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白馬の節会を見に行く人々…枕草子と新古今和歌集より

枕草子」第三段は、正月一日の光景、七日の若菜摘みに続いて、同じ七日に宮中で行われる「白馬の節会」について、語られる。

 

白馬(あをうま)見にとて、里人(さとびと)は車きよげにしたてて見に行く。

 

中御門のとじきみ引き過ぐるほど、頭一所にゆるぎあひ、さし櫛も落ち、用意せねば折れなどして笑ふも、またをかし。

 

河添房江・津島知明 校註、訳「新訂 枕草子」上 (角川ソフィア文庫

 

【語釈】

  • 白馬(あをむま)…毛色が淡い青色を帯びた灰色の馬。白い馬。葦毛の馬。「白馬の節会」の略。
  • 白馬の節会…一月七日、邪気祓いのために、馬寮(めりょう)から21頭の白馬を引き出し、天皇がそれをご覧になったあと、宴会を催す儀式。
  • 里人(さとびと)…宮仕えをしていない人。あるいは、宮仕えをしているが、一時的にに実家に帰っている人。または、宮仕えをしている人の実家の人々。
  • きよげなり…すっきりと美しい。きちんとしている。立派で見事だ。
  • したつ(仕立つ)…(着物などを)きちんと仕立てる。作り上げる。支度する。飾りたてる。
  • 中御門(なかみかど)…待賢門。
  • 待賢門…平安京大内裏の東面の中央の問題。
  • とじきみ(戸閾)…門などの下部に仕切りとして渡した横木。
  • ゆるぐ…揺れ動く。
  • さし櫛…飾りとして髪に刺す櫛。
  • 用意す…気を配る。注意する。準備する。
  • また…再び。やはり、同じように。その他に、それとは別に。

 

清少納言の実体験に基づく話であるとすれば、まだ中宮定子に仕える前の、年若く「里人」だったころのエピソードなのかもしれない。

 

この部分で気になるのは、最後の「またをかし」の解釈だ。

 

「また」というのだから、「をかし」と評価する対象は、複数あることになる。

 

ここで語られているのは、次の二つだ。

 

  1. 実家住まいの人々が、車を立派に飾って見に行くこと。
  2. 車内での思わぬ頭突き事故で、櫛が折れるなどして大笑いすること。

 

宮中行事に触れる機会の少ない「里人」にとって、大内裏の中まで車を乗り入れられる「白馬の節会」は、まさに晴れの日であり、心躍る行事だったことだろう。

 

現場に向かうドライブ中も、ウキウキワクワクで、「をかし」かったことは間違いない。

 

待賢門まで来て、いよいよ大内裏に入るというので、期待がぐっと高まったところで車が大揺れ、頭ゴッチン、櫛ポッキリ。

 

箸が転んでもおかしい年頃の娘さんたちであれば、爆笑する場面かもしれない。

 

還暦過ぎの引きこもりオババ(私)なんかだと、「もうやだ、帰る」と、文句の一つも垂れるところだろうけれど、清少納言は、節会に向かうワクワク感だけでなく、車中での痛い珍事さえも、「をかし」と評価すべき、特別な出来事だったのだろう。

 

ひと目に触れることの少ない「里人」たる女性にとっての、晴れがましい公の場への外出。

 

格好よく整えた車の中での、めちゃくちゃ格好悪くて残念だけど、すごく笑える珍事。

 

前回の若菜摘みの場面にもあった、ギャップのある取り合わせが、ここでも披露されている。

 

 

【まるで怪しい意訳】

 

ホワイトホースフェスティバル、また名を「二十一頭の白馬たちによるエクソシズムの会」っていう、とっても縁起のいいらしいイベントを見学するというので、引きニートな私たちは、車をピッカピカに磨き上げて出かけていく。

 

行き先はもちろんパレス平安。

ドライブだけでもワクテカ状態。もう最高。

 

車がパレスのゲートを通過するときに、敷居みたいなのに乗り上げて、いきなりガクンと派手に揺れるから、相乗りしている人たち頭をごちーんとぶつけて、髪飾りは吹っ飛んで落ちるし、それをうっかり折っちゃったりして、痛いしガッカリだし、だけど、みんな笑いが止まらなくなっちゃって、それがまた、ほんとにおかしいの。

 

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AIのCopilotにイラストを依頼したら、こうなった。(´・ω・`)

 

だいぶ違うけど、楽しそうだから良しとする。

 

 

(_ _).。o○

 

「白馬の節会」に関する和歌を探したら、新古今和歌集に、臨場感のある詞書のついた歌があったので引用する。

 

延喜御時、女蔵人内匠、白馬節会見侍りけるに、車より紅の衣を出したりけるを、検非違使の糺さむとしければ、いひつかはしける

 

女蔵人内匠

 

大空に照るひの色をいさめても天の下には誰か住むべき

 

かくいへりければ、糺さずなりにけり

 

新古今和歌集」巻第十八 雑下 1745

 

 

【語釈】

  • 延喜…年号。901年〜923年。醍醐天皇の時代。
  • 女蔵人(にょくろうど)…宮中に仕える下級の女官。
  • 内匠(たくみ)…女蔵人の名前。
  • 紅の衣…深紅色の着物。
  • 検非違使(けびいし)…犯罪の取り締まりや訴訟などを扱う官。警察官と裁判官を兼ねたような役職。
  • 糾(ただ)す…正しくする。罪の有無を調べる。
  • ひの色…日の色と緋色とを掛けている。
  • 緋(ひ)…燃えるように濃く明るい朱色。
  • いさむ…禁止する。忠告する。

 

【多少怪しい意訳】

 

醍醐天皇の頃、女蔵人内匠という女性が、白馬の節会を見物に来て、乗っていた車から、禁止されている紅色の着物をチラ見せしていたのを、検非違使が取り締まろうとしたところ、 女蔵人内匠が詠んで渡した歌。

 

私の着物は「緋の色」。

青空に輝く太陽の色は「日の色」

発音すれば、どっちも「ひのいろ」。

 

あなたは「ひのいろ」は禁色だってお叱りになるけど、だったら太陽も取り締まらなくちゃ、筋が通らないわよね。

 

でも、太陽がなくなっちゃったら、地上には誰が住むっていうの?

 

こんな素敵な日に、堅苦しいことを言うのはやめて、お日様の下で楽しみましょうよ

 

このように言ったので、検非違使は女蔵人を取り締まるのをやめたのだった。

 

……

 

なんだか清少納言っぽいというか、食えない感じの女性だけれど、延喜の頃だというから、70年以上は前の人ということになる。

 

彼女も「枕草子」の「里人」たちのように、車で大内裏に乗り込んで、車の御簾の下から着物の裾などをチラ見せして、存在感を出していたのだろう。

 

車を駐車した場所は分からない。

白馬の節会の馬たちは、内裏の紫宸殿前の庭に集められたというけれど、女蔵人という、あまり身分の高くない女官の車が、そこまで乗り入れられたのかどうか。

 

けれども、検非違使が見回って、禁色をうるさく取り締まっていたというのだから、禁色の着用を許されるような、高貴な人々の集う紫宸殿前まで乗り入れていたのかもしれない。

 

 

In the era of Engi Lady Nyokurodo was watch- ing the White Horse Festival held on January 7, letting the hem of her red garment out on purpose from under the curtain of her car- riage, and was reproved by a police chief.

 

Hence this song:

 

If you forbid the color red, who can live underneath the sun?

 

Lady Nyokurodo 

 

「英訳 新古今和歌集本多平八郎訳 北星堂出版

 

【怪しい逆翻訳】

 

エンギ時代、帝国文書管理局の女性職員が、一月七日のホワイトホースフェスティバルを見物していて、乗っていた車のカーテンの下から赤いドレスの裾をわざと出していたら、警察署長に叱られた。

 

それで、この歌を歌った。

 

「もしもあなたが赤い色を禁止したら、誰が太陽の下で暮らせるというの?」

 

レディ・ニョクロード

 

 

……

 

AIのCopilotさんに英訳をイラスト化してもらったら、車がオープンすぎて、着物の裾以外も全部見えてしまっているし、どうみても延喜の時代じゃなさそうだけど、女蔵人内匠さんのイメージは、こんな感じだったかもしれない。

 



 

 

長くなってしまったので、前回の若菜摘みの記事についての補足と訂正は、また後日に。

 

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