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「ふつうの子ども」

「ふつうの子ども」
2025年9月5日(金)テアトル新宿にて。午後12時10分より鑑賞(A-11)

~普通の子どもの普通でない行動。子供たちの姿を生き生きとありのままに描く

 

昨年、長編映画としては久々に手掛けた「ぼくが生きてる、ふたつの世界」が高く評価された呉美保監督が、「そこのみにて光輝く」「きみはいい子」に続いて脚本の高田亮と3度目のタッグを組んだ作品が「ふつうの子ども」だ。

全編がほぼ手持ちカメラで撮影された映画だ。しかも、アップを多用する。これが実に効果的なのである。子供たちの日常が生き生きと描き出される。特に彼らの表情が鮮やかにスクリーンに刻み付けられる。最近の映画でも、ここまで子供たちを生き生きと描いた映画は珍しいのではないか。

自宅マンションのエレベーターに乗り込んだ小学4年生の唯士(嶋田鉄太)のアップの表情から映画が始まる。家を出た彼は、途中で生き物係の同級生たちと合流し虫取りをする。時間が来れば慌てて同級生たちと学校へ向かう。

学校では作文の授業が行われて、各自が先生に指名されて作文を読み上げる。これがまあ個性的な内容なのだ。それを読み上げる子供たちの表情も個性的。いや、作文を読む生徒以外にも、クラスの生徒すべてが個性的なのである。どうすれば、こんなに豊かな個性の子供たちを集められるのか。

聞くところによると、呉監督は子供たちを集めたワークショップを行い、配役を決めていったとのこと。なるほど。そういう手があったか。それにしても全員がいいキャラをしている。演技も自然だ。セリフはまるでアドリブのよう。子役の使い方が巧いと言えば是枝裕和監督が有名だが、呉監督もそれに負けず劣らずである。

その中でも、特にいいキャラをしているのが主役の唯士を演じる嶋田鉄太だ。軽妙で豊かな表情。観ているだけでユーモラスな感じがする。その他の子供たちのキャラとも相乗効果を発揮して、笑える場面がたくさん出てくる。唯士の母親役の蒼井優、先生役の風間俊介など、彼らを見守る大人たちも魅力的なキャラの持ち主。おかげで本作は全編がコメディータッチで進行する。

さて、作文の時間で異色だったのが心愛(瑠璃)だ。「地球温暖化は大人のせいだ」と激しく大人を糾弾する作文を読み上げる。それに興味をひかれたのが唯士だ。心愛をずっと見つめている。どうやら彼は心愛が気になるらしい。熱心に環境問題について話しかける。無表情で応じる心愛だが、少しずつ距離は縮まる。

だが、そこにやって来たのがクラスの問題児の陽斗(味元耀大)である。彼は「身の回りのことばかりでは環境問題は解決しない。行動を起こさねばならない」と主張する。心愛は陽斗が気になるらしく、その主張に賛同する。心愛に嫌われたくない一心で、唯士も賛同する。

3人は空き家を見つけて、そこを秘密基地にしてビラ作りをする。「車を使うな!」といった文字を、広告等から切り張りしてビラにするのだ。そして、それを車や店舗などに貼って大人たちに警告を発する。

それは3人にとっては冒険のようで、ワクワクした気分でいっぱいだ。といっても、それぞれに温度差はある。唯士はどことなく怖がっている。陽斗はノリノリで楽しそう。そして最も満足そうなのが心愛だ。地球環境を守ることに熱心な彼女は、何の躊躇もなく行動を起こす。

3人の行動は、最初はイタズラの延長という感じだった。だが、それがエスカレートする。肉屋にロケット花火を打ち込んで、「肉を食べるな」と書いた飛行機を飛ばす。牛のゲップが二酸化炭素を増加させ地球温暖化を促進するというのだ。さらに、彼らはとんでもない行動に出る。それが思いもしない事態を招く。そんな彼らを私たち観客はハラハラしながら見守ることになる。

ただし、深刻な事態になっても、依然としてタッチは軽やかなコメディー調。けっして重たくはならない。

しかし、さすがにここに至っては、唯士に加えて陽斗まで臆病になる。ところが、心愛はずっと堂々としているのだ。それは地球環境を守るという使命感からなのか。それとも何か他の要素があるのか。

それがやがてわかる。終盤、子供たちの親が顔を揃えた場面で、様々なことが明らかになる。子供たちが未熟なのは当然としても、大人たちの未熟さも浮き彫りになる。真正面からではないが、側面から現代の教育問題を鋭く突いた場面と言える。

現実社会を投影させているのは教育問題だけではない。例えば、子供たちの行動が過激化するところ。過激な主張をする者の周囲に、賛同者が集まり、やがてテロまで起こすというのは、どこの国でもよく見られる光景だ。このドラマは、現実社会を如実に投影させたドラマでもあるのだ。

俳優では子供たちに加え、風間俊介蒼井優、そして終盤にだけ登場する瀧内公美らが存在感ある演技を披露している。

純粋無垢、元気溌剌、あるいは残酷といった既成の小説や映画、テレビドラマなどで描かれた子供像とは一線を画し、ありのままの子供たちを描き出した呉監督。まさに新境地と言えるだろう。これはインタビュー等でも語っているが、自身が母親になって経験したことも大きいようだ。子供が登場する最近の映画の中でも出色の作品である。

*私の個人的評価★★★★☆

◆「ふつうの子ども」
(2025年 日本)(上映時間1時間36分)
監督:呉美保
出演:嶋田鉄太、瑠璃、味元耀大、瀧内公美少路勇介、大熊大貴、長峰くみ、林田茶愛美、風間俊介蒼井優
*テアトル新宿ほかにて公開中
公式ホームページ https://kodomo-film.com/
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