以下の内容はhttps://cinemaking.hatenablog.com/entry/2025/10/09/105420より取得しました。


「ジュリーは沈黙したままで」

「ジュリーは沈黙したままで」
2025年10月4日(土)新宿シネマカリテにて。午後4時25分より鑑賞(スクリーン1/A-8)

~沈黙を続ける15歳のテニス選手。彼女はなぜ沈黙するのか

 

残念ながら来年1月に閉館になる新宿シネマカリテ。そこでこの日観たのは「ジェリーは沈黙したままで」。ベルギーの新鋭レオナルド・ヴァン・デイル監督の作品だ。

スポーツ指導者の行き過ぎた指導(それはもはや指導と呼べるものではないが)がたびたび問題になる。映画などでもこうしたテーマが描かれることがある。だが、この映画のユニークな点は問題となった指導を直接的には描かないことだ。

カメラは主人公の15歳のテニス選手のジュリー(テッサ・ヴァン・デン・ブルック)に焦点を絞って、その姿を淡々と追う。彼女は奨学金をもらうほどの有能な選手で、学校に通いながらテニスクラブに所属していた。学校で授業を受け、テニスクラブで黙々とトレーニングするジュリー。だが、その表情はどこか不安げだ。

この映画には、説明らしい説明はないのだが、次第にわかってくることがある。ジュリーと同じテニスクラブに所属していた選手が自殺し、コーチのジェレミーの指導に原因があったのではないかという疑惑が浮上したのだ。つまり、すでに問題が発生した後からドラマが始まるのである。

ジェレミーは指導停止処分になる。彼はジュリーの担当コーチでもあった。しかも、2人は最も距離が近かったらしい。

クラブは真相究明のために選手から聞き取り調査を始める。当然、ジュリーにも話を聞こうとするが彼女はそれに応じず、日々のトレーニングに集中しようとする。なぜなのか?

それは観客が想像するしかない。そうした説明は意図的に避けた映画なのだ。その分、カメラは徹底的にジュリーを追いかける。そこから彼女の揺れ動く心の内がリアルに伝わってくる。

おそらくジェリーはジェレミーへの信頼と感謝の気持ちを持っているのだろう。だが、それが絶対的なものだとは限らない。彼の指導法への疑念もあるのではないか。もしかしたら、何かハラスメント的な行為があったのかもしれない。ジュリーの沈黙はジェレミーを恐れてのことなのか? 色々と想像させるが、彼女の心が様々な場所を行きつ戻りつしているのは確かである。

コーチのジェリーがどんな指導を行っていたかは描かれない。しかし、ジュリーの沈黙の理由のヒントになる場面がある。実はジュリーは新しいコーチのバッキーがついたにもかかわらず、いまだにジェレミーSNSや電話で連絡を取っていた。それどころかたった1度だけだが、直接彼と会う場面が登場する。そこでのジェレミーは自己弁護のようなことを言い、バッキーを無能呼ばわりする。そこまではともかく最後の瞬間のジェレミーの態度は、コーチと選手が主従関係にあったことをうかがわせ、底知れぬ怖さを感じさせた。もしかしたら、コイツやっぱり……と思わされてしまうのだった。

ジュリーは新しいコーチのバッキーに対して当初は心を許さない。それはジェレミーの言葉に従ったものだろう。テニス協会の選抜テストに参加する際も、バッキーを伴わず父親に付き添ってもらう。しかし、バッキーの指導を受けるうちに、次第に心を開いていく。

ジュリーはその後も学校での勉強とテニスを続ける。しかし、クラブからの聞き取りには依然として応じない。その間の彼女に笑顔はほとんどない。暗い顔をしていることの方が多い。

ただし、クラブの友人たちとクラブ対抗戦の試合に出て、友人宅で楽しく過ごす時間の中で、いかにも15歳らしい笑顔を見せることもある。全編に渡って緊張感に包まれた本作の中で、わずかにホッとする瞬間だ。それでも、その後も彼女の心は揺れ続ける。まだ幼いジュリーが追い込まれた環境の過酷さが、そこからうかがえる。

そんなジュリーを依然としてカメラが冷徹に静かに追いかける。その筆致は本作の共同プロデューサーを務めるダルデンヌ兄弟の作品と共通するものを感じる。被写体につかず離れつしながら、その胸の内を暴き出し、観客に問題提起をする。

ちなみに、本作のエグゼクティブプロデューサーには、テニス選手の大坂なおみも名を連ねている。おそらく彼女は、現実のテニス界の問題をこの映画に感じ取ったのではないだろうか。

ジェレミーが聞き取りに応じない中、ジェレミーは解雇されてしまう。そんな中、ジュリーは再度テニス協会のテストに参加する。前回は合格できなかったのだ。今回は前回と違いバッキーに同行してもらう。

その結果は伏せるものの、彼女の心の内は簡単には落ち着かない。いわゆる起承転結のようなメリハリはないドラマで、ジュリーの心も揺れ続ける。それでも、最後の場面で友人たちやバッキーに交じって見せる彼女の無邪気な笑顔が、微かな未来への希望の光を感じさせた。

主役のジュリーを演じたテッサ・ヴァン・デン・ブルックが見事な演技を披露している。オーディションで選ばれた新人だそうだが、その変化の乏しい表情の裏で秘めた思いを確かに感じさせる演技だった。彼女はテニス選手としても活躍しているそうで、なるほど劇中のテニスもなかなかの腕前だった。

けっして派手な映画ではないが、最後まで目が離せなかった。レオナルド・ヴァン・デイル監督の確かな手腕を感じさせる作品だった。

◆「ジュリーは沈黙したままで」(JULIE ZWIJGT/JULIE KEEPS QUIET)
(2024年 ベルギー・スウェーデン)(上映時間1時間40分)
監督:レオナルド・ヴァン・デイル
出演:テッサ・ヴァン・デン・ブルック、クレール・ボドソン、ルト・ベククアルト、ローラン・カロン、ピエール・ジェルヴェ、ケーン・デ・ボーウ
*新宿シネマカリテほかにて公開中
公式ホームページ https://odessa-e.co.jp/julie_keeps_quiet/
(外部のサイトに移動します。外部のサイトの内容については責任を負いませんので)

 


www.youtube.com

 

*はてなブログの映画グループに参加しています。よろしかったらクリックを。

 

*にほんブログ村に参加しています。こちらもよろしかったらクリックを。

にほんブログ村 映画ブログへ にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村 




以上の内容はhttps://cinemaking.hatenablog.com/entry/2025/10/09/105420より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14