団にさらされ、かつ否定的な行動の頻度が低い場合でも、保守的な世界観を抱く人の間では、錯覚的な相関効果が強調されることが示されました。

この結果は、保守層が社会的マイノリティに対してより否定的な態度を形成する傾向がある理由の一つを説明しているかもしれません。つまり、保守的な人は、異質と感じるものに対する不安や恐怖により、社会の実態をネガティヴな方向へ偏向させたり、歪めたりする傾向が強いということです。それは、いわゆるデマとして現れます。

前回のブロ記事で示したように、保守・右翼的気質は、低レベルの知覚・認知機能を反映しているという学説が存在します [3](⇨頭が悪いと差別的、右翼的になる?-SNS による偏見の助長石丸、玉木、そして斎藤現象ーなぜ大衆に受けたか)。自分とは異質集団に対する暴力肯定を含む極端な態度は、ワーキングメモリーの低下、知覚戦略の鈍化、衝動性や感覚探索の傾向と関連しており、保守主義や独断主義の心理的プロファイルとの重複を反映していると報告されています [4]

また、権威主義、システム正当化、社会的優位志向、愛国心、証拠や代替的視点に対する受容性といったイデオロギーについても同様です。愛国主義権威主義の人が、しばしば、異質な相手を誹謗したり、嫌がらせをしたりするのは、上記の低レベルの知覚・認知機能、知的戦略の鈍化の反映でしょう。

保守的な政治イデオロギーを含めた認知偏向性(絶対主義/曖昧さへの不寛容、外国人恐怖症、でたらめ受容性、過剰主張など)は、社会的硬直性や認知的硬直性(問題解決力の低さ)と関連すると報告されています [5]。逆に、社会認知的な分極化やでたらめがなく、過剰主張が低い人は、問題解決において良い結果を示すとされています。

3. SNS の特性

次に、SNS の認知的側面からの特徴です。基本的に YouTube などの動画プラットフォームでも同じ傾向になります。

SNS は、態度に一貫性のある情報が規範となり、ユーザーが態度を変え得るような挑戦的な情報が回避されるという傾向があります。ユーザーは基本的にフォロワーから流れてくる情報にさらされ続けますので、思考を変える挑戦的な態度がとりにくい環境にあると言えます。つまり、SNS は、エコーチェンバー(反響作用)の形成を促進するという懸念を抱えています。そして、この SNS の特質が与える影響は、保守派とリベラル派で異なる可能性があります。

この面からの研究は非常に多くあります。例えば、ライター(Reiter, F.)らは、SNS における態度一貫性と態度挑戦性の予測因子を理論的に検討しました。すなわち、イデオロギー、政治的関与の認知的・行動的指標、ネットワーク特性との関連について、複数のパネル的研究を行いました [6]

その結果、極端なイデオロギー的立場の人高い政治知識の人、および努力の少ない政治参加・政治的関心が脆弱の人は、態度一貫性をとり続ける情報への曝露を増加させるという予測になりました。この結果は、SNS がそれ自体、態度一貫性のある暴露を促進する(反響効果)という既存の認識に対して、ユーザーの政治的思想、あるいは政治的意識、認知力も影響するという新たな挑戦的知見を与えています。

米国では、政治に関する感情的二極化が進んでおり、先の大統領選でもこの傾向が顕著に現れました。ナイ(Nai, A.)らは、この現象の先行要因を探るために、架空の候補者に対する、ネガティヴな選挙コミュニケーション(否定的、煽動的、ポピュリスト的レトリック)への暴露が推進する役割と、個人のポピュリスト的態度が介在する役割について調べました [7]

その結果、人々が、ネガティブな選挙運動メッセージ(政治的不公正やポピュリスト的メッセージに関連した人格攻撃)に接すると、ポジティブなメッセージに接するよりも感情的偏向が高まることが示されました。また、ポピュリスト的な態度が直接効果および調整効果を持つことも示されました。

結論として、ポピュリスト的な人ほど、ネガティブな選挙運動メッセージをより面白く、より公平であると感じ、より高いレベルの感情分極を示す傾向が示されました。さらに、ネガティブ・メッセージへの暴露は、特にポピュリスト的態度の高い回答者において、より大きな感情的偏向と関連していることがわかりました。

ネガティヴな選挙運動メッセージには、たくさんのデマ、フェイク情報が含まれます。Facebook を対象とした調査研究では、虚偽情報のほとんどが保守・右翼層で流通していることが報告されていますが [8]。これらの層では、ウソでさえ妥当だとして消費されていることを物語っています。まさに、SNS 上における特定のイデオロギーマキャヴェリズムの結びつきを示すものです。

米国におけるイデオロギーによる二極化は、ポピュリズムマキャヴェリズムと絡みながら、もはや修復できないようなところまで来ている感があります。SNS保守系インフルエンサーによって牛耳られ、若者は保守・右翼が流すニュースを益々参考にするような傾向になっています。

2018 年に報告された、SNS 上では「ウソは事実よりも速く広く拡散する」という研究結果は、ソーシャルメディアの特性を現しています [9]。ウソは事実よりも100倍の拡散力をもち、拡散速度は 20 倍と報告されています。この傾向は、政治ネタで顕著であることも特徴です。ウソのオールドメディア、真実の SNS という二項対立を煽る主張がしばしば散見されますが、その実、SNS ではウソがはるかに蔓延しているのです。

SNS のこの特性は、人々を政治的分断に追い込みやすいと考えられます。とはいえ、ネガティヴキャンペーンやフェイク情報の氾濫に鑑みて、教育者や政策立案者は、人々を分断しているとされるイデオロギーよりも、むしろ基礎的な科学リテラシーと批判的思考を高めることに焦点を当てるべきという示唆もあります [10]

2. 生物学的観点からのイデオロギー気質

心理学的測定における保守派とリベラル派と認知スタイルには、実質的な違いが存在しますが、これらの違いは生物学的特性からも論じられています。神経科学と遺伝学の研究によると、右翼志向は、脅威に対する神経感受性が高く、扁桃体(amygdala)の容積が大きいこと、また反応の衝突に対する感受性が低く、前帯状皮質(anterior cingulate cortex, ACC)の容積が小さいことと関連するというのが、有力な仮説の一つです [11]

例えば、ナム(Nam, H. H.)らは、どのような個人が社会における不平等に意義を唱えたりしやすいか、逆に現状擁護感が強いかを理解するために、神経画像研究を行いました [12]下図参照)。その結果、両側の扁桃体積が大きいほど、既存の社会秩序は正当で望ましいと考える傾向が強いことがわかりました。また、扁桃体積が大きい人ほど、政府への抗議運動に参加する可能性が低いものでした。ただし、この研究では、極端な政治的志向性や態度自体による代替説明を除外しています。

扁桃体は、すべての脊椎動物の大脳半球(側頭葉後部)の奥深くにあるアーモンドのような構造体で、少なくとも 13 個の核からなる非常に複雑な器官です。扁桃体は、感情の制御に関わっており、主にネガティブな刺激(脅威など)の処理と、悲しみ、不安、怒り、恐怖などの関連感情に関与します。

扁桃体のサイズが大きく、活動が過剰であると、不安や恐怖を感じやすくなります。つまり、保守・右翼的傾向のある人は、扁桃体の活動が活発なため不安感情が大きく、権威や既存体制に寄り添うことで安心感を得る一方で、異質や未体験の事柄については不安を覚え、極論すると被害妄想に駆られやすく、相手を攻撃するということになります。ゼノフォビアと称される排外主義が、表現型として現れやすいと言えます。

上述したカステリらの研究 [2] は、保守派が社会の実態をネガティヴな方向に偏向させてしまう錯覚相関効果を持つことを示していますが、まさにこの生物学的特質の現れかもしれません。差別や偏見が生物学的特性からくる可能性があります。

他方で、保守主義扁桃体積と正の相関を示し、ACC 灰白質体積と負の相関を示すという上記の仮説は、最近、多様なイデオロギーの尺度と大規模で代表的なサンプルを用いて再検証されています [13]。この研究によると、扁桃体積と保守主義の間に小さな正の関係があることは再現できましたが、イデオロギーと ACC 体積の関連を支持する一貫した証拠を見つけることはできませんでした。

従前の研究においては、イデオロギー保守主義に関する一次元のスペクトルとして単純化され、政治的イデオロギーの多次元的性質を見落とされており、使用されたサンプルが比較的小規模で均質であるため、より広範な集団に対する研究結果の一般化には限界があると、批判されています。

とはいえ、扁桃体灰白質容積がリベラル派に比べ保守派で大きいことは、様々な研究で一致した見解であり、それが保守層の権威、体制容認や偏見・錯視に繋がっていることは言えそうです。

おわりに

上記を踏まえて、伝統的マスメディアと共有動画プラットフォームを含む SNS の特質、及びユーザーの思考に与える要因(ポピュリズムマキャヴェリズムなど)を示したのが、図1です。これまでのメディア情報、文献情報に基づいて描いた個人的見解です。

図1. 伝統的マスメディアとSNS・動画プラットフォームの特性、およびサイバーデモクラシーに影響を及ぼす要因としてのポピュリズムマキャヴェリズム、大衆の特性. SNSや動画サイトは旧メディアに比べて圧倒的にポピュリズムにさらされやすい. 仮説として、SNS情報の取捨選択、感化の度合い、一貫性は、スマートフォン中毒、認知能力、神経科学的・遺伝学的特性に左右される可能性がある.

昨今の国政・知事選挙で、蓮舫よりも石丸、立憲よりも国民民主、稲村よりも斎藤に若者の票が行った理由として、「SNS 戦略に優れた方が勝った」というのはその通りですが、それだけでは舌足らずであり、本質的ではない可能性があります。SNS や動画サイトが若者のスマートフォンを媒介とした情報取得デフォルトとは言え、それらの媒体ですべての候補者に触れる機会は少なからずあります。

この面でライターらの研究 [6] は示唆的です。すなわち、極端なイデオロギー的立場の人高い政治知識の人、および努力の少ない政治参加・政治的関心が脆弱の人は、政治態度に一貫性があるという示唆です。SNS の反響効果はあるにせよ、そもそもこれらの種類の人たちは、情報に左右されない政治態度を持つということになります。

しかし、その認知プロセスはこれらの人々で大きく異なる可能性があります。まずは、極右、極左イデオロギーの人は、鼻から対立する政治イデオロギーを受け付けないと考えられます。次に、高い政治意識と知識を持つ人では、新聞、雑誌、テレビなどの様々なメディアや SNS 情報にアクセスする機会を持ち、その上で科学的、合理的な判断をし、結局同じ結論に至っていると考えられます。

問題は、政治参加に積極的でない、あるいは無関心な人々の「一貫性」という態度であり、これは前二者とは異なっている可能性があります。つまり、元々政治的に脆弱な考えの人たちが、SNS や動画サイトを通じて、シンプルで刺激的な主張に触れてしまうと、たちまちそれに感化(悪くいうと洗脳化)されてしまい、以降それに支配されてしまう(一貫性を持つ)プロセスが考えられます。

あるいは元々持っていた保守的気質(上述した自己防衛や生活保護主義など)が、SNS の発達によって顕在化したとも言えるでしょう。政治的な関心が希薄な人は、体制の改善や革新志向を持つリベラル層とは異なり、安定志向があり、その分、現状肯定の気質があると考えられます。つまり、人間は、元来、多くが潜在的保守層であると言えますが、学習や教育効果によってそこからリベラル的志向に行くか、そのまま保守で止まるかは神経科学的・遺伝学的特性に左右されるのかもしれません。

この意味で、X 上で指摘されていることの多くが的外れ、あるいは本質的でないような気がします。例えば、以下に引用する鴻上氏のツイートは、大衆(若者)が SNS で積極的に情報をとりに行った結果と評価していますが、むしろ SNS の情報(ポピュリズム的情報)に感化されたと見るのが妥当でしょう。

鮫島氏は、都知事選、兵庫県知事選、米大統領選を引き合いに出して、リベラル派の女性が若い層を中心とする男性の反発を買った結果だと主張しています(以下引用)。これも表面的にはそうですが、玉木現象などとの共通性を考えれば、部分的要因にしか過ぎないように思われます。

やはり、旧マスメディアが支配していたゲートキーピングによって統制された情報空間が、SNS や動画サイトが政治的関心が脆弱の人々(潜在的保守層)の意識を呼び起こし、感化したことによって、隅に追いやられてしまったと言ったほうがよいように思います。そして、このプロセスで重要な働きをしているのが、ポピュリズムマキャヴェリズムです。

ポピュリズムは、伝統的マスメディア下で形作られた既成政党や主要選挙候補者のイメージを否定する動きを促しています。ナイらは、世界の最近の 40 の国政選挙に出馬した 195 人の候補者の選挙運動プロフィールを比較して、ポピュリストは主流派候補者の選挙運動よりも大幅に否定的で、より多くの人格攻撃や恐怖訴求を含む選挙運動メッセージを使用する傾向があることを示しています [14]

政治的態度としてのポピュリズムは、その敵対的な世界観から、否定的なメッセージを拒絶するハードルを下げ、感情的偏向への影響を強める可能性が高いです。さらに、自分に対する攻撃か敵対者に対する攻撃かに関係なく、ポピュリズム的態度の高い個人は、攻撃の中に外集団を否定的に見る新たな理由を見出す可能性が高いと言えます。これは、主な情報の入手を SNS や動画プラットフォームに依存する潜在的保守層や経験的に未熟な若年層にも言えるのではないでしょうか。

いずれにせよ、保守化したサイバーデモクラシーの流れは止められず、従来の民主主義を萎縮させ、これからの政治運動、投票行動を席巻していくでしょう。

引用文献

[1] Carral, U.: Populism, cyberdemocracy and disinformation: analysis of the social media strategies of the French extreme right in the 2014 and 2019 European elections. Humanit. Soc. Sci. Commun. 10, 23 (2023). https://doi.org/10.1057/s41599-023-01507-2

[2] Castelli, L. and Carraro, L.: Ideology is related to basic cognitive processes involved in attitude formation. J. Exp. Soc. Psychol. 47, 1013-1016 (2011). https://doi.org/10.1016/j.jesp.2011.03.016

[3] Hodson, G. and Busseri, M. A.: Bright minds and dark attitudes: lower cognitive ability predicts greater prejudice through right-wing ideology and low intergroup contact. Psychol. Sci. 23, 187–195 (2012). https://doi.org/10.1177/0956797611421206

[4] Zmigrod, L. et al.: The cognitive and perceptual correlates of ideological attitudes: a data-driven approach. Philos. Trans. R. Soc. Lond. B Biol. Sci. 376, 20200424 (2021). https://doi.org/10.1098/rstb.2020.0424

[5] Salvi, C. et al.: Does social rigidity predict cognitive rigidity? Profiles of socio-cognitive polarization. Psychol. Res. 87, 2533–2547 (2023). https://doi.org/10.1007/s00426-023-01832-w

[6] Reiter, F. et al.: Explaining attitude-consistent exposure on social network sites: The role of ideology, political involvement, and network characteristics. Soc. Sci. Comput. Rev. 41, 1207-1226 (2022). https://doi.org/10.1177/08944393211056224

[7] Nai, A., & Maier, J.: Polarized populists: Dark campaigns, affective polarization, and the moderating role of populist attitudes. Am. Behav. Sci. published online April 5, 2024. https://doi.org/10.1177/00027642241242056

[8] González-Bailón, S. et al.: Asymmetric ideological segregation in exposure to political news on Facebook. Science 381, 392–398 (2023). https://www.science.org/doi/10.1126/science.ade7138

[9] Vosoughi, S. et al.: The spread of true and false news online. Science 359, 1146–1151 (2018). https://www.science.org/doi/10.1126/science.aap9559

[10] Pennycook, G. et al.: Science beliefs, political ideology, and cognitive sophistication. J Exp Psychol Gen. 152, 80-97 (2023). https://doi.org/10.1037/xge0001267

[11] Jost, J.T., Amodio, D.M. Political ideology as motivated social cognition: Behavioral and neuroscientific evidence. Motiv Emot 36, 55–64 (2012). https://doi.org/10.1007/s11031-011-9260-7

[12] Nam, H. H. et al.: Amygdala structure and the tendency to regard the social system as legitimate and desirable. Nat. Hum. Behav. 2, 133–138 (2018). https://doi.org/10.1038/s41562-017-0248-5

[13] Petalas, D. P. et al.: Is political ideology correlated with brain structure? A preregistered replication. iScience 27, 10110532 (2024). https://doi.org/10.1016/j.isci.2024.110532

[14] Nai A. and Maier J.: Is negative campaigning a matter of taste? Political attacks, incivility, and the moderating role of individual differences. Am. Polit. Res. 49, 269–281 (2021). https://doi.org/10.1177/1532673X20965548

引用したブログ記事

2024.11.18. 石丸、玉木、そして斎藤現象ーなぜ大衆に受けたか

2024.08.06. 頭が悪いと差別的、右翼的になる?-SNS による偏見の助長

                    

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