こちらは、「Wake Up, Girls! Advent Calendar 2025」8日目の日記です。いつも以上にイミフなタイトルでお届けしております。
WUGの七人の名前は、声優と同じ読みになっていますが、苗字は黒澤明監督の映画「七人の侍」に由来しています。映画の音楽を担当されたのは、仙台出身の早坂文雄さん。
性格や外見面での共通点はない、とWikipedia先生はおっしゃっていて、まぁむくつけき浪人と花も恥らう乙女の見た目が似ていても困るのですが、たとえばグループの中での役割、立ち位置などはどうか、というのを考えるのがこの記事の趣旨です。そして今回も結論は出ません。
「七人の侍」は3時間以上の長編ではありますが、まだ御覧になっていない方はぜひ一度。見づらい、聞きづらいという点も、リマスター版では改善されているみたいですし。すでに御覧になっている方が当記事をお読みになる際は「こいつ今さらとんちんかんなこと抜かしてるな」と草を生やして御笑覧あれ。ちなみに私は、SAMURAI7→七人のアイドル→七人の侍の順番で観ました。なお、荒野の七人は未履修です。
核心に触れるようなことは避けるつもりですが、「七人の侍」と(これまで特にことわっていませんでしたが)「Wake Up, Girls!」のネタバレになる可能性がありますので御注意のほど。
それから、「あいちゃん」だと「藍ちゃん」なのか「愛ちゃん」なのか「サメのアイちゃん」なのか、「林田さん」もサムライサイドなのかアイドルサイドなのかがはっきりしないため、敬称略で記していきます。
WUGちゃんの方は省きますが、侍の方は名前だけでも先に紹介させていただきます。画像は著作権やらなんやらがこわいので、各自でお探しいただると幸いですが、草の上で七人が佇んでいる例の写真の並びで、左から片山五郎兵衛、菊千代、その隣が前列に岡本勝四郎、後列に七郎次、林田平八、島田勘兵衛、一番右が久蔵となっています。
この写真をモチーフにしたWUG版もありまして、左から久海菜々美、島田真夢、その隣が前列に片山実波、後列に林田藍里、岡本未夕、七瀬佳乃、一番右が菊間夏夜の順番です。
苗字がない組は「菊」「七」「久」と名前の一字を賜ったわけですが、菊間さんは有名人でもいらっしゃいますし、七瀬さんもジッチャンの名にかけての方などがいる中、久海さんはなかなか興味深い。「ひさみななみ」という響きのためかもしれませんが、「七海」「美海」にもある「海」の字は、wugというグループを考える上では大切なのでしょう。菊「池」さんとかだったら、「瀬」も含めてさんずい統一で、竜宮小町チックではありましたが。
前置きが長くなりましたが、それぞれの組合せを見ていくと、まずしっくりくるのは、やはり島田+真夢でしょうか。勘兵衛とよっぴーは、リーダー像としては異なる気がするので、経験豊富なグループの牽引役ということでは、ほぼ一択か。
翻って真夢側から見ると、最後に加入したという点で菊千代とか(前述の並びでも同じ位置ですし)、腕前的には久蔵とかもいけなくはなさそうですが、まぁ島田勘兵衛ですよね。
その久蔵と菜々美のマッチングも、さもありなん。ストイック。プロフェッショナル。天才肌。一匹狼。己の信じた道を征け。一見とっつきにくそうにも見えて、仲間を大切にするあたたかさも持ち合わせている。宮本武蔵がモデルで、十三代目石川五ェ門のモデルともされている久蔵、推せます。
毛並みの良い最年少という岡本勝四郎との共通項もありますが、実力が違いますよと各方面からお叱りが飛んできそう。
力量という点でくっついたのでは、と当初考えていたのが藍里の林田。bvexのクラス分けでCだった藍里でしたが、林田平八は(彼をスカウトした片山五郎兵衛曰く)腕は中の下。同時に、正直で面白く、苦しいときに重宝するとも五郎兵衛は評しています。黒澤監督の創作ノートでは、エンジン・オイルの役目という記載が。
冗談を言ったり、ふざけたり、といったやり方ではないですが、こまかくよく気がつき、円滑に回るようにすることにかけては、藍里も引けを取りません。ある人物(久蔵ではないですが)の話を平八が聞こうとする場面で、「これ、BtBのちゃーむずでやったやつだ」と立ち上がったり座ったり。高いところで翻るものがほしい、と旗を作ったのは平八。WUGらしさとして「真摯であること、正直であること、一生懸命であること」と掲げたのが藍里。とりあえず藍里が戻ってきて良かった。ほんと。
腕は中の下、とされた平八ですが、敵に奇襲をかける場面を見ても、そこそこやりおるはず。未熟という意味では、岡本勝四郎の方が印象的ではないでしょうか。高木さんは最年少ですが、未夕はむしろ年長組。とはいえ、泣き虫でヘタレで末っ子気質というか、ちょっと浮ついた(ワシですし)ところがあるというか、相通じる部分は多いかも。あと恋バナとか好きそう。
なにより憧憬ですよね。侍への憧れ。アイドルへの憧れ。まぶしいくらいにまっすぐな。勘兵衛と勝四郎とは師弟関係と呼んでも差し支えないと思いますが、未夕も、真夢というかI-1clubを心の師としてそう。そして、勘兵衛が勝四郎に「わしもお前と同じ年頃だったことはある」と語ったように、メイドin仙台であったかいなとつぶやいた真夢は、ステージに立つ未夕に、かつての自分を重ねることはあったのでしょうか。
師弟関係が勝四郎なら、勘兵衛と主従関係にあるのが七郎次。誰が呼んだか古女房。まゆあい派だから主張するわけではないのですが、どちらかというと藍里の立ち位置な気がするんですよ。いや、藍里が従属的ということではないのですが、ときに真夢ともぶつかる佳乃は、フラットなつながりととらえると、むしろ片山五郎兵衛寄りなんじゃないかと。余談ですが、七郎次水源なる湧水があるらしいですよ。熊本に。
ただ、七郎次の特徴の中で、佳乃が藍里を上回っているのが、踏んだ場数の数。全国区とローカルで、同じ現場にはいなかったかもですが、芸能界という戦場を潜り抜けてきたという共通体験。実は、佳乃より真夢の近くにいて、藍里に近いスタンスの方もいるんですけど。その名はよしめぐ。今さらですが、吉川愛の中には「吉」と「愛」があるんですね。
いよいよ菊千代と片山五郎兵衛に取りかかりますが、まずは二人を対比させて考えてみます。黒澤ノートの人物設定で、最も多く紙幅を費やされているのが菊千代。で、最も少ないのが五郎兵衛。
菊千代役の三船敏郎さんは、当初久蔵の予定でしたが、つなぎの役目、ジョーカーとして菊千代というキャラクターが生まれたということです。名前も善兵衛というのが後々変わっていったとか。
前述の平八が作る旗には、六つの○と一つの△が描かれるのですが、この△こそキーパーソンである菊千代。草の上の写真でも、一番目立つ位置にいるのが菊千代であり、真夢なんですよね。ノートでも、元は久蔵の欄に書かれて消されたメモが、菊千代の属性として復活していたり、あるいは馬から落っこちるといった、平八が担うはずだったコメディリリーフの動きまで流用されていたりと、生き生きとした造形になっています。
片や片山五郎兵衛。ノート段階では深掘りされているとは言い難く、演じた稲葉義男さんは、芸歴も比較的浅いということもあって、何かと苦労もあったようです。
乱暴に分けてしまえば、感性、盛り上げ、子供側の菊千代と、理性、落ち着き、大人側の五郎兵衛とするなら、実波が前者、夏夜が後者、なんじゃないかとずっと悩んできました。
また草の上の写真の話になりますが、五郎兵衛が夏夜だったら、両翼を固める五郎兵衛と久蔵、夏夜と菜々美が、左右反転させることで重なるんだけどなぁ。ノートでも五郎兵衛には副将の重みがあると書かれていますし。ち、違います、重みってそういうことではないので。長靴を投げんでくださいサブリーダー。
と、ここで終わったらそれまでなんですが、もう少しお付き合いください。そもそも、七人の侍のあらすじすら示していませんでしたが、ざっくりもざっくりで言うと、野伏せりと呼ばれるやせいのサムライの襲撃を受けている村人が、戦ってくれるサムライをゲットしにいく、というところから始まります。村人に頼まれて最初に引き受けたのが勘兵衛で、その勘兵衛自ら引き入れたのが、五郎兵衛、七郎次、そして久蔵です。採用するシーンが塚原卜伝の逸話をベースにしていることからも分かるように、五郎兵衛も相当な遣い手なわけですよ。
WUGでは真夢は誘われる側でしたが、丹下社長が自分でスカウトしたメンバーは、そう、実波と佳乃でしたね。久蔵は、うん、もうそういうのを飛び越えた存在だから。ともかく、実波も実力者だってことですよ。のど自慢でも優勝していますものね。
タチアガレ!6人ver.ではセンターで歌った実波。黒澤ノートでは、勘兵衛の小型にならぬよう、という注意がある五郎兵衛ですが、仮に勘兵衛が不在となったとき、代わりが務まる可能性があるとすれば、それは久蔵でも七郎次でもなくて五郎兵衛なのでしょう。
そして勘兵衛の小型とは言わせない、五郎兵衛ならではの要素。勘兵衛は全体を率いるため、ときに厳しく振る舞うことも求められますが、五郎兵衛は村人に対しても終始おだやか。笑顔、となると平八も実波に通じるものがありますが、その平八を連れてきた五郎兵衛もまた、苦しいとき、シンドイ季節のスマイルの重要性は知っていたはず。
さぁ菊千代だ。先に述べたように、彼が占める役割は非常に重要なのですが、特筆すべきはブレイクする力だと見ています。ぶつかって、ひっかきまわして、離れていた関係が混じり合い、止まっていた物語が動き出す。
エネルギッシュさでは、実波も十分要件を満たしていますが、菊千代はさらにパワフル。でも、夏夜も、秘めた力は計り知れないとしても、それを前面に出していくタイプではないような。ストーリーの中でも、どちらかといえば後列で見守っているポジションだと見ていました。「ここで生きる」までは。
また話が逸れますが、「七人のアイドル」の後のテレビシリーズも、サブタイトルが黒澤作品から名付けられています。「乱」から「波乱」とか、「羅生門」からの「登竜門」とか。そして9話の元になった「生きる」、勘兵衛を演じた志村喬さんが主役ですが、さすが名優、まったく違う顔を見せています。音楽も安定の早坂文雄さん。何と言っても、ブランコをこぎながら歌を口ずさむシーンは、よければ、必ず、御覧ください。大空のプリズムを諦めない。

その9話。夏夜が提案した合宿は、そして彼女の告白は、真夢の壁を壊しただけではなく、佳乃や菜々美たちの心も動かしたわけで。すげえよかやは。考えてみると、七人の侍でも、自ら己の過去について語ったのは、勘兵衛と、菊千代でした。

いやぁ、敵側とかも考察したいのはやまやまですが、いい加減長くなりすぎました。少なくとも、野伏せり=I-1、ではないのでしょうね。じゃあ何なんだ、と言われると困るのですが、何というか理不尽そのもの、というか。いろいろなしがらみだったり、大人の事情と呼ばれるものだったり、それから災害も。
それと、菊千代の△問題も棚上げ状態。この問題だけで考えると、菊千代に近いのは未夕になる気もするのですが。
村人に対応するところも、ワグナー、だけよりはもっと広範に感じられます。シンプルに七人の侍の味方、支援者というだけでは片付けられない、この村人という役どころが、あれやこれやの鍵になってくれそうなのですが、とりあえずは、そこにつながる、かもしれない戯言を最後にひとつだけ。
とある場面で勘兵衛は「今度もまた、負け戦」「○○しか勝たん」と言います。ごめんなさい後半は言ってません。
さてさて、それでは真夢の辿ってきた道も敗けばかりだったのでしょうか。そして、Wake Up, Girls!という物語で、勝ったのは誰なのか。そもそも勝者と敗者がいるのかどうか。やれやれ。今度もまた、結論は出なかったな。
参考文献
黒澤 明「七人の侍」創作ノート 黒澤 明/著 文藝春秋 2010年8月
「七人の侍」と現代 四方田 犬彦/著 岩波書店 2010年6月
複眼の映像 橋本 忍/著 文藝春秋 2006年6月