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「桐島です」

「桐島です」
2025年7月15日(火)新宿武蔵野館にて。午後2時20分より鑑賞(スクリーン1/B-9)

~逃亡犯の最期の願い。高橋伴明監督による桐島聡への鎮魂歌

 

昔、警察の指名手配犯人の写真で必ず見かけた「桐島聡」。どういう人かよくわからなかったのだが、2024年に突然脚光を浴びて「なるほど。そういう人だったのか」とようやく概要を知った次第。

桐島聡は、1970年代に連続企業爆破事件で指名手配となり、長年逃亡生活を続けたのちに、2024年に末期がんで入院。そこで自ら本名を名乗り亡くなった人物だ。その人生を高橋伴明監督が映画化した。脚本は高橋監督と「夜明けまでバス停で」の梶原阿貴が共同で担当している。ちなみに「夜明けまでバス停で」はホームレスの悲惨な運命を日本社会への怒りとともに描いた傑作なので、ぜひ観てほしい。

1970年代、反日武装戦線「狼」の活動に共鳴した大学生の桐島聡(毎熊克哉)は、組織とともに活動する。しかし、1974年の三菱重工爆破事件で、多数の犠牲者を出してしまったことで、深い葛藤に苛まれる。組織が壊滅状態となり、指名手配された桐島は偽名を使い逃亡生活を続ける。ある工務店で住み込みの職を得た桐島は、ライブハウスで知り合った歌手のキーナ(北香那)と親しくなる……。

製作にあたって、高橋監督や共同脚本の梶原は相当な取材をしたようだ。そのうえで、ドラマに大胆にフィクションを加味している。

桐島の伝記ドラマとはいえ、生い立ちなどは描かれない。ドラマのスタートは1974年の三菱重工爆破事件だ。そこでは多くの犠牲者を出した。桐島はそれに心を痛め、以降の企業に対する爆弾闘争では犠牲者を出さないことを徹底した。

桐島は優しい男だ。それがドラマの随所に現れる。その優しさゆえ、不正に対しては厳しい態度で臨む。当時の建設会社がアジアで行っていたことを批判し、爆弾闘争に足を踏み入れる。彼には、爆弾闘争に突き進む彼なりの理由があったのだ。同時に、彼のような純粋な若者が過激な活動に足を踏み入れる時代の空気も感じられる。

とはいえ、それは犯罪には違いない。組織は警察にマークされ、メンバーが次々に逮捕され壊滅状態となる。桐島も指名手配される。彼は「ウチダヒロシ」という偽名を使い、工務店で住み込みの職を得て逃亡生活を続ける。

前半は青春物語だ。逃亡生活中の桐島の日常を丁寧に描く。朝はじっくりコーヒーを淹れて飲み、職場に出かける。もちろん警察の影にはおびえるが、それ以外はごく普通の若者の日常だ。

桐島はライブハウスに出入りするようになり、楽しく酒を飲みバンド演奏をバックに踊る。その店のマスター役はギタリストの原田喧太で彼の演奏シーンもある。ロケ撮影されたのは江古田のマーキーという店で、私も何度か行ったことがある。懐かしいなぁ~。

そこで彼はシンガーのキーナと親しくなる。彼女の歌った「時代おくれ」を聴いて桐島は涙を流す。それは彼の人生そのものを象徴するような歌だったのではないか。すでに仲間は捕まり、そのうちの何人かは日本赤軍のテロ事件の際に、超法規的措置として釈放されて海外に移り住んでいた。桐島だけが、ずっと逃亡者としての生活を余儀なくされていた。まさに時代遅れの存在である。

いや、もしかしたら彼はそれ以前から時代遅れの存在だったのかもしれない。映画の冒頭近くで、映画「追憶」を一緒に観た女の子と喫茶店で会話するシーンがある。そこで桐島は彼女から別れを告げられる。彼女は上場企業に就職したいという。彼女にとって学生運動はすでに過去のものであり、いつまでもそれにこだわる桐島が理解できなかった。桐島は彼女にとって時代遅れの存在だったのだろう。

桐島はキーナと心を通わせる。キーナは桐島に告白するが、桐島は指名手配犯である身の上を鑑み「自分はそういう人間ではない」と言って去っていく。その後に海辺で思いっきり「時代おくれ」を歌う桐島。そこに哀切が漂う。

アパートの隣人との関係も描かれる。その男(甲本雅裕)は奇妙な態度で、最初はかたくなだったが、次第に桐島に心を許すようになる。しかし、やがて彼に警察の手が伸びる。桐島は彼からもらった時計(どうやらそれがヤバイ品らしかった)を捨てる。

映画の後半は年を経た桐島の姿が描かれる。そこには前半のような輝く日々はない。それでも彼は依然として工務店できちんと仕事をこなしていた。しかし、テレビで安倍首相が集団的自衛権行使の記者会見を行うのを見て、ブチ切れる。さらに、同僚の若者がクルド人を差別する姿を見て苛立つ。彼はやはり優しい男で、純粋な気持ちの持ち主だったのだ。同時に、彼は「日本がどうしてこんな国になってしまったのか」「そうさせた責任は自分たちにもあるのではないか」と考え自責の念を抱く。

それは私も言いたいよなぁ~。何で日本はこんな国になっちゃったんだろう。若い時には、自分が年を取る頃には日本は少しはましな国になると確信していたのだが。

映画の終盤、老人となった彼は末期の胃がんにかかり入院する。そこで苦しい息の中、初めて「自分は連続企業爆破犯の桐島聡です」と告白する。死ぬときにはせめて、これまでの偽名ではなく本名で死にたいと思ったのだろう。

彼が亡くなった後のシーンが印象的だ。かつての仲間で、逮捕されすでに釈放されていた宇賀神寿一は「公安警察は敗北した」と高らかに桐島の勝利を宣言する。そして、アラブに渡ったと思われる女性闘士は桐島に最後の言葉を贈る。このシーンは実に感動的だった。バックで流れる浅川マキの「こんな風に過ぎていくのなら」も心に染みた。全編に流れる内田勘太郎のスライドギターもいい味を出している。

俳優では何といっても主役の毎熊克哉が光る。まさしく桐島になり切った演技だった。キーナ役の北香那、ラストに出てくる女性闘士役の高橋惠子などその他の俳優陣も好演。序盤で桐島を振った女の子役の海空(みう)は、高橋監督と高橋惠子の孫だとのこと。

知られざる桐島聡の逃亡生活を描いた力作だ。ほぼ同世代の高橋監督だからこそ描けた桐島への鎮魂歌ともいうべき作品である。

なお、同じく桐島を描いた作品として、足立正生監督の「逃走」がひと足先に公開されている。こちらはうっかり見逃してしまったのだが、いずれ何らかの形で観たいものだ。

◆「桐島です」
(2025年 日本)(上映時間1時間45分)
監督:高橋伴明
出演:毎熊克哉、奥野瑛太北香那原田喧太山中聡、影山祐子、テイ龍進、嶺豪一、和田庵、海空、白川和子、下元史朗、甲本雅裕、高橋惠子
*新宿武蔵野館ほかにて公開中
ホームぺージ https://kirishimadesu.com/
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