中央区に続いて、今回は江東区臨海部を中心に洪水と高潮のハザードマップのデータを更新する。どらったら!ではちょうど5年前の2020年8月末に江東区のハザードマップについて記事を書いていた。
洪水が発生した場合に、より深刻な被害が想定される江東区は、このマップを手にした時に、住民がどう行動すべきかをより分かりやすく示すことに力を入れている印象を受けた(2025/09/13)。
- 江東区公表のハザードマップ(洪水・高潮)
- 洪水ハザードマップ【洪水氾濫】 2020年3月、荒川堤防決壊想定
- 洪水ハザードマップ【内水氾濫】 2022年3月、内水氾濫の被害想定含む
- 高潮ハザードマップ(2024年12月)=東京都作成・江東区版
- マップ使用法や避難行動をハザードマップに掲載
- 参考 洪水高潮ブックレット
- 感想・まとめ
- 参考リンク等
江東区公表のハザードマップ(洪水・高潮)



洪水氾濫 荒川の氾濫を想定した浸水予想区域(堤防決壊)
内水氾濫 降雨による河川氾濫、下水道施設の排水能力を超えた場合の浸水予想区域
東京都高潮浸水想定区域(2024年12月改定)=東京都公表、中央区版と区域以外は基本的に同じ
江東区作成のマップは「洪水ハザードマップ」「大雨浸水ハザードマップ」と分かりやすいタイトルになっている。さらに英語版、中国語版、韓国語版も公開され、それぞれ色の区別がしやすい「色違い版」が用意されている。
洪水ハザードマップ【洪水氾濫】 2020年3月、荒川堤防決壊想定
1000年に1度起こる大雨(3日間総雨量632ミリ)が降り、荒川の堤防が決壊した場合の浸水域と浸水深を示した図。浸水開始は決壊12時間後以降。


江東区洪水ハザードマップ(色違い版)=江東区全域・原資料
見ての通り、タイトルを見れば何のハザードマップなのか一目瞭然。
色分けも明確で、見間違いようがない。
マップを見ると、豊洲、有明、東雲などの「島部」は荒川の堤防決壊に伴う浸水は想定されない
洪水ハザードマップ【内水氾濫】 2022年3月、内水氾濫の被害想定含む
想定可能な最大規模の雨(総雨量690ミリ、時間最大雨量153ミリ、1000年に1回程度)により、河川の氾濫や下水道施設の排水能力を大きく超えた場合に、浸水が予想される区域と深さを示したもの。

想定しうる最大規模の降雨の場合、
東雲の一部では3m未満、豊洲では1m未満の浸水が想定されるようだ。
有明はテニスの森とその周辺で50センチ未満の浸水にとどまる。
さらに、災害への備えなどをマップに添付している。

江東区大雨浸水(内水)ハザードマップ(色違い版)=江東区全域・原資料
高潮ハザードマップ(2024年12月)=東京都作成・江東区版
東京湾に高潮が発生した時の災害避難地図(想定し得る最大規模)
想定
・室戸台風クラス(910ヘクトパスカル)
・東京湾に最大の高潮を発生させる進路、時速73キロ
・1000〜5000年に1度の規模
・最大規模の高潮と同時に計画規模の洪水発生
・潮位や波が一定の条件に達した段階で海岸保全施設や堤防は決壊する想定
・浸水した水を排除する施設の水没、広域停電で各施設の機能停止の可能性を考慮
・台風に伴う降雨は河川を流れる洪水として考慮。下水道、排水施設により雨水を排水できない浸水は考慮していない
浸水深(想定最大規模の高潮の場合)
色分けは中央区と比較すると判別しやすい。江東区の臨海部を除くと荒川沿いが5m以上、隅田川沿いが1m〜3m、その間が3m〜5mとなっている。人命に関わる深さだ。
■紫 5m以上
■薄紫 3m以上 5m未満
■水色 1m以上 3m未満
■緑色 0・5m以上 1m未満
■黄色 0・5m未満

浸水継続時間(想定最大規模の高潮の場合)
色分けは次のとおり。東部低地は深刻な浸水が想定されており5段階に分けて色付けをしている。隅田川沿いは概ね3日未満で、晴海通り以東の豊洲、東雲は一部が3日未満の浸水域にかかる。また、内陸側の荒川沿いは1週間以上の浸水となっている。
■赤 1週間以上
■濃橙 3日以上 1週間未満
■黄 1日以上 3日未満
■青 12時間以上 1日未満
■薄緑 12時間未満

マップ使用法や避難行動をハザードマップに掲載
江東区版は洪水や内水氾濫が迫った時に具体的に何を考えればいいのか、マップに記載された注意事項を見れば分かるようにしている。
ハザードマップの使い方などを掲載=大雨浸水ハザードマップ

ハザードマップですべきことは3つだという。
・自宅や職場が浸水域にあるか
・避難先の確認
・避難先までの経路確認
掲載されているのは
江東区の水害リスクについての説明
内水氾濫の説明 市街地に降った大雨が地表に溜まる
江東区内の水害対策
災害時の情報入手先
ハザードマップの使い方 3つの情報を確認する
災害への備え
地下街利用時などの注意点
マップには垂直避難(建物内の浸水しない高さに避難)や広域避難(浸水しない区域へ事前避難)といった具体的な行動ガイドも示されている。

中央区はハザードマップそのものとは別に、「洪水ハザードマップ(情報面)」というファイルを用意している。内容を知っていて事前に備えるにはいいと思うが、被災時に何をすればいいのかファイルの内容を知らないとどうにもならない。
被災時、あるいは被災が迫った時に目にするハザードマップに掲載するのは理にかなっている。
参考 洪水高潮ブックレット
江東区はハザードマップに掲載した情報を全体に詳しくしたブックレットも公開している。

江東区は各ハザードマップに最小限の追加情報を記載し、これに加えてブックレットを用意している。中央区の洪水ハザードマップ(情報版)に似た位置付け。ただ、具体的な避難行動をどう考えるかという「避難の考え方」などがより詳しく書かれている。
江東区ブックレットと中央区(洪水ハザードマップ(情報面))との比較表
| 中央区「情報面」(全12ページ) | 江東区ブックレット(全20ページ) |
| 区からの情報伝達経路 | 江東区の歴史・施設状況 |
| 情報提供ツール | 避難に関する情報 |
| 河川の水位情報 | 洪水氾濫と高潮氾濫のメカニズム |
| 日頃からの備え | 雨や風の強さ |
| 避難場所一覧 | 情報伝達経路 |
| 避難情報発表基準 | 水害時に必要な情報の集め方 |
| 避難時の心得 | 自衛策と避難の際の留意点 |
| 大雨対策 | 浸水継続時間が長い地域について |
| 防災関係機関一覧 | 特に注意したい地下施設・大切な人との情報共有 |
| 一時避難施設(命を守る緊急避難) | |
| 水準標に示した過去の台風と記録 | |
| 広域避難について |
感想・まとめ
多くの住民はハザードマップをみても、どう使ったらいいのかわからないだろう。その点、江東区のハザードマップは、住民が手にした時にとるべき行動をマップに掲載するなど、いろいろと考えられている。
また、中央区のハザードマップで挙げた課題(マップのタイトルと色使いのわかりにくさ)については、江東区のマップではクリアされている。
江東区のマップにも改善の余地はまだまだあるのだろうが、江東区のマップからは危険情報は住民に伝わらなければ意味がないという思いを強く感じた。
・・・
一方の中央区は「マップ自体は正確なので、あとは自分たちでなんとかしてね」とやや突き放した印象を受ける。中央区のハザードマップを手にした住民は、戸惑わないだろうか?
タイトルの工夫、色使いの工夫、マップの片隅に「洪水ハザードマップ(情報面)」への誘導を載せるなど、やれることはいくらでもあるだろう。
ハザードマップこそ、住民目線が必須だと思うのだが、どうだろうか。
補足だが、デジタル版は便利だが、災害時に通信環境を考えると、端末などにダウンロードしておくといいのではないかな。
参考リンク等
江東区のハザードマップサイト。リンクが多数あるので、間違ったものを呼び出さないように注意したい。
洪水氾濫 荒川の氾濫を想定した浸水予想区域(堤防決壊)
内水氾濫 降雨による河川氾濫、下水道施設の排水能力を超えた場合の浸水予想区域
東京都高潮浸水想定区域(2024年12月改定)=東京都公表、中央区版と区域以外は基本的に同じ