万博が思っていたよりもずっと楽しかった。
4月平日に開幕券で少し安く入場し、もらった割引クーポンで通期パスを購入。その後、5月と6月の週末に妻と4歳児と、8月平日に一人でと、計4回足を運んだので振り返ってみたい。
正直、期待はしていなかった。IRの地ならしとして誘致したという維新の狙いは癪に障るし、空飛ぶ車、待ち時間ゼロといったトップダウンっぽい大言壮語、メタンガス対応の広報不足、ダモクレスの剣を思わせる石の日よけなど、不安要素ばかり目についていた。
それでも、今の日本の巨大プロジェクトがどの程度杜撰になるか直接見ておきたいのと、なにかインスピレーションを得ることができれば、というミーハーでよこしまな思いがあったけれど、いい意味で裏切られた。
最初に驚いたのは、あまり事前に写真をちゃんと見ていなかったこともあって木製の大屋根リングが想像よりはるかに大きく、思っていたより倍ほど高かったこと。下には日陰の歩道やベンチがあって、上からは淡路島や和歌山まで見える景色が広がり、みな楽しそうに歩いている。みたことはないけれど、カーバ神殿の巡回を連想した。

運営
チケットサイトや行列など、ケチをつけようと思えばいろいろ言えるが、ハコも運営もかなりよくできている。特に以下の点は素直にすごいと思う。
- デジタル化の徹底。現金ゼロを押し通し、紙パンフや地図の配布をしなかった判断
- 予約システムによる行列管理。(満足のいくものではないけれど)予約サービスで行列をある程度コントロールできている。人気パビリオンに行列が集中してもっと悲惨になると思っていた
- 大規模な来場者対応。東京ディズニーランドの倍以上の入場者をさばく仕組みを立ち上げたロジスティクス
- そこかしこにある子ども向けの遊具、多数のベンチ、トイレ、休憩施設は充実していた
- スタッフの質。感じの良いスタッフたち(一部海外パビリオン除く)。
- 建設。多数の複雑な建物やコンテンツを完成に間に合わせた(インドやネパール館を除く)。
これらは率直にすごい。デスマーチに近い状況だった現場も多数あっただろうけれど、これをつくりあげた現場力・プロジェクトマネジメント力は尊敬に値する。本当におつかれさまでした(じっさいに某企業パビリオンの準備で友人がくたびれていて心配)
(追記:あと工事費未払い問題は大問題なので運営ががんばって調整して泣き寝入りする業者をなくしてほしい)
体験と展示
そうたくさん見ることはできていないけれど各国のパビリオンも、建物・展示・コンテンツそれぞれに工夫が凝らされていた。国威発揚的な宣伝は目立ったものの、それも含めて各国の意図や、リソースのかけ方がすけてみえてそれぞれ個性的だった。見世物的側面はあるものの、日本にいながらこの体験ができるのは貴重だと思う。お金と人をかけた文化祭にも感じる。
初回訪問時、修学旅行で来ている未就学児から高校生まで、たくさんの子どもたちがはしゃぎまくっている姿が印象深かった。労働人口減少と資源高騰が進む日本で、これ以上のお祭りは生きている間にはないかもしれない。
そう安価ではないチケットで、食事も(比較的安価なところはあるとはいえ)安くはなく、グッズがすごい勢いで売れていて消費社会的なお祭りではあって踊らされ感はあるけれど・・・
- インドネシア館:熱帯雨林の湿り気、伝統武器や通路に掲示されたポートレート写真
- 静けさの森:喧騒を抜けて中央部に入ると一気に静かになった。最短経路にならないような道路設計で移動利用が少ないようにしていそう。とんぼや生い茂る野草は残ってほしい
- null2(落合陽一):外観の異様さ・衒学的・幻惑的な問いかけ
- イタリアパビリオン:映像、アトラス、カラヴァッジョ、特許、そして屋上からの夕暮れ
- better co-being:屋外での鑑賞体験と、村田製作所デバイスの感触(それによって1度の参加人数は9人で回転は少なそうだけれど)
いのちめぐる冒険(河森正治)の、予約なしゾーンにあった様々なカビや、モンゴル(commons)での兜の展示、パレスチナのオパールの宮殿、ウクライナの展示の無言の圧、ペルー館でのシパン王の遺物(全く知らなかったが迫力があった)などもよかった。




輪島塗の夜の地球は、出展予定だったイランが撤退後、これを展示した判断や交渉はすごいと思う。
テーマについて
ただ「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマへの回答はあまり感じられなかった。倫理の限界に挑戦するようなテクノロジー、もう少し踏み込んだ内容を期待していた。石黒浩先生の「いのちの未来」の最後の問い*1、落合陽一「null2」は衒学的だけれど対話は思考実験としてはよかった。
食事
- 北欧館:和食要素を用いた料理(ディルと柚子胡椒を味付けに使ったスカーゲンが良かった。高かったけど・・・)
- アフリカンレストラン:生演奏とマフェ(高かったけど・・・)
- インド館:香り、雑貨屋のお兄さんとの金額交渉。馬の壁掛けを見ていたら「not brass, bronze!」と言われた
- エスニックフュージョンレストランでの壺ビリヤニ:素焼きの器をもらえるのよかった
いろいろ高いと書いたけれど、安いところもたくさんあるし持ち込み自由なのはおおらかでよい。


妻はフランス館でコース料理を食してかなり良かったそう(価格は聞いていない)
その他よかったこと
- 年長組の幼稚園児たちがアスレチック遊具で全力で遊ぶ姿
- 小学生たちが静けさ森北東部の起伏で遊びまくる様子
- 中学生男子がインドネシア館の行列で外国人スタッフとたどたどしい英語で笑顔でコミュニケーションしていたこと
- 高校生女子がみゃくみゃく眼鏡でテンションが上がっている場面
- 入場ゲートの行列で近くの人と世間話や情報交換
- 友人の会社の取引先が万博でどこどこ館の音響を受注して盛り返したという話とか
- 付き合いだした友人カップルが万博で急速に仲を深めていること
- 農林水産省が「未来につなぐ食と風土」という展示をやっていたり、突然こじまよしおさんが出てきていたり、いろんなイベントが開催されていてよい
- 77歳で、70年万博ではパンフレットを売るバイト(パビリオンスタッフと比べて最下級だったとのこと)をしていたという妻の母が万博にいく準備をサポートした。パビリオンはアゼルバイジャンくらいしか行かなかったけれど歩くだけでかなり楽しく気が晴れたそう。一番おもしろかったのは、同級生LINEグループで万博に行くと書くと、「ぼく、その日前立腺の手術や」と友人が返信していたこと(手術は無事成功したそうです)
子連れ
子連れは難しいけれど、5歳児だと遊び場やCommonsを巡るだけでも楽しい。 遊び場はシグネチャーパビリオン中心の霧、フランス館前のアスレチック、屋内だと遊んでい館、WASSEの南のトランポリンドームとかが好き。日陰で待ちやすいし、体験も楽しい台湾(Tech World)・ドイツあたりがおすすめかもだけどパビリオン自体あまり回れていないのでおすすめは知りたい。

これから行く人へのアドバイス
自分はまだ4回訪問だけど、ドはまりした妻が10回以上通って友人たちやインターネットで高速に情報交換・試行錯誤しており知見を共有してくれているのでそれらの知識をもとに、主観ではありますが未体験者を念頭に書いてみます。
- できたら平日、早い時間に予約をいれる
- 入場時間について並び始めるとかなり待つので、予約時間からある程度たってから入るほうがゲートでの待ちは少ないかも
- 7日前予約を入れる。人気の高いところ(null2、イタリア館、住友など)はなかなか当たらないので、トップ人気を外して第1希望に入れた方がいいかもしれない
- 3日前の0時に空き枠予約する
- 当日予約:こまめにチェックするといいが、振り回されすぎないよう注意
- 予約がとれなくとも、Commonsや静けさの森、各パビリオンを歩くだけでも楽しい。
- 食事:各国パビリオンは趣向があっておいしいけれど、行列があったり高かったりする。西の果てのエスニックフュージョンレストランやリングサイドマーケットプレイスなどの多国籍料理は回転が良くて入りやすいかも
- 複数人だと当日予約はかなり難しい。
- 遅い時間の東ゲートはめちゃ混むかも。イベントのある日は要注意。19時あたりの西ゲートのバスはわりといつも快適。
- 帽子と軽い日傘、歩きやすい靴、モバイルバッテリーがあればなんとかなりそう。あと携帯できるイス(入場ゲートで並ぶとき用)とか
遠方からなんとか1回来るなかでたくさんまわりたいという方は、行きたいパビリオンのあるほうに近いゲートの9時予約をとって、なるべく早く行くことをおすすめします。休憩できる日陰はたくさんあるし風は通るけれど、熱中症にはご注意ください。
最後に
妻は開幕から最初の1か月は万博にまったく興味を示していなかったけれど、自分や友人から話を聞いて行ってからドハマりし、10回以上通って楽しんでいます。妻とその友人たちは万博を広いビアガーデンだと思っている様子で、最初教えてくれてありがとう、と言っております。おまつり的であることのほか、(期間の)限定性、攻略性と競争性のほか、チケットの抽選が射幸心を煽っていることがハマらせているような気がする。コミュニティで攻略している感は、MMORPGを連想するしいろんな人と万博体験を語りたい気がする。未来社会のデザインについて語りたいのでお気軽にお声掛けください

















なんか楽しげだった

入れてはいない

*1:手段は伴っていないけれど
