
- はじめに
- SRE Kaigi 2026とスタッフとしての役割
- 事前準備から当日まで
- 一番大変だったこと:ドリンク持ち出し対応
- 運営スタッフとして大切にしたこと
- 印象に残ったブース
- 嬉しかったエピソード
- 次回への改善点と展望
- 初めてイベントスタッフをやる人へ
- まとめ
はじめに
「イベントスタッフって、実際どんなことをするの?」「初めてでも大丈夫?」
技術カンファレンスのスタッフに興味はあるけれど、何をするのか分からなくて踏み出せない——そんな方は少なくないのではないでしょうか。
こんにちは。ITインフラ本部 SRE部の庭野です。私はSRE関連イベントへの参加・登壇経験はありましたが、運営側に回るのは今回が初めて。2026年1月のSRE Kaigi 2026に当日スタッフとして飛び込んでみました。
DMMのSRE部では、技術コミュニティとの接点を通じた知見の獲得と、そこで得た学びの情報発信を推奨しています。この記事もその取り組みの一つとして、800人規模のカンファレンスで9時間半のスタッフを経験して得た学び——トラブル対応の判断力、現場で役立つコツ、初めてのスタッフに向けたチェックリストを共有します。
SRE Kaigi 2026とスタッフとしての役割
イベント概要
SRE Kaigi 2026は、SRE(Site Reliability Engineering)をテーマにした技術カンファレンスです。2026年1月31日(土)に開催され、800人以上が参加する大規模イベントで、オンライン配信も行われるハイブリッド形式でした。
会場の雰囲気はカジュアルで、参加者同士が活発に交流する様子が印象的でした。技術的な議論だけでなく、コミュニティとしての温かさを感じられるイベントです。
会場入口に設置されたSRE Kaigi 2026のスポンサーバナー
担当業務:スポンサーブースルームの運営サポート
私が担当したのは、スポンサーブースルームの運営サポートです。具体的な業務内容は以下の通りでした:
- 混雑時の誘導・入場制限判断:混雑状況を見て入場制限の要否を判断
- ブース前の列整理:参加者が快適に交流できるよう導線を維持
- ゴミ箱管理:ゴミ箱の状況確認と必要に応じた交換
スポンサーブースルームには10社のブースが出展されていました。スタンプラリーが実施されていたこともあり、参加者は各ブースを満遍なく巡回しており、特定のブースだけに人が集中するということはなく、全体として良い賑わいが生まれていました。一方で、セッション時間中はブースに立ち寄る参加者が少なくなり、セッション間の休憩時間に人が集中する波がありました。
こうした人の波があるため、一見シンプルな業務でも「この混み具合なら列整理が必要か?」「導線は今のままで大丈夫か?」といった現場での判断が常に求められました。幸い入場制限が必要になるほどの混雑には至りませんでしたが、状況は刻々と変わるため、気を抜ける時間はほとんどありませんでした。
休憩時間中のスポンサーブースルーム。多くの参加者がブースを巡回している様子
事前準備から当日まで
事前準備(当日スタッフの場合)
当日スタッフは、コアスタッフ(企画や運営を担う中心メンバー)とは異なり、イベント当日の現場サポートが主な役割です。そのため、事前準備は比較的コンパクトでした。
事前MTGは基本2回(希望者には個別対応)で、当日の流れ、担当業務の詳細、緊急時の連絡体制などを確認しました。MTGでは「分からないことがあったら、その場でコアスタッフや他のスタッフに聞いてください」という言葉が何度も強調されました。この「困ったら頼る」という姿勢が、当日の安心感につながりました。
当日のタイムライン
8:00 スタッフ集合
会場に到着し、他のスタッフと顔合わせ。緊張しましたが、すぐに他のスタッフが声をかけてくれて安心しました。
8:30-9:30 設営準備
前日の設営で未完了だった部分のサポート。設営が終わっていないスポンサーブースの設営、動線の変更などを手伝いました。
9:30 開場
いよいよ参加者が入場開始。最初は少しずつでしたが、徐々に人が増えていきます。
9:30-18:30 スポンサーブースルーム運営サポート
ここからが本番。混雑状況を見ながら、導線管理を行いました。この時間帯については、次の章で詳しく触れます。
12:00頃 休憩
運営側が用意してくれたお弁当を、他のスタッフと一緒に食べました。約30分の休憩で、体力を少しだけ回復。
18:30 撤収
イベント終了後、会場の片付けを行いました。この時点で実働約9時間半でした。
撤収後 懇親会
撤収後、懇親会に参加。スタッフ同士や参加者との交流を楽しみました。
一番大変だったこと:ドリンク持ち出し対応
想定外のトラブル
スポンサーブースルームでは、バリスタが淹れるドリンクが提供されていました。参加者にとって嬉しいサービスですが、ここで想定外の問題が発生しました。
会場ルール:ドリンクはルーム外への持ち出し禁止
このルールが参加者に十分に伝わっておらず、ドリンクを手に持ったまま他のセッション会場へ向かおうとする方が多かったのです。
最初は「こんなに持ち出す人が多いとは...」と戸惑いましたが、これが当日最大の課題となりました。
段階的な対処
ステップ1:立て札での注意喚起
まず試したのは、立て札による注意書きです。
飲み物の持出禁止
シンプルな文言で目立つ位置に設置しました。一定の効果はあったものの、急いでいる方や立て札に気づかない方も多く、持ち出しは続きました。
ステップ2:出入口での声がけ対応
「このままでは会場ルールが守れない」と判断し、より直接的なアプローチに切り替えました。ルームの出入口に立ち、ドリンクを持って出ようとする方に一人ひとり声をかけることにしました。
「すみません、飲み物の持ち出しができないので部屋内でお願いできますか?」
最初は「声をかけて嫌がられないか」と不安でしたが、ほとんどの方が「あ、すみません!」と笑顔で応じてくれました。中には「教えてくれてありがとう」と言ってくださる方もいて、ホッとしたことを覚えています。
この対応を、バリスタのドリンク提供が終了する16時15分まで(当初スケジュールでは17時までの予定でしたが、実際は早めに終了)続けました。
この経験から学んだこと
ルール周知の重要性
このルールが参加者に十分に伝わっていなかったため、現場での対応が必要になりました。イベント運営では、重要なルールを事前に周知し、さらに現場でも丁寧にフォローすることの大切さを実感しました。
段階的なアプローチの重要性
立て札→声がけと、段階的に対応をエスカレーションしたことで、参加者の体験を損なわずにルールを守ってもらえました。いきなり厳しい対応をするのではなく、状況を見ながら調整していく柔軟さが大切だと学びました。
判断のタイミング
「いつ、次の手を打つか」という判断が重要でした。立て札の効果を見極めつつ、「これ以上待つと問題が大きくなる」と感じた時点で声がけに切り替えたことが、結果的に適切だったと思います。
普段の業務との共通性
段階的に状況を見ながらアプローチを変えていくプロセスは、普段の業務でも同じだと感じました。社内でオブザーバビリティの改善活動を各サービスチームと進める中でも、いきなり大きな変更を求めるのではなく、まず現状を把握し、チームの反応を見ながら段階的に提案を進めることを意識しています。この「観察→判断→調整」のサイクルは、イベント運営でも業務でも共通する考え方だと感じました。
運営スタッフとして大切にしたこと
視野を広く持つ
スタッフとしてもっとも意識したのは、「視野を広く持つ」ことでした。
担当はスポンサーブースルームでしたが、それだけに集中するのではなく、周辺の状況にも常に気を配りました。例えば:
- 廊下の混雑状況:ブースルームへの導線が混雑していないか
- 他のスタッフの動き:サポートが必要そうな場面はないか
- 参加者の表情:困っている様子の方はいないか
担当外のことでも、気づいたことは積極的に動くようにしました。例えば、案内を探している参加者に声をかけたり、ゴミ箱の状況を気にかけたりと、小さなことでも自分から動ける場面は意外と多いものです。
参加者の声を聴く
もう一つ意識したのは、「参加者の声を聴く」ことです。
スタッフとして動いていると、自然と参加者同士の会話が耳に入ってきます。
「○○のブースってどこだっけ?」
「次のセッション、あと何分で始まるんだろう」
こういった会話を聞いたら、「何かお探しですか?」と自然に声をかけるようにしました。スタッフから話しかけることで、参加者も安心して質問してくれます。
困っている人が自分から「すみません」と声をかけてくるのを待つのではなく、こちらから気づいて動く。この姿勢が、イベント全体の体験を良くすることにつながると感じました。
印象に残ったブース
イベント中に印象に残った場面もありました。ホワイエに出展されていたMIXIさんのブースでは「SRE成熟度チェック」が用意されており、参加者がボードに診断チェックのシールを貼っていくスタイルでした。私自身、DMM内でオブザーバビリティ成熟度モデルを構築し、各サービスの成熟度を可視化する取り組みを展開しているため、同じ方向性の取り組みとして非常に興味深く感じました。
DMMでは現在、各サービスのオブザーバビリティ成熟度を可視化し、改善を促す取り組みを進めています。MIXIさんのブースで見た「参加型の成熟度チェック」は、チームを巻き込んだ自己診断のアプローチとして参考になりました。この着想は部内の定例会議でも共有し、社内展開の改善に向けた議論のきっかけとなりました。
こうした参加型のコンテンツは、ブースでの会話のきっかけにもなっており、スポンサーと参加者の交流を促進する良い仕掛けだと思いました。スタッフとして会場全体を見渡す立場にいたからこそ、こうした他社の工夫に気づけたのかもしれません。
嬉しかったエピソード
イベント終了後の懇親会で、嬉しい出来事がありました。
「あの、以前のイベントで登壇されていましたよね?」
一人の参加者が声をかけてくれたのです。過去のSRE関連イベントで私が登壇した内容を覚えていてくださり、「今日はスタッフとして参加されているんですね」と話が弾みました。
※過去のObservability Conference Tokyo 2025での登壇についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
登壇者としてイベントに関わった経験と、今回のスタッフとしての経験。両方の視点を持つことで、イベント運営の面白さや大変さがより深く理解できました。
この出来事を通じてあらためて感じたのは、スタッフという立場だからこそ生まれるつながりの価値です。参加者から見ると、スタッフは「話しかけやすい存在」。セッションの合間や懇親会で、普段なら話す機会のない方とも自然に会話できる。これはスタッフならではの特権だと感じました。
次回への改善点と展望
今回の経験を振り返り、次回やるなら改善したい点があります。
トラブル対応と参加者交流のバランス
ある程度動き回ることはできたものの、ドリンク持ち出し対応に注力したため、参加者との会話機会が限定的でした。もちろん目の前の業務を優先するのは当然ですが、トラブル対応の合間をもっとうまく活用できたのではないかと思います。
次回の目標
次回スタッフとして参加する機会があれば、より積極的に参加者と会話し、横のつながりを広げたいです。技術カンファレンスは、セッション内容だけでなく、人とのつながりが大きな価値を生みます。スタッフとしてその場を作る一員になれることに、大きなやりがいを感じています。
体験を社内に還元する
今回のスタッフ体験で得た知見は、部の定例会議で共有しました。イベント運営の裏側を知ることで得られた視点は、普段の業務にも応用できるものであり、こうした「外部での体験→社内へのフィードバック」のサイクルが、エンジニアとしての成長や組織の知見蓄積につながると感じています。
初めてイベントスタッフをやる人へ
これからイベントスタッフに挑戦しようと考えている方に向けて、今回の経験から得たアドバイスをまとめます。
心構え:「頼る」を前提にする
初めてのスタッフ参加でもっとも大切なのは、「困ったら頼る」を前提にすることです。
当日スタッフとして参画するのであれば、とにかくコアスタッフや他の当日スタッフの方を頼ってください。初めてはとにかく緊張しますが、「誰かを頼る」ということを念頭にしていれば、なんとかなります。
私も最初は「質問しすぎると迷惑かな」と遠慮していましたが、事前MTGで「分からないことは何でも聞いて」と言ってもらえたことで、安心して当日を迎えられました。すべてを完璧にこなそうとする必要はありません。「分からなければ聞く、困ったらすぐ相談する」——この姿勢こそが、結果的にイベント全体を支える力になります。
行動のコツ:積極的に話しかける
イベント参加者にとって、スタッフは特別な立場です。困っていても、参加者から声をかけるのはハードルが高いもの。だからこそ、スタッフから積極的に話しかけることが大切です。
「何かお探しですか?」
「お困りのことはありませんか?」
こういった一言が、参加者の体験を大きく変えます。
失敗を恐れない
声をかけて「大丈夫です」と言われることもあります。でも、それは失敗ではありません。「困ったときに声をかけやすいスタッフがいる」という安心感を作ることも、スタッフの重要な役割です。
準備のポイント
事前準備で特に意識すると良いポイントをいくつか挙げます:
事前MTGは積極的に参加する
- 当日の流れを頭に入れておくことで、安心感が違います
- 他のスタッフと事前に顔合わせできるのも大きなメリット
当日の持ち物
- スマホ(モバイルバッテリーや充電器も):連絡手段として必須
- サコッシュなど肩掛けできる小型バッグ:スマホやスタッフ業務で必要なものを持ち運びやすく、両手が空いて動きやすい
まとめ
SRE Kaigi 2026で当日スタッフを経験して、多くの学びを得ました。最後にポイントをまとめます:
スタッフ経験から得た3つの学び
現場での判断力の重要性
- マニュアル通りにいかない場面は必ずある
- 状況を見て、段階的にアプローチを変える柔軟さが必要
視野を広く持つことの価値
- 担当業務だけでなく、全体を見渡す意識
- 小さな気づきが、イベント体験を向上させる
スタッフならではのつながり
- 参加者から話しかけやすい存在
- 運営視点と参加者視点の両方を体験できる貴重な機会
次回のイベントスタッフ募集を見かけたら
もしあなたが「イベントスタッフ、やってみたいけど不安...」と思っているなら、ぜひ一歩踏み出してみてください。
初めてのことは誰でも不安です。でも、事前MTGでのサポート、当日の仲間との協力、そして何より「困ったら頼る」という姿勢があれば、必ず乗り越えられます。
スタッフとしてイベントに関わることで、参加者として楽しむだけでは得られない学びと、新しいつながりが生まれます。
次回、SRE関連イベントやその他の技術カンファレンスでスタッフ募集があったら、ぜひ応募してみてはいかがでしょうか。運営の裏側を知ることで、イベントの見方が変わり、コミュニティへの関わり方も深まるはずです。
スタッフとしてイベントに関わることで得られた知見は、参加者として楽しむだけでは得られないものでした。DMMのSREエンジニアとして、技術コミュニティとの接点から得た学びを社内に還元し、さらに発信していく。その循環が、個人の成長だけでなく組織の力にもなると実感した経験でした。
SRE Kaigi 2026のスタッフ全員集合写真。オレンジの法被がスタッフの目印
最後に、SRE Kaigi 2026の運営を支えたコアスタッフの皆さま、当日スタッフの仲間たち、そしてスポンサー企業の皆さまに感謝申し上げます。初めてのスタッフ参加でしたが、温かく迎え入れてくださったおかげで、安心して業務に臨むことができました。素晴らしいイベントに関われたことを、心から嬉しく思います。