「ザ・ザ・コルダのフェニキア計画」
2025年9月22日(月)TOHOシネマズ 池袋にて。午後2時30分から鑑賞(スクリーン9/C-9)
~ウェス・アンダーソン節が全開の冒険活劇

「ダージリン急行」「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」「グランド・ブダペスト・ホテル」「アステロイド・シティ」など、独特の世界観の作品を生み出し続けているウェス・アンダーソン監督。新作映画「ザ・ザ・コルダのフェニキア計画」は、フェニキアという架空の国家を舞台にした冒険活劇だ。
舞台は1950年代。冒頭は、フライト中の飛行機内の場面。ヨーロッパの大富豪ザ・ザ・コルダ(ベニチオ・デル・トロ)が乗っている。彼は、フェニキア全域でインフラを整備する巨大なプロジェクト「フェニキア計画」を画策していた。成功すれば、今後150年に渡って莫大な富が転がり込む計画だった。だが、飛行機は攻撃を受けて操縦不能になる。ザ・ザは操縦室に駆け込むが、機長は非常事態に混乱してザ・ザに悪態をつく。するとザ・ザは顔色一つ変えずに、機長を空に放出してしまうのだ。何とも人を食った場面で思わず笑ってしまう
ザ・ザが殺されそうになったのは、なんとこれが6度目だという。しかも、トウモロコシ畑に不時着した今回はついに事故死したと思われた。だが、ザ・ザは生きていた。血まみれの顔で墜落現場に立ち、畑のトウモロコシを口にする。
そこでオープニング・タイトルとなるのだが、これがまあアンダーソン監督らしいおしゃれでキュートな映像なのだ。豪邸のバスタブで優雅にくつろぐザ・ザを俯瞰のスローモーションで描く。計算し尽くされた映像で、ビデでさりげなく高級ワインのボトルを冷やす遊び心もある。まさにアンダーソン節が全開で、ここでも思わずニコニコしてしまった。
飛行機事故から何とか生還したザ・ザは、自身の豪邸にある人物を招く。疎遠だった娘で修道女のリーズル(ミア・スレアプレトン)だ。ザ・ザは彼女を後継者に指名する。子供はたくさんいるのに、なぜか指名された彼女は、疎遠だった父にわだかまりを感じている。自分の母を殺したのはザ・ザではないかと疑っていたのだ。ザ・ザは否定するが疑念は拭えない。
ザ・ザはリーズルに、「フェニキア計画」について説明する。そこで靴箱やお菓子の箱などを使って、整備中のインフラについて説明するのが面白い。フェニキア計画は、敵の妨害工作によって危機に瀕していた。ザ・ザはリーズルを連れて資金確保のための旅に出る。2人には、怪しすぎる家庭教師が秘書役として同行した。
怪しすぎると言えば、旅の途中でザ・ザたちが会う投資家も怪しげだ。彼らは話が違うとザ・ザにクレームをつける。だが、怪しさではザ・ザが一枚上だ。彼らと駆け引きを繰り広げ、資金を獲得していく。
そんなザ・ザやリーズルの旅をユーモアたっぷりに描く。アンダーソン監督お得意の人を食った笑いが満載だ。爆笑というよりも、思わずクスッと笑い、ニヤついてしまう。そんな笑いである。
笑えるシーンはたくさんあるが、個人的に一番面白かったのは、トム・ハンクスとブライアン・クランストンが扮したサクラメント連合という投資家たちが、ザ・ザの計画に異議を唱え、どういうわけかバスケで勝負を決めようとするところ。機関車に設置したゴールに向かって奇想天外なスタイルでボールを投じる。おバカ感たっぷりの場面だ。
そして、同時に映像は最初から最後まで徹底して美しい。細部まで独自の美意識が貫かれ、「ここまでこだわるのか」とため息が出るほどだった。本物の宝石が登場し、撮影用に提供を受けたというルノワールやマグリットの本物の名画がザ・ザの豪邸に飾られる。手榴弾の箱や短剣などの豪華な小道具も使われる。視覚的効果は抜群である。
ドラマ的には、父と娘の葛藤と和解が中心だ。その合間にはモノクロの天国らしき場面(?)も挿入され、ドラマを盛り上げる。まあ、ドラマ自体はそれほど深いわけではないが、アンダーソン監督の世界を展開するにはちょうど良い。
終盤には、ザ・ザと異母兄弟のヌバル(ベネディクト・カンバーバッチ)の大バトルも勃発。子供じみたケンカで笑ってしまうのだが、これもまたアンダーソン監督の映画らしいお楽しみの一つ。家庭教師には実は意外な裏の顔があった……などという展開も、この手の映画の定番なれど、芸達者なマイケル・セラの演技でなかなかに見せる。
それにしても今回も超豪華な俳優陣。主演のベニチオ・デル・トロは不敵なあの面構えが、ここでは笑いのネタになるし、娘役のミア・スレアプレトン(ケイト・ウィンスレットの実娘)は表情を一切変えない演技が秀逸。その他の役者たちもみんな個性を発揮。ウィレム・デフォー、ビル・マーレイ、シャルロット・ゲンズブールあたりは注意していないと気づかないような出方をしている。
おしゃれでゴージャスでウィットに富んだウェス・アンダーソンらしい映画だ。彼の過去作が好きな人なら絶対に気に入るはず。
◆「ザ・ザ・コルダのフェニキア計画」(THE PHOENICIAN SCHEME)
(2025年 アメリカ・ドイツ)(上映時間1時間42分)
監督・脚本:ウェス・アンダーソン
出演:ベニチオ・デル・トロ、ミア・スレアプレトン、マイケル・セラ、リズ・アーメッド、トム・ハンクス、ブライアン・クランストン、マチュー・アマルリック、リチャード・アイオアディ、ジェフリー・ライト、スカーレット・ヨハンソン、ベネディクト・カンバーバッチ、ルパート・フレンド、ホープ・デイヴィス、ウィレム・デフォー、ビル・マーレイ、シャルロット・ゲンズブール
* TOHOシネマズ シャンテほかにて公開中
公式ホームページ https://zsazsakorda-film.jp/
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