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「ファンファーレ!ふたつの音」

「ファンファーレ!ふたつの音」
2025年9月26日(金)シネ・リーブル池袋にて。午後12時25分より鑑賞(シアター2/C-5)

~行き別れた兄弟が音楽でつながる。前向きで温かな秀作

 

「ファンファーレ!ふたつの音」は、フランスで260万人動員、3週連続No.1を記録、セザール賞主要7部門ノミネート、各国の映画祭で観客賞をはじめ数々の賞を受賞した。監督は「アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台」のエマニュエル・クールコル。

映画の冒頭はオーケストラの練習風景。世界を飛び回るスター指揮者のティボ(バンジャマン・ラヴェルネ)が熱心に指導している。だが、ティボは突然倒れてしまう。まもなく、彼は白血病であることが明らかになる。

ティボは妹に骨髄移植のドナーになってもらおうと考えて、適合検査を受けてもらう。だが、妹は不適合。それどころかティボと血のつながりがないことが明らかになってしまう。ティボは養子だったのだ。しかも、彼には幼くして別れた弟がいたのである。

白血病、ドナー探し、行き別れた弟とくれば、お涙頂戴のウェットなドラマになってもおかしくない。ところが、この映画にはそうした場面はあまりない。ティボが白血病を告げられる場面や、弟探しの場面、さらには骨髄移植の経緯も割愛するか、サラっとしか描かれないのだ。その代わり、行き別れた兄弟の葛藤と絆をユーモアを交えて生き生きと描く。

行き別れた弟のジミー(ピエール・ロタン)は昔の炭鉱町の学食で働いている。言葉といい態度といい無骨な男だ。一方の兄ティボはまさしく洗練された男。そんな兄が突然訪れて「兄弟だ」と告げたものだから、ジミーは大ショックで受け入れられない。それでも義母の説得で骨髄移植に同意する。

移植後も、最初は2人はぎくしゃくしている。そんな中、ティボはジミーが町の吹奏楽団でトロンボーンを吹いているのを目撃する。しかも、彼は音楽が大好きでレコードもたくさん持っていた。さらに彼には絶対音感があったのだ。

2人の心が近づくきっかけとして使われる、リー・モーガンとアートブレイキーのコラボ「クリフォードの想い出」のレコードがとてもいい。本作では、数々の場面で音楽が重要な役割を担っている。クラシックはもちろん、ジャズやシャンソンなど幅広い。ダリダの「躍らせて」、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、シャルル・アズナブールの「Emmenez-moi」などなど。

兄弟でピアノを連弾するシーンも印象的だ。ティボが様々な音楽の説明をしながらピアノを弾いていると、隣に座ったジミーが演奏に加わる。明るく心躍る場面だ。

正反対に思えた2人に共通点があったことを知ったティボは、ジミーの音楽の才能を伸ばしてあげようとする。環境ゆえに十分に才能を伸ばせなかったジミーの不公平さを正そうとするのだ。彼はジミーに言う。「上を目指せ!」と。

ちょうどその頃、弟の所属する吹奏楽団で指揮者が不在になる。ジミーの住む町では中心的な産業の工場が閉鎖の危機にあり、そのあおりで彼はよそへ移動させられたのだ。

ティボはジミーに指揮をするように勧める。当初ジミーは固辞するが結局引き受けることになる。その一方で、彼はある野望を持つようになる。「上を目指せ!」というジミーの言葉が彼を動かしたのだ。ところが、それが結果的に彼を傷つける。

それでも吹奏楽団は恒例のコンクールを目指すことになる。ところが、その当日、とんでもないことが起きてしまう。

その間、兄弟の絆は不安定だ。良好な関係を築いたかと思えば、それが突然暗転する。それでもギリギリのところで2人は絆を維持する。その描き方が絶妙なさじ加減だ。もちろんユーモラスで温かな描写は全編に通底している。

その後、町の吹奏楽団は市長の命令で解散状態になってしまう。楽器は閉鎖寸前で設備が撤去された工場に移された。ティボは一計を案じる。ここでコンサートを開いて、世間に工場の現状を知らしめようというのだ。

そこで彼が考えたアイデアが面白い。有名なラベルの「ボレロ」。映画でもたくさんの作品に使われているが、その「ボレロ」を吹奏楽だけでなく合唱でも演奏したいというのである。

そこから先の展開は伏せるが、ティボにまつわるある悲劇が起きる。この映画で唯一といってもいい直接的に涙を誘う場面だ。車を運転しながら涙を流すジミーの姿が切ない。

だが、それでは終わらない。ラストシーンに素晴らしい場面が待っている。ここで、あの「ボレロ」が巧みに使われる。会場を巻き込んで渦のようになった見事な演奏が披露される。私たち観客の興奮も最高潮に達する。この映画最大の見せ場だ。

観終わって、思わず笑顔になってしまった。ハッピーエンドの明るい結末というわけではないが、兄弟をはじめすべて人々に未来への希望の光を灯す。実に前向きで温かな映画だった。文句なしの秀作!

ティボ役のバンジャマン・ラヴェルネ、ジミー役のピエール・ロタンの演技も秀逸。それぞれに正反対のキャラを演じながら、自然に観客の共感を呼ぶ演技を披露している。2人の距離感が何ともいい。さらに、ジミーの所属する楽団のメンバーは、撮影の行われたフランス北部ドゥエ近郊の町ラレンのラレン市営炭鉱労働者楽団のメンバーが演じたという。この映画の生き生きとした描写の源泉は、ここにもあるのだろう。

◆「ファンファーレ!ふたつの音」(EN FANFARE/THE MARCHING BAND)
(2024年 フランス)(上映時間1時間43分)
監督:エマニュエル・クールコル
出演:バンジャマン・ラヴェルネ、ピエール・ロタン、サラ・スコ、ジャック・ボナフェ、クレマンス・マッサール、アン・ロワレ、マチルド・クールコル=ロゼ
*新宿ピカデリーほかにて公開中
公式ホームページ https://movies.shochiku.co.jp/enfanfare/
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