
最近、会社が騒々しい。騒々しさの原因はアホだが、問題は深刻だ。多くの中小企業が直面している問題だ。ウチの会社は、昨今の新卒採用市場に合わせて新卒採用の条件を大幅に引き上げた。「大手に負けない」という心意気は良い。しかし残念ながら当社は中小企業。新卒の待遇を上げる一方で、既存の社員の待遇の底上げは行われなかった。その結果、新卒と中堅社員の給与がほぼ変わらないというアホな状況となりギスギスしているのである。とはいえ、新卒採用などで新しい力を入れていかなければ会社は衰退してしまう。新卒採用のために条件をよくするのは不可欠だ。ただ、中小は既存社員の待遇を底上げする体力に欠けている。大手や一流企業と同じ水準の待遇を約束しても、最近の若者は安定安全志向なので、中小はなかなか選ばれないのが悲しい。一方で中堅社員は面白くない。ほぼ同じ基準の給料をもらっている新人に対して「これくらいやってよ」的な態度を取り、新人は「冷たい職場だ」と嘆き、職場の雰囲気が悪化する。このままでは中小の未来はない。
僕が任されている営業部門は、新卒採用を中止している。中途採用は通年実施。残念ながら中途採用も人材不足だ。求める人材が来ない。応募してくるのは氷河期世代でキャリアが形成できていない40代50代や、定年退職後に生活に窮したおじさんが多い。業界経験と営業経験を求めているのにエントリーシートに「食品業界は知りませんがガッツだけはあります」「営業経験は皆無です。ただ笑顔とガッツには自信あり」などとガッツを売りにしてくるので困ってしまう。いつから中途採用が全日本ガッツ選手権になったのだろうか。求める基準に達しない人ばかりだ。で、慢性的な人員不足。
このような状況が続いているため年齢層が偏ってしまった。20代と30代前半がスカスカで、もっとも人数が多いのは50代後半以降。僕がリタイヤする10年後には、働きざかりといわれる30代40代が欠けているので事業継続が厳しくなるのは確定している。やばい。危機感を持っているなら、あの手この手の施策を打ち、人材を確保して、年齢構成を是正していけばいいのだけれども、僕が考えているのはせいぜい自分がリタイヤするまでの10年間会社を存続させることだ。若者は少なくなる一方だ(すでに少ないけど)。大手企業は必死に人材を確保しているが、従来の基準に満たない人間を好待遇で抱えているのでいつか重荷になるだろう。中小企業は新卒採用がさらに厳しくなり、衰退していく。日本の9割以上を占める中小企業が弱くなれば、大手企業の商品やサービスを買えなくなる。ジリ貧だ。
中小は、今をサバイブすることしか考えられない。将来や後の世代のことなんて考えられない。「冷たい」「無責任だ」と批判されそうだが、就職氷河期世代の僕に言わせれば「あの頃の我々への扱いに比べればマシですよ」になる。後の世代や未来の社会を考えなければいけない、と言われても、人間は自分の生きている時代に対して責任を持つことしかできないのだ。後の世代は後の世代が必死に考えればいい。もちろん、邪魔をするつもりはないし、負の遺産をわざわざつくるつもりもない。ただ、責任は持てないということ。自分が現役を去ったあとの時代に責任なんて持てます?よく政治家の皆さんが「後の世代に負の財産を遺さない」的な公約を掲げて選挙に臨んでいるのを最近よく目にするけれども、あれは今すぐの答え合わせを求められない、かつ、「未来を考えているよ」的なメッセージを打ち出せるので、大変に都合が良いのだ。いいかえれば無責任。
無責任に責任を持つなんて言うくらいなら、自分の属している世代と時代について全力で考えたい。各世代が自分たちの生きる時代に責任を持っていけば、リレーをつなぐようにうまくいくのではないかと考えている。会社ならば、自分が属しているあいだに会社と事業が存続すること、居場所を獲得し続けることを第一にやっていけばいい。各世代で分かり合えないことを分かり合って、各々の利益を守るように切磋琢磨していくことだ。
就職氷河期サバイバーの僕はこれまでどうにか生き残ってきたけれども、これからはどうなるかわからない。不透明だ。不安はあるけれども面白さも感じている。資本主義は、経済が成長するときにはうまくいくシステムだけれども、成長が止まったときにはうまくいかないシステムなのだね、これからどうなっていくのか、怖いもの見たさで楽しみだ。とりあえず、中小企業を取り巻く状況は不安定で見通しは明るくないけれども、自分の世代と現役でいられる時代については責任をもってやっていきたい。これから必要なのは僕が否定してきたガッツなのかもしれない。(所要時間24分)
