最近補聴器を買った。ふと考えてみると、補助具を五つも使っていることになるのに驚いた。
使い始めた順に言うと、まず初めはメガネである。三十歳の後半からである。初老性近視とやら言うもので、若い時には遠方視なら誰にも負けないと思っていた自信もどこへやら、年下の仲間に遠視力で負けて、メガネをかけねばならなくなった。
次は歯である。朝の忙しさにかまけて歯磨きなど適当に済ませていたためか、歯のトラブルは40代からすでにあった。虫歯で長らく、詰め物をしたり、抜歯したりして貰っていた。
当時、まだ50代で総入れ歯の医師もいたので、いざとなれば、総入れ歯でも困らないのではとたかを括っていた。ところが50代の後半、四国の大窪寺だったかへ案内して貰った時、名物だとか言われて、こんにゃくを噛んだ途端に、こんにゃくと共に前歯が抜け落ち、嫌でも部分入れ歯で誤魔化さなければならなくなり、それがきっかけで、やがては総入れ歯へと進んでしまった。
總入れ歯でも、摂食には全く困らないが、困るのは、夜寝るとき外しているので、朝起きて、ついうっかり入れるのを忘れて朝飯を食べようとして、歯のないのに気づいて、歯だけのためにまた二階まで取りに行かねばならないことである。
3番目は歩行補助器である。歳をとって転ぶことが多くなって杖をつくようになったが、せっかちなので、杖をついているのに、急いで歩いて転倒したりすることを繰り返していたが、九十一歳の時、間欠性跛行になり、歩けなくなった。しかし、同病の人でも、自転車なら乗れることを知っていたので、老人用の歩行補助具(おんば)を求めて、歩くようにしていたら跛行も約8ヶ月でよくなった。
そのうちに、歩行補助器にも、いろいろあることを知り、三輪車なので安定している上、直立姿勢で歩けるし、軽いので、折り畳めば階段も持って降りられる「トライウオーカー」なるものを知り、買い求めた。
毎日の朝の散歩や、近くへ出かける時に愛用しているが、タクシーでも折り畳めば、椅子の横に乗せられるので、市内へ行く時にも役に立ってくれる。
そこへ4番目は、今度求めた補聴器である。これについては、もう少し、使い慣れるまで様子を見て、また書くことによう。
それなら、5番目は何か、ということになる。それはスマホである。スマホは普通、補助器だとは言われていないようだが、スマホ程、いろいろ助けてくれているものはないのではなかろうか。他人との連絡ばかりではなく、日時も曜日も、その日の天気も、その日の用事まで、何でも教えてくれる。知りたいことも何でも教えてくれる、女房や娘の居処まで分かる。今や生きていくのに、なくてはならない補助具である。
これら五つもの補助具に助けられて、やっと九十七歳の老人も何とか無事に、自立生活を送れていることに感謝せざるを得ない。