「万事快調<オール・グリーンズ>」
2026年1月24日(土)池袋シネマ・ロサにて。午後3時30分より鑑賞(CINEMA ROSA2/C-10)
~どん詰まりの閉塞感をぶち破れ!今の時代ならではの突き抜けた青春映画

第28回松本清張賞を受賞した波木銅の同名小説を「猿楽町で会いましょう」の児山隆監督が映画化した「万事快調<オール・グリーンズ>」。女子高生3人が現在地からの脱出を目指して危険な行為に手を染めるドラマだ
舞台は、茨城県東海村。言わずと知れた原発の村。そこで暮らす高校生の朴秀美(南沙良)は、底辺校の工業高校の機械科に通っていた。家は父親の暴力により崩壊状態。学校でも居場所がない。
そんな彼女は毎晩好きなラップで憂さを晴らす。ところが、そのラップ絡みで地元の有名ラッパーとトラブルになり、彼に重傷を負わせてしまう。その隙に彼の持っていた大麻の種を持ち去る。
一方、同じ学校の矢口美流紅(出口夏希)は、陸上部で足が速く友達もたくさんいた。いわゆるスクールカーストの上位にいる生徒。秀美とは大違いだった。ところが、美流紅は授業で機械に手を挟まれて指を切断してしまう。それをきっかけにスクールカースト上位から転落してしまう。
それまで仲の悪かった秀美と美流紅は急激に接近する。美流紅も家庭に問題を抱えていた。原発に勤める父親が亡くなり、そのショックと震災が影響して母親がおかしくなってしまったのだ。秀美と美流紅は、この村を出たくて仕方なかった。それでなければ未来は開かれないと感じていた。
そして、もう1人、岩隈真子(吉田美月喜)。漫画好きで毒舌。家では、一人娘ゆえに農家を営む両親から婿養子をとるように言われている。彼女もこの村を出たくて仕方がなかった。
こうして3人は村を出る資金稼ぎのため、園芸同好会「オール・グリーンズ」を結成して、秀美の持っていた大麻の種を学校の屋上で栽培し始める。
全体のタッチは秀美の独白に象徴されるようにシニカル。そしてドライ。冷めた目で現実を見ている。しかし、下手をすれば暗いドラマになりそうな話なのに、そうはならない。むしろ明るくユーモアに満ちている。
3人の思いはピュアだ。やっていることは犯罪なのだが、3人にほとんど罪悪感はない。昔だったら、権力や体制への反抗なども動機になるのだろうが、それもない。その代わり、どん底で先の見通せないクソったれの現在地を脱出するために、ひたすら前に突き進む。その潔さが痛快だ。
とはいえ、あまりにも無謀なことゆえ危険な目にもあう。東京で3人は痛い目を見る。そして、終盤では抜き差しならない事態に至る。それでも秀美は驚愕の行動に出る。卒業式と屋上のカオスがリンクした展開から、最後は秀美の疾走へと雪崩れ込む。
最後に3人のその後なども描きつつ終幕。と思ったら、その後のひと言も気が利いている。いやぁ、してやられた。面白過ぎる。
秀美の心の内を表現したラップもいい味を出しているし、美流紅が映画好きということもあって映画ネタもたっぷり。長谷川和彦監督、沢田研二主演で東海村も出てくる「太陽を盗んだ男」もネタとして登場する。
朴秀美を演じた南沙良、矢口美流紅を演じた出口夏希、岩隈真子を演じた吉田美月喜も素晴らしい。3人ともテレビドラマや映画で活躍しているようだが、本作は彼女たちにとっても新たな魅力発揮の一作になっていると思う。
今の時代ならではの突き抜けた青春映画の快作だ。
◆「万事快調<オール・グリーンズ>」
(2026年 日本)(上映時間1時間59分)
監督・脚本・編集:児山隆
出演:南沙良、出口夏希、吉田美月喜、羽村仁成、黒崎煌代、大政凜、櫻井健人、小坂竜士、池田良、Pecori、和田庵、テイ龍進、松岡依都美、安藤裕子、金子大地
*新宿ピカデリーほかにて公開中
公式ホームページ https://www.culture-pub.jp/allgreens/
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