めぐりつつどうしたものかわたしがいないそんな朝すら愛しくおも
仮面劇 真昼の稽古眺めつつ役者のひとりわれは恋する
ながゆめのさなかになにか落ちて来る ぼくの知らないくちびるなんか
去りながらことばを噤む いつかまた会えないことを労りながら
かつてまだ幼いわたし 心臓の音楽を聴くパルティータかな
なべて世はいかがわしきを是といいてわれまたみずからを惑せる
ひと知れずゆくえ知れずの道がまた荊のなかに始まってゐる
長き夜の光りのありか公園を一周まわって惑星を観る
ながら寝の真昼よ星よ一冊の文庫本すらきょうも読めない
とまどいのなかにかくれて暮らしてるきみに似てるなあの猫なんて
明け方のギター それはぼくにとっての魔法たりえる
ないがしろにされた犬たちが都会を歩く 比喩なき夢
そしてまたひとが消え入る芒原 わたしの足がそこにつづいて
いずれにせよ、きみが焼き肉食べてるときがいちばん好きだ
ひとりだけ咎を憶える給食の最後の者になりさえすれば
きのうすら憶えられない教科書のページいちまいかまどに焼べる
閉鎖病棟の暗がり 男がひとり唱えたる地動説などわたしは信ず
単語帳ひろげる少女 欄干のはじにすわったひとたちが飛ぶ
星ひとつささやく路上 あぶなげなわたしの過去をすべて奪って
めぐって、めぐって、いつかきみの棲む街にゆきたいある日の夕べ