カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年)
日本で最初の COVID-19 感染者が確認されたのは 2020 年 1 月 15 日です。それからまる 3 年が経ちました。そして 2020 年の 2 月 13 日に最初の死亡者が出ています。当時のブログを振り返ってみると、国内で千人の感染者が確認されたと記していますが(→国内感染者1,000人を突破)、今から考えれば、不謹慎ですが、この数字自体かわいいものです。3 年も経って、1 日当たりの犠牲者数が最多になろうとは誰が予想したでしょうか。第 8 波全体としても過去最悪の被害状況になろうとしています。
図1 に示すように、ここへきてなぜコロナ死者数が最多になるのか、それは偏に感染者の爆発的拡大によるものです。いまの COVID-19 の致死率は、第 1 波の約 4 %から 1/40 に下がっています。それにもかかわらず死者数が最多になるということは、致死率の低下をはるかに上回るだけの感染者の爆発的増加があるということになるでしょう。
そして、オミクロン変異体になってから感染力が格段に高まり、母数としての感染者数が著しく増えているのに、いまだに「COVID-19=肺炎」、「重症者=人工呼吸器、ECMO 装着者」というイメージに拘泥していることが逆に対策と措置を誤り、むやみに死者数を増やしているとも言えるでしょう。つまり、入院基準が血中酸素飽和度で判定するようなデルタ波以前のままであって、重篤化しているのに入院を遅らせている現状があります。
したがって、高齢者と持病持ちが COVID-19 の死亡リスクが高い脆弱者であるにもかかわらず、自宅療養の過程で、あるいは医療にたどりつけないまま亡くなっているケースが非常に多いと思われます。やっと救急搬送されたとしてもすでに手遅れであっという間に衰弱して亡くなっていることもあるでしょう。だとすれば、これはある意味人災です。
図1. 人口比COVID-19死者数/日の推移(Our World in Dataより転載).
死者数増加に原因については「高齢者の死亡が増えているから」とか「合併症死が多いから」とか「“隠れ感染者”が多いから」とかいう声がテレビやウェブ記事を通じて聞こえてきますが [1]、全く本質的な答えになっていません。高齢者や基礎疾患を抱えている患者が死亡リスクが高いのは、第 1 波からずうっと同じです。常に死亡者の大半を高齢者と合併症の患者が占めているのです。
問題は、なぜ医療提供のキャパシティ以上に感染者が爆増しているのかということです。図1 からわかるように波が訪れる度に死者数が増える傾向にあり、特にオミクロン変異体による第 6 波以降、死亡増加が顕著になっています。これは世界でも珍しいパターンと言えます。
日本とG7諸国の死者数の推移を比べてみればわかりますが、欧米ではパンデミック初期において対応が遅れ、医療崩壊を招き、多数の死者を出してしまいました(図2)。日本の第 3 波、第 4 波くらいまでの期間における高いピークがそれを現しています。しかし、オミクロン波になってからは、死者数が激減していることがわかります。日本とは対照的です。
欧米で過去と比べて死者数が激減したのは、ワクチン接種、自然感染率の増加に伴う免疫強化もあるかもしれません。加えて、医療アクセスに余裕があることが大きいと思われます。各国の知り合いの専門家に訊いた範囲で判断すれば、少なくとも高齢者が入院できずに、あるいは救急搬送が遅れて死亡するという事例は日本よりは少ないように思われます。それでも、いま人口比死者数で日本のレベルと同程度になったというところは注意が必要です。
図2. 日本および他のG7諸国の人口比COVID-19死者数/日の推移(7日間移動平均、Our World in Dataより転載).
G7 諸国の流行状況をわかりやすくするために、昨年 3 月以降の死亡率の推移を拡大して図3に示します。各国は人口比で似たような死亡率であり、感染者数も人口比で同レベルであることが類推されます。しかし、現在、その中でも日本が(高齢化率が高いことを考慮しても)一つ飛び抜けた感じです。日本とアジア諸国と比べてみれば、その差はもっと顕著になり、中国を除けば日本の1人負けの状態になります(→第8波流行でまた最悪被害を更新か)。
図3. 日本および他のG7諸国の人口比COVID-19死者数/日の推移(2022年3月からの7日間移動平均、Our World in Dataより転載).
その中国でも直近1ヶ月の死者数が約 6 万人と報道されました [2]。真偽の程は別にしてこの数字で考えれば、同時期の人口比死亡率は日本の約半分です。実態はこれよりはるかに多いと思われますが、日本のテレビやその他メディアは、中国の感染拡大ばかりを強調して報道している場合ではないのです。
つまり、各国と比べてみれば、日本で感染者の母数が爆発的に増え、その分医療がひっ迫し、それに応じて死者数が増えている状況は、やはり政府の対応に問題があるのでしょう。日本で感染者数や死者数が増え、過去最悪の犠牲者数になっていることはやっとメディアでも取り上げましたが、アジアで1人負けになっていることは一切報道しません。
一方で、相変わらずのコロナ 5 類引き下げ論やここへきての屋内マスク不要論まで出てきています。どうやら、これらは日本での最悪の被害の印象を薄めるための政府主導のプロパガンダという感じがしてきました。もとより外遊を爛々気分で終えた岸田首相は、最悪の被害や感染対策には全く興味がないのでしょう。
日本は国民のマスク着用を含めた衛生意識の高さ(警戒感)によって、欧米に比べて人口比感染者数と死者数を抑えてきました。しかし、オミクロン変異体になってから感染力が上がり、ワクチンブレークスルー感染が増え、感染防護策も容易に突破されるようになったと考えられます。つまり、図1 のグラフは、ウイルスの感染力の増強をそのまま反映したものだと考えられます。
日本ではパンデミック当初からマスク着用率も、その質もあまり変わっていないと考えられます。これらが一定で、ウイルスの感染力だけが上がっていけば、感染者数が増えていく、その分だけ死亡者数が増えていくのは当然だと考えられます。もとよりマスクの感染防止効果は部分的であるので、ウイルスの感染・伝播力の増強に応じて、その質も変えていくべきでした(一般のサージカルマスク→KF94→KN95→N95)。感染のスピードを抑えてきた日本は、欧米に比べて感染リザーバーに余裕があり、これからも感染者が増えていくでしょう。
引用記事
[1] テレ朝ニュース: コロナ死者急増 原因は…医師「合併症多い」 「全数把握」簡略化 “隠れ感染者”も? https://news.yahoo.co.jp/articles/0bcbaae926764f9b9ee9eaf6ebfb2668b69f9656
[2] Reuters: 中国、6万人のコロナ関連死を公表 批判のなか従来から大幅増. Yahoo Japanニュース 2023.01.16. https://news.yahoo.co.jp/articles/80ffa1039a0b4e6f3990914fe4dbbaf083577b3a
引用したブログ記事
2022年12月17日 第8波流行でまた最悪被害を更新か
2020年3月4日 国内感染者1,000人を突破
カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年)